広告などを発注するときに「このコピーライターに依頼しよう」「このコピーはいいね」と当たり前のように認識している「コピーライティング」、実のところ基本的な知識や本質を知らない人も少なくありません。
この記事ではコピーライティングの概念や基本的なテクニック、おすすめの本などを紹介します。この記事で「コピーライティングとはなにか」を自分の知識としてしっかり身に着けていきましょう。
コピーライティングの意味は? ライティングとはどう違う?
コピーライティングとは「言葉を使った心理的なアプローチで、読者に行動(主に消費行動)をうながす文章または文章技術のこと」を意味します。雑誌・TVCMなどの媒体を問わず、宣伝広告に使われている文章はすべて「コピーライティング」といえます。
コピーライターとライターの違い
有名コピーライターといえば糸井重里さんを挙げる人も多いでしょう。コピーライターは一般的には「企業広告のキャッチコピーを書く人」と認識されています。実際は短いキャッチコピーだけではなく、ボディコピーと呼ばれる長めの宣伝文も書きますし、DM広告などの直接的な商品の売り込み文もコピーライターが書いています。
ライターは直訳すると「文章を書く人」という意味のとおり、宣伝広告に限らずメディアで使われる文章全般を書く人という定義になります。ライターだけでは漠然としているため、人によっては「私はコスメライターです」と名乗ったり、商品のマニュアルや取扱説明書を専門に書く人は「テクニカルライター」と呼ばれることも。
コピーライターとライターの違いは、非常に曖昧ですが「広告・宣伝」の割合が多いとコピーライティングの技術が必要とされます。例えば、雑誌の記事広告はライターが書きますが、メーカー広告はコピーライターが文章を書くケースが多いです。
キャッチコピーとセールスコピーの違い
キャッチコピーは企業のキャッチフレーズや、見た・聞いた人の印象に残る短い文章を指します。企業イメージを構築する「広告・広報」の役割を担っています。
有名キャッチコピーの例
- おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。(糸井重里/魔女の宅急便)
- そうだ 京都、行こう。(太田恵美/JR東海)
- あなたと、コンビに、ファミリーマート(仲畑貴志/ファミリーマート)
一方でセールスコピーは、顧客の購買行動をうながす文章で、主にダイレクトレスポンス広告(DM広告)や通販サイトのランディングページなどに使われる文章のこと。商品の購入・申し込み・問い合わせ件数を増やすことを目的とした「販売促進」を行う広告文です。
コピーライティングの基礎
コピーライティングにはある程度のセオリーがあります。ここでは販売促進を目的としたセールスコピーについて解説します。
コピーライティングの基本の型
タイトル(キャッチコピー):読者の興味・関心を惹きつける
本文(ボディコピー):読者の共感・信用を得る
クロージング:読者に行動(購入)させる
この基本の型の発展形に「新・PASONAの法則」という有名なセールスレターのテンプレートがあります。消費者の購買心理へ巧みにアプローチするこの法則を、実例とともに見ていきましょう。
新・PASONAの法則を使ったセールスレター構成例
Problem(問題)
「汗ばむ季節、自分の臭いが気になりませんか?」
Affinity(親近感)
「実は私も、自分の体臭が気になって仕事が手につきませんでした」
Solution(解決策)
「しかし、新成分を配合した〇〇デオドラントスプレーを使ったところ、夕方まで臭いが気にならなくなったんです」
Offer(提案)
「私も試した〇〇デオドラントスプレーで、あなたも臭いの悩みを解決しましょう」
Narrowing down(絞り込み)
「さらに、このサイトから申し込んだ方だけに、携帯用のミニサイズスプレーをプレゼントします」
Action(行動)
「今お申込みいただくと、10%割引になります!」
このような流れで構成された販促チラシやネット広告、TVショッピングのシナリオに心当たりがある人も多いでしょう。
セールスコピーはいきなり商品の説明を始めるのではなく、事前にターゲット層の入念なリサーチを行い、ターゲットの悩みや欲求に訴えかけて実際に商品を選んでもらえるよう、こうした工夫を凝らしているのです。
コピーライティングの基本はマーケティング
コピーライティングに最も必要なものは、ターゲット層のデータです。消費者にどのようなニーズがあり、どういった行動をとるのかを理解しなければ、いくら良い商品でも購買行動に繋がりません。
