ビジネスの成功には「チームビルディング」が必要不可欠といわれています。
しかし、価値観や考え方の違う社員同士でチームを組むのは難しいものです。
そこで当記事では、チームビルディングの目的やそれまでに必要な段階・条件などを解説します。
チームビルディングとは?
「チームビルディング」とは、チームメンバーが持つ技術・知識・経験といった各々の強みを引き出し、ビジネス目標を達成する取り組みをいいます。
チームビルディングと似ている言葉に「チームワーク」があります。チームワークとチームビルディングの違いは、人材を活かすことを重視しているか否かです。
チームビルディングとチームワークは、メンバー同士が弱点を補い合い、協力してビジネス目標を達成する点で共通しています。
しかし、チームワークは成果や結果を重視しているのに対して、チームビルディングは、ビジネス目標の達成と同時に、人材の育成や各々の能力や知識、技術を最大限に活用することも重視しています。
チームビルディングの必要性
チームビルディングが必要になった背景には、個人では解決できないことが増えてきたことが要因として挙げられます。
自分ひとりのほうが効率良く仕事ができる
という人もいるでしょう。
しかし、いくら優秀な人材であっても、ひとりでできることには限りがあります。
特に専門的な知識や技術が必要になった場合などは、能力やスキルのある他者の協力が必要不可欠。
知識や技術のあるメンバーを集めることで、多種多様な仕事も円滑に進めることが可能です。
ですが、優秀な人ばかりを集めても、良い結果が得られるとは限らないといいます。
なぜなら、能力のある人がバラバラに行動することで、お互いに足を引っ張り合うことになるからです。
チームメンバーのスキルや能力を最大限に発揮し、主体性を持った言動ができる環境を作るために、チームビルディングは重要視されています。
チームビルディングの目的
チームビルディングを実施する目的には、次のようなものがあります。
- チーム内で信頼関係を構築する
- チーム内でビジネス目標を共有する
- チーム内での役割を認識させる
- 仕事のパフォーマンスを向上させる
- 離職率の低下
以下で詳しく解説します。
チーム内で信頼関係を構築する
チームビルディングを実施することで、メンバー同士の信頼関係や団結力を強固にする効果が期待できます。
新しいアイデアがあっても、信用できない人に相談することはできませんよね。
コミュニケーションも不足するため、仕事で連携を取ることも困難になります。
チームビルディングで信頼関係を構築することで、発言もしやすく働きやすい職場づくりが可能です。
チーム内でビジネス目標を共有する
チーム内でビジネス目標の共有をすることで、自分が何を目指しているのかが明確になります。
チームのために何ができるのかを把握し、自主的に行動できるようになるでしょう。
信頼しあえるチーム同士が、同じ目標に向かって進むという一体感も得られるはずです。
チーム内での役割を認識させる
チームビルディングを通して、チーム内での役割を個々に理解させることが重要です。
目標を共有できたとしても、個人がバラバラに動いては成果を出すことは困難です。
メンバーが個々に役割を把握し、持ち味を活かせる人材配置を行うことで能力やスキルを最大限に発揮することが可能になります。
仕事のパフォーマンスを向上させる
チームビルディングを実施することで、仕事のパフォーマンスを向上させることが可能です。
チーム内で信頼関係を築き、ビジネス目標の共有や個々の役割を把握することで、個々の能力を発揮できる環境を作ることができます。
結果、仕事のパフォーマンスが向上し、良い成果を出しやすくなります。
離職率の低下
離職率を高める原因には、
- 人間関係が悪化した
- 仕事の内容に不満がある
- 休日や有給が取りづらい
- 残業が多く労働時間が合わない
などが挙げられます。
中でも人間関係の悪化と、仕事内容が合わないという理由で辞める人は多いようです。
チームビルディングを実施することで、良好な人間関係を構築できます。
さらに、ビジネス目標を達成するために自分の役割を認識することが可能。
職場環境の改善が図られることで、モチベーションのアップにも繋がります。
結果、働きやすい環境で仕事ができるため、離職率も低下します。
