あなたが物やサービスを購入するとき、どんな購買行動をしているのか意識してみたことはあるでしょうか?その購買行動はあなただけでなく、現代の多くの消費者に当てはまります。
インターネットが当たり前に使われている現代のマーケティングにおいて、重要視されているのが「AISAS」です。
今回は「AISASとは何か?」に加え、その他の購買行動モデルも合わせて解説します。
AISASモデル(アイサス)とは?
AISAS(アイサス)とは、ある商品を購入するまでに、消費者はどんな行動を取るのかをパターン化した購買行動モデルです。インターネットが普及しているため、ネットの利用や情報の共有などもAISASモデルの中に組み込まれているのが特徴。
では、AISASモデルについてもっと詳しく見ていきましょう。
AISASの法則
「AISAS」は5つの行動の頭文字を取ったものになります。
- Attention(注目):商品やサービスの存在を、インターネットや広告で認知する
- Interest(関心):商品やサービスに興味関心を持つ
- Search(検索):インターネット検索でその商品やサービスのより詳しい情報を調べる
- Action(行動):実際に商品やサービスを購入して利用する
- Share(共有):使ってみた感想をレビュー欄、口コミサイト、SNSなどに投稿する
AISASの法則の中には、インターネット行動である「検索」や「共有」が購買行動モデルの中に含まれているため、現代における消費者行動の法則として現代で広く活用されているのです。
提唱者は電通
消費者が商品やサービスを認知して購入、そしてネットで共有するまでの購買行動モデル「AISAS」は、最大手の広告代理店である電通が提唱して広まりました。さらに、2004年には電通により商標登録もされています。
ITやECの普及がAISAS理論登場のきっかけ
AISAS理論が登場したのは、IT技術が発達し、インターネットが普及したことが大きなきっかけです。
パソコンを使ってWeb検索ができるようになったほか、ガラケーやスマホが当たり前に使われるようになって、SNSやブログなど消費者同士でコミュニケーションを楽しむサービスも盛り上がりました。
さらにWeb上で商品を検索したらそのまま購入できるネットショッピングも活用され、日常生活の中にインターネットが欠かせない時代となっています。
そんな時代でマーケティング効果を上げるのに、AISASの法則はまさにぴったりの購買行動モデルなのです。
AISASについて深く学べる論文
AISASのモデルについてもっと深く学ぶなら、JSD学会誌に掲載された論文を読んでみることをおすすめします。
【PDF】AISASマーケティング・プロセスのモデル化|JSD学会誌 システムダイナミックスNo.8 2009
従来の購買行動モデルからAISASに変化した経緯や、AISASモデルを上手に活用する方法まで、マーケティングに役立つ知識や考え方が論理立てて解説されているため、マーケターなら一度は読んでおきたい論文です。
その他の購買行動モデル【2019年版】
AISAS以外にも、たくさんの購買行動モデルが提唱されてきました。ここでは代表的なモデルをご紹介しましょう。
AIDMA
AISASの前に提唱されていたのが「AIDMA」です。
- Attention(注目):商品やサービスの存在をテレビや広告で知る
- Interest(関心):商品やサービスに興味関心を持つ
- Desire(欲求):その商品やサービスを「欲しい」と思う
- Memory(記憶):その商品やサービスを「買おう」と確信する
- Action(行動):実際に商品やサービスを購入して利用する
インターネットが普及する前に提唱された購買行動モデルであるため、インターネットの要素は含まれていません。しかし、人が物を認知して購入するプロセスの“土台”であるため、現代でもマーケティングで活用されています。
AISCEAS
「AISCEAS」とは、AISASをより細かく分けて「比較」と「検討」を加えた購買行動モデルです。検索〜行動にいたるまでのプロセスがAISASと違います。
- Attention(注目)
- Interest(関心)
- Search(検索):複数の商品やサービスを検索する
- Comparison(比較):複数の商品やサービスを比較する
- Examination(検討):比較をふまえ、複数の商品やサービスの購入を検討する
- Action(行動):検討をふまえ、より良いと思った商品やサービスを購入する
- Share(共有)
インターネットのおかげで消費者は簡単に複数の商品を比較検討することができるようになり、他社製品と比べて「より良いもの」が求められる時代になったと言えます。
SIPS
「SIPS」はAISASと同じインターネット時代に適した購買行動モデルですが、ソーシャルメディアの影響をより考慮したモデルとなっています。
- Sympathize(共感)
- Identify(認知)
- Participate(参加)
- Share & Spread(共有&拡散)
↓
またSympathizeへ…
SNSや個人ブログを通して「こんな商品やサービスがあるんだ」と新たな情報を手に入れられるようになり、実際に購入してみた体験をSNS等で拡散。それを見た他の消費者がまた情報を手に入れ、購入、拡散…という循環が生まれます。
Participateが「購入」ではなく「参加」となっているのは、この輪の中で消費者自身が情報を拡散し、他の消費者の共感を喚起しているためなのです。
AISASはもう古い?次に来るDUAL AISAS
AISASが提唱されてから10年以上が経ち、「AISASはもう古いのでは?」と言われるようになりました。そして次に提唱されているのが「DUAL AISAS」です。まずはこちらの図をご覧ください。
出典:“Dual AISAS”で考える、もっと売るための戦略。|ウェブ電通報
従来のAISASのAttentionの中に「ISAS」が組み込まれています。「ISAS」も「アイサス」と読めることから「DUAL AISAS」と呼ばれるようになりました。
実は、現代ではテレビや広告による商品認知(Attention)の効果が薄れてきており、Aが機能不全を起こしている状態に。そこに「ISAS」を加えることで、Attentionを補う形となっています。
- Interest(関心・共感):SNS等の情報を見て共感を覚え、商品やサービスに関心を持つ
- Share(共有・発信):手に入れた情報と自分の感情をセットにしてSNS等でシェアする
- Accept(受容・共鳴):シェアされた情報を第三者が受け取り、共鳴する
- Spread(拡散・展開):第三者がシェアすることで、さらなる拡散・展開が生まれる
消費者はSNS等で単なる「情報」を受け取るのではなく、情報とセットで発信者の感情も受け取ります。それが強いAttention力を持ち、「買いたい」のAISASに繋がっていくのです。
DUAL AISASの考え方を理解しておくと、SNS等の影響力をふまえたマーケティング施策を打ち出せるようになるでしょう。
購買行動モデルから消費者との最適なコミュニケーションを考える
ここで紹介した購買行動モデルは、消費者の行動や感情の流れを構造化したもの。購買行動モデルがあるおかげでマーケティング施策を考えやすくなりました。
それぞれの法則を覚えたうえで、自社の商品やサービスの特性や市場性を見て「どの購買行動モデルがピッタリ当てはまるのか?」「どこでどのようにして消費者と関わるのか?」と、消費者との最適なコミュニケーションを考えてみましょう。