例えば、体臭の悩みを抱えている50代男性にデオドラントスプレーを販売する場合と、同じ悩みを持つ10代女性に販売する場合では、アピールポイントや商品の売り方は大きく異なります。
広告戦略に合わせたコピーライティングが求められ、50代向けは新聞広告、10代向けはTwitter広告など、文章表現や宣伝内容だけではなく、広告を出稿する媒体も変化します。
コピーライティングのコツは心理学
顧客へ購買行動を促す文章を書くためには、心理学のテクニックが有効です。いくつか有名なテクニックを実例付きで紹介します。
バンドワゴン効果
英語の「Bandwagon」はパレードの先頭をゆく楽隊車のことです。「バンドワゴンに乗る」という表現で「勝ち馬に乗る・流行に乗る」という意味になります。
「バンドワゴン効果」とは、多くの人が支持するサービス・製品を購入することで、顧客の満足感や安心感がより高まる効果のことです。ヒットしているという情報があることで、ますますそのサービス・製品への支持が強くなるのです。
バンドワゴン効果を使ったコピーの例
「顧客満足度98%の自動車保険」
「口コミサイトでランキング1位のファンデーション」
「動画再生数が一億回を超えたヒットソング」
ツァイガルニク効果(ザイガニック効果)
ツァイガルニク効果(ザイガニック効果)とは、旧ソビエト連邦の心理学者であるブルーマ・ツァイガルニクが実験で証明した心理現象です。
「人は完結した情報よりも、完結せず中断した情報の方をより強く覚えている」というもので、TV番組がクライマックス直前のいいところでCMに入ってしまうのも、映画の予告編が肝心の部分を見せないのも、ツァイガルニク効果を狙ったものだといえます。
ツァイガルニク効果を使ったコピーの例
「50代の女性がたった一ヶ月で7kg減量に成功した方法とは?」
「人気ラーメン店ランキング、3位〇〇、2位□□、1位は意外なあのお店!」
「転職に失敗した人の「共通点」とは?」
「うまいコピー」とはどういうものか
すぐれたコピーとはどういうものでしょうか。コピーライティングは必ずしも美文・名文である必要はありません。
- 目にした人がハッとするような「新しい価値・今まで気づかなかった価値」を提供する文章
- 読者に対して自分でも気付かないうちに「自分にはこの商品がピッタリだ」と思わせてしまう文章
このように、文章で人の価値観を揺さぶる・変える力を持っている文章が「うまいコピー」と言えるのではないでしょうか。
宣伝会議「コピーライター養成講座」
宣伝会議の「コピーライター養成講座」は、1957年開校の日本で最初のコピーライター養成機関です。ここではコピーライティングの「本物のノウハウ」を学ぶことができます。電通や博報堂をはじめとした多くの広告会社・制作会社などが社員研修の一環として導入しており、述べ5万人を超える修了生を輩出しています。
コピーライターを目指すプロだけでなく、コピーライティングの発想や言葉を使ったコミュニケーションのスキルを高めたい人や企業の宣伝・広報・販促の担当者も参加している講座です。コピーライティングの技術を学びたい人に最適の学びの場です。
コピーライティングに役立つ本
独学でコピーライティングを学びたい、仕事の中で役立てられるノウハウを手に入れたいという人におすすめの本をご紹介します。
『禁断のセールスコピーライティング』神田昌典
著者はコピーライティングの代表的なテンプレートともいえる「PASONAの法則」「新・PASONAの法則」の提唱者である神田昌典氏。この本では日本で実績確認済みの具体例をもとに、セールスコピーライティングのテクニックを解説しています。
『人を操る禁断の文章術』メンタリストDaiGo
人間の感情をゆさぶる7つ引き金(トリガー)と、今すぐ文章にそのまま応用できるテクニックを紹介。扱うテーマは、セールス、プレゼン、恋愛、依頼など、書き手の腕が求められるシーンを幅広く網羅しています。
『コピーライティングとアイデアの発想法 ~クリエイターの思考のスタート地点~』宣伝会議養成講座シリーズ
活躍するコピーライター・プランナーたちは、何からアイデアを考え始めるのか?「アイデアの起点の作り方」を一冊の本に凝縮。物事を整理して、言葉でわかりやすく伝える技術をトップクリエイターが解説しています。
コピーライティングの本質とは
コピーライティングの本質は、人間心理を理解することです。どんなに素晴らしい文章であっても、ターゲットの心に響かない文章はコピーライティングとしては失敗です。
コピーライティングでは文章の書き方よりも、売りたいサービス・製品への理解、ターゲットへの理解の方が重要です。このブランディングやマーケティングをおろそかにしてしまうと、人の心を動かすコピーは書けないのです。