Roaster 副社長の! 編集手帖  効果的なリサーチ方法

編集者にとって入念なリサーチはマスト。

企画を考えるとき、掲載候補を選ぶとき、撮影場所を探すとき......。

どの段階でもリサーチ力が求められるのだ。丁寧でかつ自分なりの視点でリサーチができれば、制作もスムーズに進むはず。

ただし、担当企画が必ずしも興味関心のある分野とは限らず、全く予備知識がないものを担当しなければならないこともある。

そのような場合、なるべくクオリティやモチベーションを落とさずムラが出ないようにするにはどうしたら良いのか。

正しいリサーチ方法から、リサーチする上でのタブーを弊社副社長にご教授いただきました!

目次

入念なリサーチは怠るべからず

安田

今回は効果的なリサーチ方法についてご教授いただければと思います。

はい!

安田

例えば、事前に知っていることや興味のある企画だと、比較的記事に取り掛かりやすいと思いますが、元々全く知識のないことについての企画を担当するとき、どのようにリサーチしていましたか?

リサーチってそもそも時間のかかるものなので、自分の興味に関わる仕事なら時間を取らなくとも調べると思いますが、興味のないことだった場合なかなか難しい。

忙しいことを理由にリサーチを後回しにしてしまうこともある。

安田

そういうとき、何をモチベーションに気持ちを奮い立たせていますか?

どうせやるなら、いいものを作りたいっていう気持ちじゃないかな? みんなそうだと思うけど(笑)。

興味関心度や熱量って、必ず制作物のクオリティに出てしまう。

だから、いいものを作りたいならまず興味を持とうと努力することは大切だと思う。

あと、やっていくうちにちょっとずつ興味が湧いてくることはよくあるよ。

とりあえずエンジンかけて走ってみるってのがいいと思う。

あと、編集という仕事自体はどんな企画でも変わらないので、細かい作業も含めてそれを好きになることも大事。

安田

編集者にとって、リサーチはどのくらい大事なのでしょうか?

取材前の事前準備は自分を守る手段とも言えるかも。

例え、専門家にインタビューするとしても、話すのが上手い人とは限らないし。

そして、リサーチをしていないと有意義な質問も出来ないので記事の完成度が低くなってしまう。

どんな内容の取材でも必ずこっちが下調べして知っておく必要があります。

何事にも興味が持てる好奇心の強い人であれ

安田

逆に、マガジンハウスのrelax編集部でライターをやっていた時はほぼ興味のあることでしたか?

当時のrelaxはメンズファッションのアイテム紹介に特化していたので、服好きだった僕にとっては学校のような編集部だったよ。

モノ集めとか大変だったけど、普段から自然にリサーチしていることが仕事に活かされていたかも。

逆にポパイ編集部の仕事はファッションからグルメ、街ネタ、モテ企画までオールジャンルだったね。

でも若い頃は全然知らないことに関する企画も、仕事欲しいから出来ます出来ますって言ってやってた(笑)。

安田

例えばどんな企画でしょうか?

アイドル企画とか。僕は昔アイドルのこと全然興味なかったのに、仕事がしたいからやらせてくださいって言ってた。

実際全然知らなかったので、モーニング娘。のメンバーの名前暗記したりして(笑)。

今こんなアイドルが人気なんだ〜って知ったりして。

若い頃って、やっぱり好奇心が強いから自分の知らないことでも興味を持つんだよね。

逆に好奇心旺盛じゃないとこの仕事向いてないと思う。

安田

なるほど。何にでも興味を持てることは編集者にとって強みなのですね!

めちゃくちゃ大事だと思う。

昔の上司からは、世の中で起こってること全てに興味を持てってよく言われてた。

ファッションだけじゃなくて政治のことやお金のことでも、なんでも。

安田

この仕事がきっかけで徐々に興味を持ったことは他に、ありますか?

