新たな公園のカタチを切り開く、Park Community KIBACOのコミュニティづくりとは?

編集力が必要なのは、WEBサイトや雑誌、テレビといったメディアだけではない。
コミュニティづくりにも編集力が必要だ。

今回取材したのは、今までにない、新たなコミュニティスペースの可能性を切り開く『Park Community KIBACO』。
東京都江東区に位置する木場公園に佇む、木の温かみが溢れるコミュニティスペース、KIBACOの中にあるのは、産地直送の旬野菜や果物を用いたメニューが楽しめるカフェに、様々な地方の野菜や物珍しい食品が揃うマルシェ。毎日たくさんの人が訪れ、各々が開放的なひとときを過ごす。
「地域の居間」としてヒト・モノ・コトをつなげる新たな拠点KIBACOの立ち上げに関わった田中修司さんにお話を伺った。

 

田中修司(たなか・しゅうじ)
1972年生まれ、埼玉県川越市出身。cycle&design株式会社 代表取締役。
22歳の時に仲間が経営する飲食店に参画、27歳にして起業。事業スキームの立案・実行を担当している。食を通して、様々な事業を独自の切り口で生み出す。現在は「Good Morning Bangkok」をはじめとするアジアンエスニックフードの展開の他に、食を通した地方との連携などを手がける。また、AI企業や農業法人の取締役など、他分野との食とのコラボレーションを視野に活動中。

 

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東京都が初めて取り組んだ、公園の新しいカタチ。

KIBACOはどんなきっかけで誕生したコミュニティスペースなのですか?

田中 KIBACOは、「地域の居間」として公園とコト・モノ・ヒトの新しい関係を創造するというコンセプトの元に誕生した、新たなコミュニティスペースです。都市公園の質の向上のため、公園の多面的な活用を進める東京都の新しい事業があって、KIBACOはそのひとつめの案件でした。そこに東急コミュニティー(※)さんが事業主体として、公園の中で周辺の住民とのコミュニティづくりをしようという企画が誕生し、新事業として始まったんです。僕は、その企画を実現させるために、企画をどう肉付けしていくか、商業面で具体的にどう動いていくかという部分をサポートさせていただきました。誰に向けて何を発信していくのかを、東急コミュニティーさんのサポートをしながら、裏方としてつくり込んでいったという感じです。

※東急コミュニティー……株式会社東急コミュニティー。マンション、ビル、施設、公共施設、公営住宅の管理運営から工事までをトータルサポートする総合不動産管理会社。

とても印象的な建物ですよね。KIBACOで一番こだわったポイントはどこですか?

多摩産の木材をふんだんに使用した、こだわりの木造建築。

田中 東急コミュニティーさんのこだわりは、やはり「木」です。木場公園は元々、貯木場だったんですよ。だから、木場公園にしかないその特徴を生かすため、この建物は全部木造にしています。木造建築はかなり手がかかるものなのですが、木場公園を象徴する「木」は外せない要素だと思っていたので、木材はふんだんに使いました。外壁は全て多摩産の木材を使っています。

なるほど。このプロジェクトを進めていく過程で、壁にぶつかったことはありましたか?

田中 はい。私も含め、公園関係者や大企業など、色々な団体を巻き込んだプロジェクトだったので、制約がある中で進めていくのが難しかったです。東急コミュニティーさんとしても、不特定多数の人に商品や食べ物を販売するのは新しい試みだったこともあり、意思決定に時間をかけなければいけない部分も多かったと思います。でも一緒に仕事をさせていただいて、すごく真面目な方々だなと改めて感じました。いつも前向きで、プロジェクトを良くしたいという強い思いを持って仕事をしているんだなと思いましたね。

 

「Farm to Fam」。地方から家庭への繋がりをつくる拠点に。

プロジェクトを進めていく過程で、KIBACOをどんな空間にしようと考えていたのですか?

田中 商業面をつくり込んでいく中で、表には出さない裏のテーマが必要だと考えました。そこで、「Farm to Fam」というテーマを考えて提案したのです。「農場」から「家庭」への通過地点としてコミュニティスペースである「KIBACO」が在る、というイメージを持って企画をつくり込んでいくことで、誰に向けて何を発信していくのかを明確にしていくことができました。農場から、地域のコミュニティである公園を通って家族へ繋がっていくならば、農場のものを公園でどのような売り方をするのがいいのか。そうして考えた商品の一つに、KIBACOのカフェで販売している、ベビーリーフがたくさん入っているホットドッグがあります。『愛彩畑』という千葉の農業法人の農作物を家庭に届けるために、名物野菜であるベビーリーフを使って、公園で気軽に食べられるホットドッグをつくりました。

千葉の農業法人『愛彩畑』の名物野菜であるベビーリーフをふんだんに使用したホットドッグ。

誰に向けて何を発信していくのかを明確にする、これは編集においても欠かせない重要な力だと思います。

田中 そうですよね。あともう一つ、地方がアピールできる場所としても機能したいという思いもありました。今は東北のものが多いけど、今後は日本全国の色々な地域と交流して販売していきたいと考えています。公園の中で地方の自治体が商品を置いたり、ワークショップを開催したり、一緒にメニューを開発して販売しているような公園はおそらく木場公園のKIBACOだけだと思うんです。だからこそ、地方とのコミュニティづくりにも一層力を入れていきたいですね。

産地直送の野菜や、地方ならではの珍しい食品が並ぶマルシェ。

北海道産のにんじん。今後も様々な地域の野菜を販売予定。

地方と家庭をつなげる公園、素敵ですね。コロナが落ち着いたら、イベントにも最適ですね!

