プロダクトアウト、マーケットイン、カスタマーインを事例をもとに解説

「プロダクトアウト」と「マーケットイン」は、ともに製品やサービスを開発する手法を指す言葉です。

これらはマーケティング・製品開発に使われる考え方ですが、消費者ニーズに対するアプローチが異なります。

また、「マーケットイン」の発展形に「カスタマーイン」という手法もあります。くわしく見ていきましょう。

目次

プロダクトアウトとは

プロダクトアウトは、企業が消費者の潜在ニーズを狙って製品・サービスを開発する手法です。

消費者自身も気付いていなかった「こんな商品があったのか!」という新たな価値観・新たなライフスタイルを創造し、新規市場を興す力を持つのがプロダクトアウトです。

プロダクトアウトの成功例|iPhone

1990年代後半から2000年代にかけて普及していたフィーチャーフォンとはまったく別の製品として、2007年にアップルが米国で「iPhone」を発売しました。

iPhoneは「スマートフォン市場」という新たな市場を興し、当初は「数カ月の入荷待ち」となるほどの爆発的な人気を集めました。現在でも最も成功したプロダクトアウトの一つとして認識されています。

プロダクトアウトの成功例|ウォークマン

カセットテープレコーダーを小型軽量化したウォークマンは、消費者が気付いていなかった「外出時にも音楽を聴きたい」という潜在ニーズを見事に発掘した製品です。

ウォークマンの登場により音楽はより身近に消費されるようになり、若者のライフスタイルを変えた製品となりました。その反面、誰もが音楽をコピーすることが可能になり、ウォークマンが当時のアナログレコードの売り上げ低迷に繋がったとも言われています。

プロダクトアウトのデメリット

プロダクトアウトは「企業の技術優先のモノづくり」という解釈をされることがありますが、企業が消費者マーケティングをせずに製品開発をすることはありません。

しかし「マーケティングの読みが外れ、結果として消費者に受け入れられなかった」製品は存在します。

代表的な事例はソニーの家庭用VTR規格「ベータ」です。日本ビクターの開発したVHS規格との熾烈なライバル競争は「ビデオ戦争」とも評されました。

家庭用ビデオ機器が普及するにしたがって、消費者が求める長時間録画・廉価なハードおよびソフトを揃えたVHS規格がシェアを伸ばし、家庭用ビデオ市場においてベータ規格は姿を消していきました。

これはプロダクトアウトにおいてマーケティングで消費者ニーズを汲み取れなかった結果ともいえます。

マーケットインとは

マーケットインは、消費者の顕在化したニーズに応える製品づくりをする手法です。

消費者が求めているものをあらかじめリサーチし、そのニーズを満たすことをコンセプトにして製品やサービスを開発します。顧客に「こういうのが欲しかった!」という満足をもたらすことを目標としています。

マーケットインの成功例|シンプルエリス

「生理用ナプキンに、シンプルという選択肢を」というコンセプトで、大王製紙が2019年10月にECサイト限定デザインの生理用品を発売しました。

海外の生理用品はシンプルなデザインが多いという情報がSNSで共有され「ファンシーなデザインは恥ずかしい」という消費者ニーズがはっきりと顕在化した後の商品化でした。

従来にないシンプルなデザインがSNSで大きな話題となり、販売サイトのLOHACOでは発売当日に品切れとなりました。

マーケットインの成功例|ユニバーサルスタジオジャパン

「映画のテーマパーク」として2001年に開園後、入場者数の低迷が続いていたユニバーサルスタジオジャパンは、2010年に「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」へとコンセプトを変更し、2016年には来場者が年間1460万人となりました3

顧客のニーズを分析した結果、ユニバーサルスタジオジャパンは従来の「映画好き」以外の層のニーズを取り入れる方向に舵を切ったのです。

そしてファミリー層のニーズを取り入れハローキティやセサミストリート等のアトラクションを導入、マンガやゲームに親しんでいる層を狙ったモンスターハンターや進撃の巨人などのアトラクションの設置により、大幅な収益アップに繋がりました。

マーケットインのデメリット

マーケットインの手法では、徹底した消費者ニーズの追及に基づいてサービス・製品づくりが行われます。これは、既に消費者の中に存在している顕在ニーズしか汲み取れないという欠点があります。
iPhoneやウォークマンのように、消費者に新たな価値観・ライフスタイルを提供し、新規マーケットを創造するイノベーティブな製品は生まれにくいといえます。

カスタマーインとは

消費者のニーズに応えるマーケットインの製品づくりをさらに発展させた手法が「カスタマーイン」です。

マーケットインはより多くの顕在ニーズを狙って製品づくりを考えますが、カスタマーインはさらに細かな選択肢を消費者に提示する製品づくりといえます。

たとえば子育て世代向けにスライドドアの軽自動車を開発するのはマーケットインですが、自動車の色や内装を自分好みにカスタマイズできるのはカスタマーインといえます。

カスタマーインの成功例|オーダースーツ

コナカの「DIFFERENCE」や「FABRIC TOKYO」など、初回の採寸以降はオンラインで注文を進められるオーダースーツが20代~30代の男性を中心に人気を集めています。

従来の高級志向のオーダースーツではなく、より購入しやすい価格帯ながらも「細身の体型にフィットするもの」「シワになりにくい布地」「私服にも着まわせる素材」など、様々なニーズに応える商品展開が魅力となっています。

カスタマーインの成功例|WILLER EXPRESS

深夜高速バスを運行するWILLER EXPRESS株式会社は、新たなターゲット層としてアイドルや趣味の「追っかけ」をする若い女性に着目しました。

女性が深夜高速バスを敬遠する理由をマーケティングし、特注シートを導入して個室に近い座席スペースを確保した女性限定車両や女性専用スペースを設定。今まで深夜高速バスの利用を敬遠していた20代~30代女性の利用者を伸ばしました。

WILLER EXPRESの成功により、2019年現在では複数の高速バス事業者が居住性を高めたラグジュアリーシート車両を設定し、利用客の満足度を高めています。

カスタマーインのデメリット

マーケットインの発展形ともいえるカスタマーインですが、消費者の細かなニーズに対応するために企業の側が過剰な負担を抱えてしまうというデメリットがあります。

オーダースーツであれば多種多様な布地の在庫コントロール、深夜高速バスであれば競合他社との消耗戦となるリスクが挙げられます。

プロダクトアウトとマーケットインの融合

プロダクトアウトもマーケットインも、消費者ニーズを汲み取ってアプローチをするという基本は同じです。

現在はWebマーケティングの発達により、より詳細なユーザーデータが手に入ります。

製品・サービスの開発側は、消費者ニーズに添いつつも、従来にない新しい価値観・ライフスタイルを提供できるようなアプローチが求められていくでしょう。

  1. 2017年以降は非公表のため、2016年の数字です https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ03IGJ_T00C17A4000000/ https://www.asahi.com/articles/ASL6L5D46L6LOIPE02W.html
  2. 2017年以降は非公表のため、2016年の数字です https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ03IGJ_T00C17A4000000/ https://www.asahi.com/articles/ASL6L5D46L6LOIPE02W.html
  3. 2017年以降は非公表のため、2016年の数字です
    https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ03IGJ_T00C17A4000000/
    https://www.asahi.com/articles/ASL6L5D46L6LOIPE02W.html

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