チームビルディングにかかる5つの段階
チームビルディングの必要性と目的について理解していただけたかと思います。
次に、実際にチームビルディングを実施した際、どのような段階を踏むことになるかを把握しておく必要があります。
チームビルディングは、次の5つの段階に分類することができます。
- 形成期(Forming)
- 混乱期(Storming)
- 統一期(Norming)
- 機能期(Performing)
- 散開期(Adjourning)
これら5つの段階を、提唱者の「ブルース・タックマン」の名前にちなんで「タックマンモデル」と呼んでいます。
以下ではタックマンモデルの5段階について詳しく解説します。
1.形成期(Forming)
チームが作られてまだ間もない段階をいいます。お互いのことを知らない状態なので、探り探りといった状態にあります。
初対面の人とは何を話していいか分かりませんよね。
相手の性格や趣味もわからないため、どのように接するべきかお互いに悩んでいる状態を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。
形成期では個人でコミュニケーションを取り合うことが困難です。
ビジネス目標の共有や、役割の把握もできていないため戸惑うことが多いのが特徴。
そこで、リーダーが率先して場を仕切っていく必要があります。
ゲームを取り入れるなどして、チーム内でコミュニケーションを重ねる機会を作ることが重要となります。
2.混乱期(Storming)
形成期でチームメンバーのことをある程度理解し始めると、次に訪れるのが混乱期です。
ビジネス目標の共有が行われ、チームで目標達成に向けて動き出しています。
その際に、相手の考え方に反発したり、意見の食い違いによる対立が生まれるのが混乱期の特徴です。
混乱期では、お互いの意見や考え方に対する理解を深めるために、徹底的にコミュニケーションを取る必要があります。
3.統一期(Norming)
混乱期の対立や反発を乗り越えると、チームは安定した段階に移行します。
お互いに考えを理解しており、各々の役割をこなすことができています。
チーム内で信頼関係も生まれているため、活発な意見交換が行われるのが特徴です。
4.機能期(Performing)
統一期を過ぎると、各自が役割のために自主的に動くことができます。
メンバー間の信頼や団結力、モチベーションも高い状態にあります。
自分の役割をこなすだけではなく、メンバーのフォローも積極的に行えるのが機能期の特徴です。
各々の能力やスキルを最大限発揮し、良い結果を出せるのもこの段階です。
5.散開期(Adjourning)
ビジネス目標を達成し、チームが解散する段階です。
チームビルディングが成功していれば、メンバー同士で称え合うといった行動が見られます。
同時に、現チームの解散を惜しみ、新しくチームを組むことに抵抗を感じるのも散開期の特徴といえます。
チームビルディングの成功に必要な4つの条件
チームビルディングの成功には、
- Goal:目標の設定
- Roles:役割の明確化
- Interpersonal Relationship:人間関係
- Process:業務の流れ
以上の4つが必要な条件とされています。
これらの頭文字を取って「GRIP」と呼ばれています。
チームビルディングを成功させるためには、チーム内でGRIPの条件を満たしている必要があります。
チームビルディングが上手く機能していない場合は、GRIPをチェックしてどこに問題があるかをチェックしてみましょう。
以下では、GRIPについて詳しく解説します。
Goal:目標の設定
Goalでは、以下の条件が満たされている必要があります。
- ビジネス目標を明確に設定しているか
- 達成が可能な目標を設定しているか
- チーム内で目標の共有がされているか
- チームで協働して達成を目指しているか
Roles:役割の明確化
Rolesでは、以下の条件が満たされている必要があります。
- 各々が自分の役割を理解しているか
- メンバー間で役割の共有をしているか
- 自覚や責任をもって役割をこなしているか
- 役割に対する理解を深める努力をしているか
Interpersonal Relationship:人間関係
