バイラルメディア(Viralmedia)とは「ウイルス性の」「感染的な」という意味のバイラル(Viral)から出てきた言葉です。
SNSの情報拡散力を使い、いわゆる「バズる」記事でPVを集めて広告収入を得るビジネスモデルです。短期間の爆発的なPVを狙っているため、インパクト・話題性のある動画や画像が多いのが特徴です。
バイラルメディアには独自記事ではなく他社や個人の動画・画像を転用して紹介する「バズっている記事を集めたまとめサイト」という様相を呈しているメディアが多く、記事作成が容易なため多数のメディアが乱立して2014年ごろにはバイラルメディアバブルを起こしました。
2019年現在、広告出稿や記事の拡散に際して「バイラルメディア」という媒体は、どれくらいの有効性があるのでしょうか。
バイラルメディアとキュレーションメディアの違いは?
「バイラル」は読者の流入経路、「キュレーション」は記事の作成方法を表す言葉です。そのためバイラルメディアとキュレーションメディアは、扱う記事の内容や方向性が重なる部分もあります。
例えば「30代~40代の女性向けにキュレーションされた記事を掲載する、SNSのバズ狙いのバイラルメディア」というものも存在するのです。
では、大きく異なる部分はどこなのでしょうか。
SNS拡散が目的のバイラルメディア
バイラルメディアでは、読者にSNSで記事を拡散してもらうことで更なるPVを集め、広告収入につなげています。
そのため「バズを狙う」のがメディアの主目的となり、SNSや動画プラットフォームから話題性のあるネタを探してきては転載するという形を取りがちです。記事に対して独自の見解やメディアとしてのカラーを出すことはあまりなく、動画や画像それ自体の勢いや面白さで勝負するメディアといえます。
ユーザーの利用意図としては「ネットで旬の話題をこのメディアだけで把握できる利便性」が中心といえます。
SEO集客がメインのキュレーションメディア
キュレーションメディアは、メディアのコンセプトや一定のジャンルに沿った記事を作成してSEOによる検索流入メインでPVを集めています。
他社の動画や画像をソースにした場合でも、記者の見解やコメントを加えて独自性を出しているメディアが多く、狙ったジャンルでのSEOを意識した作りになっています。バズる内容でSNS流入が多い記事もありますが、基本は検索流入メインであり「バズを狙う」のは主目的ではありません。
ユーザーの利用意図としては「特定ジャンルの情報の多くをこのメディアで把握できる利便性」が中心といえます。
2019年の国内の代表的なバイラルメディア
2019年現在、日本国内で大手バイラルメディアとして認知されている主なメディアを紹介します。
BuzzFeed
2016年1月から始まったアメリカのBuzzFeedの日本版で、アメリカのBuzzFeedと日本のYahoo!のジョイントベンチャー。コンテンツは「Yahoo!ニュース」などに配信され、広告の販売権はヤフーが独占しています。最近は社会問題などに関連して独自の取材を通じ、読み応えのある記事も多く発信しています。
grape
ニッポン放送グループのウェブメディアで、Web以外にも記事の配信先があるため広告出稿に有利。ボリュームゾーンは30代〜40代の女性で、シェアされやすいエモーショナルな記事、短編マンガや動物動画などが多めです。
笑うメディアクレイジー
株式会社スマートメディアが運営。「クレイジーなネタで暇つぶし」というコンセプトでマンガ、動画、画像を掲載しており、キュレーションされたバイラルメディアと言えます。
ねとらぼ
ソフトバンクグループのアイティメディア株式会社が運営。主な読者は10~30代の男女で、ジャンル問わずネット上の旬の情報を取り上げています。Twitterのトレンド入りすることもあるほど拡散力の高いメディアです。
バイラルメディアが「うざい」と言われる理由
バイラルメディアは常に「バズる記事」を必要としているため、他サイトに載っている既存の動画コンテンツやニュース記事、SNSでバズった投稿を転用した記事が中心になります。中には著作権侵害や低品質なまとめ記事も多く、読者に「どこかで見た記事ばかりが載っている」「流用(パクリ)がうざい」というネガティブな印象を抱かせてしまうのです。
また、SNSをよく利用するユーザーであればあるほど、バイラルメディアに取り上げられる前の一次情報(元ツイートや元動画)に接しており、後追いで記事にして広告収入を狙うバイラルメディアの手法そのものを嫌うユーザーも出てくるのです。
バイラルメディアは参入と淘汰が激しい
バイラルメディアは「バズる記事」を収集する仕組みさえ構築できれば、比較的簡単にサイトを立ち上げられるため、新規参入が容易なメディアです。しかし、オウンドメディアやキュレーションメディアのように明確なコンセプトやジャンル特化といったオリジナリティが出しにくく、淘汰もまた激しいのが現実です。
2014年のバイラルメディアバブルから数年は、数多くのバイラルメディアがスタートし、数カ月~数年で更新をストップさせたりサイトを閉鎖して撤退したりしていましたが、2019年現在は淘汰が進み、生き残っている国内バイラルメディアはそれほど多くありません。
裏を返せば、強いバイラルメディアだけが残された状態です。いずれも契約ライターによる独自コンテンツや、コンセプト特化、ターゲット層特化など明確なカラーを打ち出しているメディアであり、広告出稿先のチョイスに迷うことは少ないでしょう。