東京ウォーカーっていう街歩きの雑誌を担当したとき、街歩きが好きになった。

最初、色々なお店や名所を1日に何軒も回ってリサーチするのは体力的にも大変だなと思っていたけど、やってみたら面白くて。

雑誌なので50ページ〜60ページある中で特集編まないといけないから、さまざまな角度からコンテンツを考える必要がある。

その過程で街のことを色々知っていくと例えば裏路地の酒場のことを魅力的に感じたり、お店の人からダイレクトに反響をもらうことが面白くて。飲食店を巡ることがとても楽しくなった。

自分の知らなかったことを知って、好きなことが広がるってのはこの仕事の醍醐味だよね。

笹さんがかつて編集を担当した「東京ウォーカー」
笹さんが編集長を務めるフリーマガジン「GREATER 日本橋」
安田

そうですよね。本当にそう思います。

安田

ただ、主に女性が好きなものとかだと興味を持つことすら難しい企画もあるのではないでしょうか? 例えばコスメなどの企画とか……。

あるある。まさにコスメとか、女性下着の企画は正直大変で。

特にギャルメイクの企画を任されたときは本当に右も左も分からなかった(笑)。

赤字を入れるにもコスメの内容のことまでは知らないから、なかなか難しい。

メイクのHow toとか、手順の違いなどまで指摘するのは難しかった。

さすがにそういう企画は隅々までリサーチしても理解の限界があるので、プロの編集ライターさんに仕事をお願いしてやってたね。

あと、ギャル雑誌制作していた3年間はギャルのブログを読み込んでリサーチしてた。

あの子たちは平日学校に行ってるので、土日が撮影日だったからほとんど休みなく働いてたね。

ほら、こんな感じで(笑)。

安田

笹さん、楽しそうです!! (笑)

女性ファッションに関しては、全く分からなくはないのですが、男性ファッションとは全然違う世界で最初は戸惑ったね。

例えば、女性ファッション誌特有の表現。「ゆるふわ」とか、「甘辛ミックス」ってなんだ? とか(笑)。

「ビンテージ」って言葉の定義も全然違ったり。赤字入れが難しくて途方にくれたことがある。「可愛い」の感覚がつかめなくて。

あとは撮影現場の雰囲気も男性誌とは全く違うので、自分がディレクションしたくても出来ないジレンマがあったかも。

ただ、そういう未知の分野でも、僕が得意だったのは見せ方や構成を考えること。

自分らしさを取り入れて面白く見せる方法を考えて、そこで評価してもらえたり。

安田

どうしても難しそうな企画に直面した場合、自分が得意なことで貢献できる何かを見つけることも、モチベーションUPの方法かもしれませんね。

そうだね。

やっぱり自分のスタイルを持っていることが大事だと思います。

企画に関連する全ての媒体・コンテンツを徹底的にリサーチせよ

安田

具体的にどんなリサーチ方法が効果的なのでしょうか?

効果的なリサーチ方法は、とにかく全部みること。

インターネットはもちろんトピックに関することが書いてある媒体全て。InstagramやYouTubeもマスト。

本も絶対読んだ方が良い。

なぜならネットと違ってきちんと編集をされているものなので、ほとんど事実関係に間違いがないからです。あとはその道の専門家に聞くのも良いと思う。

安田

なるほど!

インターネットが速くて便利なのでついついそれだけに頼ってしまいがちですが、様々な角度からのリサーチが必要なのですね。

本のリサーチは今後心がけます。

リサーチはコツコツ行うべし

安田

逆にリサーチするときのタブーはありますか?

誰でも調べられるようなネットの情報だけをとってきていて、オリジナリティが全くないリサーチ。例えば、飲食店を調べるのに食べログをみただけとか。

そうじゃなくて、どんな人向けにその企画を届けたいのか考えて、価格で縛ってリサーチしたり、インフルエンサーのおすすめから探すとかさまざまな角度から調べるならいいと思う。

あげた店の理由がないリストなんて最低です(笑)。

あとは一夜漬けでリサーチすることもダメ。リサーチって時間がかかるものだし、1日で出来るわけがない。

だからコツコツやることが大事。

僕はリサーチしないといけないことがあったら、他のことをしているときも1日1時間とか決めて計画的にやってるかな。頭の中にリサーチしなければならないことがあると、他のことをしている時もアンテナを張っている状態だから、良いネタを見つけられたり。日をまたぐと昨日とは違う視点で調べることもできるから、数日は必要かな

安田

リサーチは日々コツコツすること、まだまだ全然意識できていないことでした。今後の案件に備えて少しずつ始めることにします。

知らないことを知る楽しさというのは、この仕事についてまだ間もない私です実感できております。

いろんなことを柔軟に吸収することができたら、いい制作が出来て、自分自身も面白い人間になれそうですね。

今回も貴重なお話、ありがとうございました!

編集・文/安田天音(Roaster)撮影/菅原景子

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