Interpersonal Relationshipでは、以下の条件が満たされている必要があります。
- メンバー間でコミュニケーションは取れているか
- 自主的に意見を言い合うことができる環境か
- メンバー間で信頼しあえているか
- 各々の考え方や意見を理解しようとしているか
- 他のメンバーのフォローはできているか
Process:業務の流れ
Processでは、以下の条件が満たされている必要があります。
- 仕事の流れを把握できているか
- メンバー同士で連携は取れているか
- 業務の流れに無駄はないか
- スケジュール管理はされているか
チームビルディングを効果的に行う3つの方法
チームビルディングを効果的に行う方法として、主に次の3つが挙げられます。
- ゲーム・アクティビティ
- ワークショップ
- グループディスカッション
これらの方法をGRIPを意識しながら行うことで、効率的にチームビルディングが可能です。
以下では、各方法で得られる効果について解説します。
ゲーム・アクティビティ
楽しく気軽に行えるゲームやアクティビティでは、
- 不安や緊張の緩和に繋がる
- 各々の性格や考え方を知ることがでる
- メンバー同士の距離を縮めることができる
- チームに一体感が生まれる
といった効果が期待できます。
ワークショップ
与えられたプログラムを体験することができるワークショップでは、
- メンバーに当事者意識が生まれる
- GRIPを意識したチームビルディングを体験できる
- 主体的に動くことの意味を知ることができる
- 試行錯誤をすることでチームに一体感や信頼感が生まれる
といった効果が期待できます。
グループディスカッション
メンバー内で討論を行うグループディスカッションでは、
- リーダーシップの取り方が分かる
- 理論的な思考力が身につく
- 問題解決能力が高まる
- 性格や価値観を把握できる
- 協調性の有無が判断できる
といった効果が期待できます。
チームビルディングを実施する際の注意点
チームビルディングを実施する際は、次の点に注意しましょう。
- 無茶なノルマを設定しない
- チームだけに任せっぱなしにしない
- チーム編成には細心の注意を払う
以下で詳しく解説します。
無茶なノルマを設定しない
チームとして機能させたいからといって、無茶なノルマを設定するのはNG。
やりたくもないことをやらされるとモチベーションは低下します。
「いわれたから仕方なくやる」では、チームビルディングが成功したとはいえません。
そのためには、各々が自主的に動ける目標設定をする必要があります。
チームだけに任せっぱなしにしない
せっかくチームを組んだのに、まとまりがないのでは意味がありません。
特に形成期や混乱期にチームに丸投げすると、途中で瓦解する可能性が高いのです。
チームビルディングを実施する際は、チームがまとまるまでリーダーが主導する必要があります。
チーム編成には細心の注意を払う
チームビルディングを成功させるポイントは、適切な人材の配置にあります。
各人の得手不得手を考えずに人材配置を行うと、パフォーマンスやモチベーションの低下を招きかねません。
メンバーの能力やスキルに見合った配置をすることで、各々の能力を最大限に発揮することが可能になります。
チームビルディングの成功がビジネス成功の鍵
チームビルディングの実施には
- 業務を効率的に進める
- チーム内で信頼関係を構築する
- チーム内でビジネス目標を共有する
- チーム内での役割を認識させる
- 仕事のパフォーマンスを向上させる
- 離職率の低下
といった目的があります。
チームビルディングが成功することで、ビジネス目標の達成や成果が得られるでしょう。
しかし、実施したからといってすぐに結果が現れるわけではなく、次のような5つの段階を踏む必要があります。
- 形成期(Forming)
- 混乱期(Storming)
- 統一期(Norming)
- 機能期(Performing)
- 散開期(Adjourning)
特に形成期と混乱期は、チームが瓦解する恐れが高いため要注意。
そのためにも、ゲーム、アクティビティ、ワークショップ、グループディスカッションといった方法で、良好な人間関係を構築する必要があります。
ビジネスを成功させるためにも、まずは鍵となるチームビルディングを成功させましょう。