キュレーションメディアはPVを集めて広告費を稼ぐビジネスモデルのメディアです。メディア立ち上げのコストが比較的安価で、SEO対策と大量の記事を投入する仕組みさえ確立できれば簡単にアクセスを集められるため、ユーザーによるまとめサイトからニュースアプリまで多様なキュレーションメディアが存在しています。
キュレーションメディアの基本的な定義や抱える問題、オウンドメディアとの違い、国内の主要キュレーションメディアについて解説します。
キュレーションメディアとは?
キュレーションメディアは、英語の「curator(キュレーター)…美術館などの学芸員」から来ています。
美術館の展示のように、Webの情報を選別してまとめ直すことをキュレーションと言うようになり、決まったテーマに沿って集められた記事が掲載されているサイトがキュレーションメディア(=まとめサイト)と呼ばれるようになりました。
最近では、多数のライターが決まったテーマにもとづいてコンテンツを制作しているサイトを、キュレーションメディアと呼ぶケースもあります。
キュレーションメディアと著作権問題
キュレーションメディアで問題となるのは、「無断転載」「誤情報やエビデンスのない低品質コンテンツ」が多いことです。
2016年にDeNAが運営していた健康・医療系キュレーションサイト「WELQ」が大炎上し、多くのキュレーションサイトの質が問われた事件がありました。
「WELQ」では「肩こりの原因は幽霊」「死にたくなったら(転職サイトのアフィリエイト広告記事)」などの低品質コンテンツや、薬機法(旧薬事法)違反とみられる記事、他サイトからの無断転載が多数あり、運営側のモラルが問われる事態になりました。最終的に運営元のDeNAは非を認め、「WELQ」を含め他の運営サイトも閉鎖されました。
また、リクルートやサイバーエージェントなど他社の運営するキュレーションメディアにもネットユーザーの厳しい目が向けられ、大幅な記事削除や閉鎖したメディアもありました。
そして、この事件の後にGoogleの日本語検索アルゴリズムのアップデートが行われました。
今回のアップデートにより、ユーザーに有用で信頼できる情報を提供することよりも、検索結果のより上位に自ページを表示させることに主眼を置く、品質の低いサイトの順位が下がります。その結果、オリジナルで有用なコンテンツを持つ高品質なサイトが、より上位に表示されるようになります。
キュレーションメディアはPVを集めることを目的とするメディアです。SEOに強い記事の量産を優先するあまり、記事の質に対するチェック機能がおろそかになり、このような事態を引き起こしたといえます。
国内の代表的なキュレーションメディア
タイプ別に国内の代表的なキュレーションメディアを解説します。
特化型キュレーションメディア
特定ジャンルに特化した記事を掲載するキュレーションメディアです。メディアが外部ライターに記事を書かせていたり、一般ユーザーによる記事の投稿もあります。
mamari
KDDIグループのコネヒト株式会社が運営。子育て中の女性ニーズに特化した、妊活・妊娠・出産・子育ての疑問や悩みを解消するQ&Aアプリ・情報サイト。
RETRIP
株式会社trippieceが運営する旅行特化メディア。登録ユーザーが、写真や動画を使って旅行・観光・おでかけに関するあらゆる情報のまとめ記事を作成する。
antenna*
ファッション誌やライフスタイル誌を提携メディアに擁し、社内スタッフが提携メディアのWebコンテンツを分類して自サイトにて紹介するスタイルの特化メディア。
総合型キュレーションメディア
プログラムが自動的に提携先から情報を収集してまとめるキュレーションメディアです。ニュース系のアプリに多いスタイルです。
Yahoo!ニュース
総合ニュースサイトとして、他社のニュースをYahoo!ニュースのプラットフォームで紹介しています。ニュース特化のキュレーションメディアといえます。
Smartnews
利用者数1,686万人(2019年8月時点5)のニュースアプリ。ジャンル別にタブを分け、マンガやゲームのタブがあるなどユーザーの好みを徹底分析。ニュースに加えてファストフード等のクーポンも表示されます。
グノシー
利用者数1,024万人(2019年8月時点6)のニュースアプリ。Smartnewsと同様にジャンル分けとクーポン表示があります。エンタメ系ジャンルを設定しており、レシピやYouTube動画などもキュレーションされています。
ユーザーまとめ型キュレーションメディア
登録ユーザーがジャンルにとらわれず自由に記事をまとめるスタイルのキュレーションメディアです。メディアプラットフォーム自体は記事内容に責任を持っておらず、無断転載や著作権問題を指摘されているメディアもあります。
Naverまとめ
韓国のIT企業ネイバーの子会社、LINE株式会社が運営する記事作成サービス。アクセス数に応じて記事作成者が広告収入を得られる「まとめインセンティブ」システムを導入しています。
Togetter
トゥギャッター株式会社が運営。Twitterの「まとめサイト」としてユーザーが任意のツイートを自由にまとめて公開できるメディア。トゥギャッター社はTwitter社からツイートの利用許諾を得ているため、Togetter上でのまとめは著作権違反にはあたりません。
キュレーションメディアとオウンドメディアの違い
サイトに多数の記事が集約されているという点で、キュレーションメディアとオウンドメディアはよく似ています。この2つは何が違うのでしょうか?
記事作成方法の違い
キュレーションメディアでは、他の会社や記者(口コミ投稿者)が制作したコンテンツを集約して掲載しています。キュレーションメディアがオリジナルのコンテンツを制作することは基本的にありません。コンテンツのクオリティは記事制作者のコントロール下にあります。
一方、オウンドメディアでは、自社のオリジナルコンテンツを掲載しています。外部ライターや提携先がコンテンツを制作していることもありますが、それも「自社からの依頼」で作られたコンテンツです。よって、コンテンツのクオリティやテーマなどのコントロールは自社にあります。
キュレーションメディアは広告収入が目的
キュレーションメディアのほとんどが、広告収入をメインにしたビジネスモデルです。記事を量産したりアプリのダウンロード数を増やしたりするのは、PV数を稼ぐことで広告収入が増加するからです。
オウンドメディアは見込み客獲得が目的
オウンドメディアの場合は、自社の認知度向上や自社商品の売上アップなど、オウンドメディアを通じて見込み客にアプローチすることがメインの目的です。PV数も重要ですが、それは広告収入ではなく見込み客の増加として捉えられます。
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