ビジネスシーンでよく耳にする「フィードバック」とは何でしょうか。
もともとフィードバックはITや工学分野において、出力された数値結果などをチェックや修正、改善するのために入力側に返すという意味で使われていました。
このことから、現在ビジネスシーンにおける「フィードバック」は2通りの使い方をされています。
ひとつは社員教育におけるフィードバック、もうひとつは顧客対応におけるカスタマーフィードバックです。詳しく見ていきましょう。
社員教育でのフィードバックとは
社員教育におけるフィードバックは、上司-部下または同僚同士が仕事を評価し、具体的な評価や改善点を伝えることを指します。
評価や改善点を伝える際には、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックで対応が分かれます。
ポジティブ・ネガティブ問わず良いフィードバックができている組織は、メンバーの士気や生産性も高い傾向にあります。
特に管理職と若手の間では、世代間格差や感覚の違いが軋轢を生みだすリスクもあります。
常に良いフィードバックができているか? と振り返りを続けることによって、良い組織づくりが可能になるでしょう。
ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックとは、相手の良い点を評価・承認するコミュニケーションです。
上司・同僚として相手の何を評価しているのかを具体的に伝えたり、今後の期待する方向性を示したりすることで、相手を良い方向に伸ばす効果があります。
また、ポジティブフィードバックは組織の雰囲気を良好にする効果もあります。
たとえば「電話の受け答えが良い」「伝言メモが的確で分かりやすい」など、日常の些細なことでもポジティブフィードバックを基本にコミュニケーションを取ることで、仕事上のトラブルなどネガティブな事項が発生したときもスムーズな報告に繋がります。
ネガティブフィードバック
ネガティブフィードバックとは、相手の問題点を指摘・改善するコミュニケーションです。
上司・同僚として相手の何に問題があるのかを具体的に伝えたり、今後の改善策や努力すべき方向性を示したりすることで、相手に成長と学習の気付きを与える効果があります。
ネガティブフィードバックでは、組織の雰囲気を委縮させる可能性を常に頭に入れておかねばなりません。
相手の問題点を指摘・改善するという目的から逸脱して、感情的に叱責する・執拗に謝罪を求めるなどの態度に出てしまうと、その光景を見ていた周囲の人間をも委縮させ、仕事上のトラブルなどネガティブな事項が発生したときに素早い報告が行われなくなります。
たとえば「納期遅れが発生したが、皆で今後の改善点を相談しよう」という上司と、「納期遅れが発生したが、誰の責任か追及する」という上司では、今後の組織内コミュニケーションに大きな差が出てきます。
簡単フィードバック5カ条
ポジティブフィードバック、ネガティブフィードバックのどちらも、具体性を持った指摘をすることが大切です。
また、良かれと思って間違った言い方で指摘をしてしまう場合もあります。
気を付けるポイントを5つ挙げていきます。
感情的にならない
特にネガティブフィードバックでは、感情的な指摘はパワハラと受け取られます。「これから指導を目的として話をします」と前置きし、複雑な話であれば箇条書きのメモ等を準備して淡々と指摘を行うようにしましょう。
相手のプライドを傷つけない
ネガティブフィードバックでは他の人がいない場所で指摘を行いましょう。また、ポジティブフィードバックでも他の同僚と比較するような言い方で褒めることはNGです。
世代・性別の違いを念頭におく
たとえば残業に対する考え方一つとっても、50代と20代、男性と女性など属性の違いによって大きく差があります。「普通こうだろう」「こんなの常識だ」という指摘では、相手の普通や常識とズレがある場合に話が通じなくなります。
具体的に伝える
良い指摘も悪い指摘も、具体的に「ここが〇〇だった」と伝えましょう。「いつも良くやっている」「いつも注意が足りない」など漠然とした言い方では何も伝わりません。
今後とって欲しい行動を伝える
「もっと気を付けるように」など漠然としたお説教ではフィードバックになりません。単なる問題点の指摘に留まらず「ダブルチェックを行う」「一度メールで素案を見せる」など、今後の改善のための行動を具体的に伝えましょう。
カスタマーフィードバックとは
顧客対応におけるフィードバックを、カスタマーフィードバックといいます。顧客からの要望やクレーム、ネットのクチコミなどを評価・分析してより良いサービスや商品作りに役立てることを指します。
カスタマーフィードバックを集めるのは容易ではありませんが、企業やブランドのクオリティを保つために、顧客からの情報は非常に価値があります。
カスタマーフィードバックのメリット
顧客からのカスタマーフィードバックは、事業をより良くするために役立ちます。
お客様窓口に寄せられた要望やクレームは、事業の不足している点を指摘してくれる貴重な証言です。また、SNSやクチコミサイトなどでは顧客の「お客様窓口に言うほどでもない不満や満足度」を集めることができます。
これらの声を評価・分析して社内の各部門にフィードバックし、組織の改善点や方向性の振り返りに繋げることがカスタマーフィードバックのメリットなのです。
カスタマーフィードバックの集め方
有益なカスタマーフィードバックを集めるには、お客様窓口だけでは不足しています。
また、たくさんの質問事項が並んだアンケートに最後まで答えてくれる顧客も多くはなく、アンケートが長ければ長いほど顧客層の偏りに繋がります。
カスタマーフィードバックを集める手法について紹介します。
ミステリーショッパー
ミステリーショッパーとは、顧客に扮した調査員が店舗に出向く覆面調査です。
現場のサービス担当者の対応や店内の導線・陳列など、顧客目線のフィードバックが得られます。
Eメール
メールマガジンやキャンペーンメールなどでアンケートを募集する方法です。
しかし多くの顧客は毎日たくさんのEメールを受け取っており、メールマガジンのほとんどは読まれずスパムメールとして削除されています。従ってアンケートの回答率はかなり低くなります。
電話
顧客との距離の近い小規模の会社で有効な手段です。顧客と複数回の接触が持てる、より具体的なカスタマーフィードバックを得られるなどの利点があります。
しかし、オペレーターが機械的に大量に電話をかけている場合は、顧客に警戒感や嫌悪感を抱かせる可能性もあります。
ネット調査
SNSのアカウントやクチコミサイトに寄せられた顧客の声を収集・分析する方法は、顧客の本音を具体的に知ることができます。
SNSアカウントの運用次第では、顧客からより具体的なカスタマーフィードバックを得られるなどの利点もあります。
フィードバックでカスタマーエクスペリエンス(CX)を高める
カスタマーエクスペリエンス(CX)は「顧客体験の心理的な価値」を意味します。
商品・サービスの価値だけではなく、商品・サービスの販促から購入さらに購入後のサポートまでの商品・サービスに関連する顧客体験すべての価値を指しています。
商品・サービスを購入したり利用したりしたユーザーが、何らかの感想や不満をフィードバックしてきたときのフォローによって、その顧客だけにとどまらず他の多くの顧客や未来の顧客のカスタマーエクスペリエンスを向上させることができます。
顧客からのフィードバックに対して、いわゆる「神対応」と呼ばれるフォローができると、その評価がSNSなどで広がり新たなユーザーの流入にも繋がるのです。