田中 イベントは、今はコロナもあって開催できていない状態ですが、元々はたくさん開催する予定でした。料理教室から、ヨガに屋外映画、プラネタリウムとか。あとは、子供と一緒に木工作品をつくるイベントとか。コロナが落ち着いたら、KIBACOの特徴である「木」と「地方」を活かしたイベントを通して、木場公園らしいコミュニティづくりをしていきたいと考えています。

 

実際のお客様から気付きを得た、需要と供給のズレとは?

KIBACOをオープンさせてから、反響はどうでしたか?

田中 世の中にとってはよくない事だけど、新型コロナウイルス感染症による外出自粛ムードの影響を受けて、KIBACOの反響は想像以上に大きかったです。開放的な公園の需要がすごく多くかったので。面白いことに、時間帯によって来る客層が全然違うんです。朝は高齢の方々が多くて、昼はママさんたち、午後になってくるとサラリーマンがちらほら来たり。ここら辺の世帯構成は意外と一人暮らしが約50%を占めていることもあり、ふらっと平日の昼間来ると、リモートワークをしに来ている人がたくさんいますね。カフェスペースにはコンセントもあるし、ワーカーにとっても使いやすい場所になっているんだと思います。一人暮らしをしている人たちにとってもふらっと立ち寄れる場所になっているのは、コミュニティスペースとしては嬉しい限りですね。

取材を行ったこの日も、木の下に寝転んでリモートワークをする方が。

なるほど。公園に立ち寄るお客様から、新たな課題が見つかることはありましたか?

田中 やはり圧倒的に多いのは家族連れなのですが、家族連れのお客さんと、KIBACOの物販に置いている商品との需要と供給のズレを直していくことが必要だなと気付かされました。公園だから、誰でも来れるようにするために、当初から奇を衒ったものは出さず、万人に気に入っていただける商品を取り入れるようにしていました。だけど、思い返してみたら「子供」の目線に合わせた商品はあまり意識していなかったんです。だから、物販はまだ子供が魅力を感じる要素が少ないので、おもちゃやお菓子、おにぎりなど子供が食べられるものを、今後増やしていくべきだなと思いましたね。

子供から大人まで年齢問わず人が集まり、賑わうカフェ。

あとは価格の部分。ここら辺に住んでいる人の所得はそんな低くないけど、抜群に高いわけではない。だから、手の届きやすいリーズナブルな値段はこれからも心がけていきたいなと思っています。コミュニティづくりって、近くにいる人から引き寄せることが重要と思うので、まずは公園近くにいる方々の目線に合わせていきたいですね。ゼロからつくったものだからこそ、これから修正しなければならないことはたくさんあります。

 

コミュニティづくりに必要なのは、いかに日常に溶け込むか。

田中さんにとってのコミュニティのつくり方とは、どんなものですか?

田中 商業的な観点で考えると、コミュニティをつくるには、価格やメニューの品揃えが毎日寄りたいと思えるものであるか、がすごく重要だと思います。僕の中では、「日常に近い人」が集まるのがコミュニティだと思っていて。なので、商売をしながらコミュニティをつくる上では、僕は基本的に広域な商売はせず、足元のお客さんをどう寄せるかを常に考えています。特に、KIBACOのように不特定多数の人たちがターゲットとなっている場合は、突拍子もないメニューをつくっても意味がない。もちろん人を引き寄せるためにそういう方法はあるんだけど、大体は最初に売れて終わりみたいな、一時的なものになってしまうと思うんです。だからこそ、日常に溶け込むことができるメニューと価格と品揃えを意識していますね。

田中さんのお話を聞いていると、公園周辺の街づくりにまで意識を配っているように感じます。

田中 今まで様々な街に店を出してきたけど、店を出すということは商売なので、やっぱり儲からなければいけない。だから、僕はまず最初に、店を出す街の周辺で一番流行っているお店をターゲットに置いて、この店に勝つにはどうしたらいいかなって考えるんです。どうしたらそのお店に勝てるのかを試行錯誤してより良い店にしていく、その繰り返しが街をつくっていくと思うんですよね。もっと良いものを生み出すためにはどうしたらいいのかということを常に考えて、各々が切磋琢磨していく、それが僕が考える街づくりです。

 

その時代の中心にいる人が、その時代のものづくりを。

マルシェのスタッフが書いたポップ。つい試したくなる、簡単レシピが書かれている。

KIBACOの今後の目標はありますか?

田中 まずは、今いるスタッフが楽しんで仕事ができる環境にすることが大事です。今はオープンした直後ということもあって仕事に追われているけど、現場の子が地方に行って商品を探したり、一緒になってイベントを開催したり、地方の団体と一緒に新商品を考えたりできるようになったら、ここで働くことを楽しめるようになると思うし、そこから新たなコミュニティもできていくと思うんです。なので、働いている人たちが自ら新たなものをつくり出していける場所になるよう、一緒にサポートしていきたいと思っています。

今KIBACOは公園の新たなカタチとして始まったばかりですが、将来、KIBACOをどんな施設にしていきたいですか?

田中 会社も店も同じだと思うのだけど、その時代の中心の人がその時代のものをつくれば良いと考えています。世代ごとにものの考え方も異なるから、その時代の中心となっている人たちの目線でつくっていく方が、この先ずっと残っていける。その時代を生きるっていうのはそういうことだろうなって。だからKIBACOも同じように、変わっていく時代に合わせて、その時代の人たちの手でより良い形になっていけばいいなと思います。

※Park Community KIBACOは株式会社東急コミュニティーが運営する施設で、cycle&design株式会社は運営のサポートをしています。

 

インタビュー:大崎安芸路(ロースター)/編集・文:川崎きさら(ロースター)、藤沢緑彩/写真:藤井由依(ロースター

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