企業や製品を「ブランド」として認知させ、長期的な利益につなげるためにはブランディングは欠かせません。
しかし「ブランディングはBtoC企業がするもの」と思って、ブランディングに取り組まないBtoB企業も意外と多いものです。
BtoB企業でもBtoC企業と同様にブランディングの効果はあります。
そこで本記事では、BtoBブランディングの効果や事例をご紹介しましょう。
そもそも“ブランディング”の意味を理解しているか?
あなたは“ブランディング”の意味を理解できているでしょうか?
抽象度の高い言葉ですので、実はなんとなくでしか理解していない人も多いものです。
「ブランド(brand)」の語源は、放牧していた牛のわき腹に「焼き印を押す(burned)」という行為に由来しています。
そうすることで、遠くからでも「あれはうちの牛だ」とすぐに認識できるのです。
このことから「ブランディング」は他者との識別化・差別化をすることだという意味がわかるでしょう。
他者と区別を付けられるように「ブランド化」していくのがブランディングです。
そう考えると、ブランディングにはBtoCもBtoBも関係ありません。
対消費者・対企業であろうと「自社をブランド化し選ばれるようにする行為」という点において大きな違いはないのです。
BtoBブランディングの効果
消費者、つまり個人を相手にするのとは違い、BtoBは企業・組織を相手にします。
そのため一度の取引で動く金額は大きく、関与する人も多いです。
ではBtoBブランディングを行うことでどのような効果があるのでしょうか?
見込み客の課題を認識させる
企業(=見込み客)は消費者個人とは違って組織としてのルールが確立されている場合が多く、ルールの中で動くことで課題が見えづらかったり、必要なものがわかっていなかったりといった問題があります。
そもそも課題やニーズがわからなければ、いくらアプローチしても相手に「必要だ」と感じてもらえません。
そこでBtoBブランディングを行うことにより、見込み客に課題を認識させることができます。
製品の特徴や魅力、もたらす利益などをブランディングによって伝えることで「わが社に必要だったのはこれか!」と気付かせるのです。
製品・サービスへの期待値を高める
BtoBブランディングは企業のイメージアップにもつながります。
車のCMで話題の俳優がかっこよく荒野を駆け抜ける姿を見れば、車好きなら誰しも自分が新車で駆け抜けていくという妄想を抱くことでしょう。
そしてその車を手に入れる日を待ち遠しく感じるのです。
それと同じで、BtoB企業もブランディングでイメージアップを図ることで製品・サービスへの見込み客の期待値を高めることができます。
期待値が高まれば、見込み客は資料請求やお問い合わせ、さらに契約といったアクションを起こすのです。
自社を選んでもらうチャンスを広げる
ブランディングは単純に認知拡大・知名度アップにも役立ちます。
さらに言えば、対組織とはいえ選ぶのは人間ですから「知名度が高く良いイメージのある企業が提供する製品・サービス」さらに「口コミもなかなか良いらしいぞ」ということであれば、その企業の製品・サービスを選ばない手はありません。
つまり、BtoBブランディングにより自社を選んでもらうチャンスを広げられるのです。
顧客と信頼関係を構築する
バラエティ番組や雑誌ではしばしば話題の商品を取り上げて紹介することがありますよね。
その商品が自分が以前から使っているものであれば「メディアに紹介されるくらいだから、自分の目に狂いはなかった」と確信めいた感情を抱く人も多いでしょう。
BtoBブランディングにより広く認知されるようになり、誰もが知る企業になれば、以前から付き合いのあった顧客にも高く評価されるようになります。
そしてこれからお付き合いする顧客も最初から強い信頼性を持って契約をしてくれるようになるのです。
BtoBは「売って終わり」ではなく長い期間取引することも多いため、顧客と信頼関係を構築できるのもBtoBブランディングのメリットでしょう。
BtoB企業のブランディング成功事例
BtoCブランディングならイメージしやすいけど、BtoBブランディングでは何をすればいいのかわからない人も多いかもしれません。
そこで、BtoBブランディングに成功した企業の事例を見ていきましょう。
Googleの事例
Googleのコーポレートサイトにはこのように書かれています。
Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです。
引用:Google
この使命通り、Googleが提供する検索エンジンは世界中の誰もが利用できるようになっていますよね。
しかし無料でサービスを提供するだけでは収益化はできません。
そこでGoogleは「人々が何かを欲した瞬間に行う、スマートフォンでの検索行動」を「マイクロモーメント」と名付けて提唱しました。
移動中でもリラックス中でも、何か知りたいと思い立ったときにすぐに検索するその行動は今や日常と化していますが、改めて提唱することにより「マイクロモーメントにこそ消費者のニーズが潜んでおり、適切なタイミングで適切なメッセージを届けることが重要」だと多くのマーケターに気付かせました。
消費者に“適切なタイミング”で”適切なメッセージ”を届ける手段として、Googleの広告を提供しているのです。
富士通の事例
富士通と聞くとどんな製品を思い浮かべますか?…誰もが聞いたことのある社名のはずなのに、具体的な事業内容は実はよく知らない人も多いのではないでしょうか。
富士通ではそんな自社の課題に対し「FUJITSU JOURNAL」というオウンドメディアを使ってブランディングをしています。
そこでは富士通が手がける事業内容をAIやIoT、マーケティング、スポーツなどさまざまなカテゴリーに分けて紹介しています。
富士通のように幅広い事業をしている企業だと、“何でもできすぎて覚えてもらいにくい”という課題が生まれやすいです。
そこで企業から積極的に情報を発信することで企業の活動について知ってもらえますし、製品に興味を持ってもらうこともできます。
さらにオウンドメディアはBtoC、BtoBの両方でブランディングできるという強みも持っています。
セールスフォース・ドットコムの事例
セールスフォース・ドットコムは、営業支援やクラウド型顧客管理システムを提供しているBtoB企業です。
実はセールスフォース・ドットコムの設立当初から今まで、一貫した取り組みを行っています。
それは、自社の製品や株式から就業時間に至るまで、それぞれの1%分を社会貢献にあてる「1-1-1モデル」という活動。
例えば非営利団体への製品の寄贈や社員によるボランティア、教育やキャリア支援への助成など。
企業が持つすべてのリソースを活用して社会貢献していくこの活動は企業のイメージアップになる他、社員の自尊心や自己肯定感を高めるのにも役立っています。
「誰かのためにすること」が結果として「自分のためになる」…すなわち、ことわざの「情けは人の為ならず」を体現している企業だと言えますね。
BtoBブランディングで最も大切なこと
ここまでBtoBブランディングの効果や成功事例をご紹介しました。
どのようなBtoBブランディング施策をするかヒントになったでしょうか?
では、BtoBブランディングを行うにあたって最も大切なことは何か。
それは、顧客(クライアント)にも、顧客(消費者、お客様)がいるということ。
クライアントはBtoC業務を行うために、あなたの製品・サービスの利用を検討しているということです。
BtoBブランディング施策を考えるときには、自社のこと・顧客のことだけでなく、その向こう側にいる消費者にもぜひ目を向けてみましょう。
その意識を持って取り組むことで“選ばれるブランド”になれるはずです。