あなたの文章が「ら抜き言葉になっている」と指摘された経験はありませんか?もしくは、他人のら抜き言葉がどうしても気になる…という人もいるでしょう。
日常的に使いがちな「ら抜き言葉」ですが、これは間違っているのでしょうか?
今回はら抜き言葉の原因や適切な使い方についてわかりやすく解説します。
ら抜き言葉とは?
「ら抜き言葉」とは、動詞に可能の意味を表す助動詞「られる」がついた言葉から、「ら」が脱落した言葉・言い方のことです。「ら抜き表現」とも言われています。
例えば、次のような言葉。
食べられる → 食べれる
寝られる → 寝れる
見られる → 見れる
「食べられる」も「食べれる」も日常的に使われていますが、「ら」が抜け落ちた「食べれる」は日本語の文法的には間違っているのです。
まずは、ら抜き言葉になってしまう原因について見ていきましょう。
ら抜き言葉になる原因
ら抜き言葉になる原因はいくつかありますが、可能動詞の間違った認識や使い方が大きな原因だと言えます。
可能動詞とは、動詞の五段活用の未然形に「れる」を付けて単語に転じたものです。
例えば、次のような言葉が可能動詞です。
書く → 書ける
読む → 読める
帰る → 帰れる
しかし、五段活用できない動詞(食べる・寝る等)も同様に「れる」を付けてしまったことで、本来の「られる」が「れる」として間違えて使われているのです。
「ら」が入っていると誤認の可能性がある
しかし、現代においてはら抜き言葉が必ずしも間違っているとは言い切れないようです。「ら」が入っていることで、逆に誤認の可能性もあります。
例えば、
「食べられる」「見られる」
この2つの言葉だけでは、可能表現か?もしくは尊敬表現か?がわかりませんよね。「食べられる」も「見られる」も、尊敬語にも存在する言葉だからです。
可能表現・尊敬表現を判断するには、「このパンは食べられる」「女王様が食べられる」など前後の文脈から意味を読み取る必要があります。
一方で「食べれる」「見れる」など、あえてら抜き言葉にした方が意味が通りやすい場合もあるのです。
ら抜き言葉の将来性
ら抜き言葉は一時期間違った日本語だと批判されていました。学校の授業やテストでも厳しく指摘されたことがある人も多いのではないでしょうか?
しかし前述したように、ら抜き言葉によって文章の齟齬がなくなる場合もあります。ら抜き言葉の将来性についても、しばしば話題になっているようです。
現代ではら抜き言葉が「普通」になっている
現代では、文章を書くとき、人と話すときなど、ら抜き言葉を使うのが普通になっていますよね。文化庁の国語に関する世論調査3からも、ら抜き言葉を日常的に使う人が多いことが伺えます。
元々は可能動詞の間違った使い方でしたが、ここまで広まるということは、それほど“使いやすい”言葉であることを示唆しているのです。
筆者も普段はら抜き言葉にならないように気を付けていますが、文章を読みやすくする・誤認をなくす目的で、あえてら抜き言葉にすることもあります。
将来的に動詞の活用形として認められる可能性も?
現在、ら抜き言葉は「日本語の間違い」ではなく「日本語の揺れ」という認識が広まっています。「『ら』が抜け落ちることもある」と丁寧に解説しているテキストもあるほどです。
将来的に、ら抜き言葉は動詞の活用形として認められる可能性もあります。ら有り言葉・ら抜き言葉をうまく使い分けながら、日常のコミュニケーションを円滑にできるといいですね。
ビジネスシーンでら抜き言葉を正しく言い換える方法
日常シーンではあまり気にならないら抜き言葉ですが、ビジネスシーンともなれば話は別でしょう。相手に失礼にならないように、日本語を正しく使わなければなりません。
ここではビジネスシーンでもら抜き言葉を正しく言い換える方法を解説します。
まずはら抜き言葉を見分ける
そもそも、自分が使っている言葉がら抜き言葉なのかどうかを見分ける必要があります。
①まず、ら抜き言葉が使われるのは決まって可能を意味する“動詞”です。その動詞を言い切りの形にしましょう。
見れる → 見る
読める → 読む
②次に動詞の語尾に「〜ない」をつけて、未然形にします。このとき、「〜ない」の直前の母音がア段・イ段・エ段のどれになるかを確認しましょう。
見る → 見ない(イ段)
読む → 読まない(ア段)
③ここでイ段・エ段になった動詞は「られる」を付けられる動詞です。よって、答えは次の通り。
見れる → 見られる
読める → 読める(「ら」は不要)
ら抜き言葉の見分け方をマスターして、すぐさま活用できるようにしておきましょう!
「可能」の意味の「ら」を入れてみる
上記のら抜き言葉の見分け方が面倒な場合には、どの動詞にも一度「可能」の意味の「ら」(または「られ」)を入れてみましょう。そのときに言葉がおかしい・おかしくないかを判断するのです。
- 見る → 見られる
- 読む → 読められる
- 食べる → 食べられる
- 書く → 書けられる
- 探す → 探せられる
- 寝る → 寝られる
日本語を母語とする人なら「読められる」「書けられる」「探せられる」の3つがおかしいことにすぐ気付けますね。
ら抜き言葉と言われるものは、脱落した「ら」を入れるだけでも適切な言葉になるのです。
可能表現と尊敬表現を間違えない言い換え方
ら抜き言葉を直しても、逆にら有り言葉にも問題点があります。先述したように、可能表現と尊敬表現を間違えられてしまうのです。
そこで、尊敬表現の方を工夫して、ら有り言葉とうまく使い分けるようにしましょう。
尊敬表現の言い換え方には次のようなものがあります。
食べられる → 召し上がる
見られる → ご覧になる
寝られる → お休みになる、ご就寝なさる
尊敬表現にはさまざまな表現方法があり、ビジネスシーンでも頻繁に出てきます。ボキャブラリーを増やし、すぐに書ける・話せるようにしておくと安心ですね。
動詞の活用形に注意する
最後に、文章を書くときは日頃から動詞の活用形に注意しましょう。
ここまででわかるように、可能を表す動詞には2種類あります。
- 五段活用できる可能動詞…「れる」
- 動詞+可能の助動詞…「られる」
「ら」を入れない可能動詞をいくつかピックアップしましょう。
「書ける」「読める」「帰れる」「話せる」「飛べる」「言える」「作れる」「登れる」「なれる」など
これらは「ら」を入れない動詞です。「読められる」などは不自然になるため、ら抜き言葉を意識するあまりこうした動詞に「ら」を入れてしまわないように注意しましょう。
意識するべきはら抜き言葉よりも、動詞の活用形です。自信がない人は、厳しく文章チェックをされている書籍や新聞、ニュース記事などを読んで、正しい動詞の活用をインプットしていきましょう。
時代に合わせて日本語も進化している
本来、ら抜き言葉は文法的に間違った日本語です。しかし現代で「食べれる」「見れる」と言っても違和感はなく、時代に合わせて日本語も進化していると言えますね。
しかし、ビジネスシーンではまだまだ「型通りの日本語」が求められており、ら抜き言葉を使うと指摘されたり、相手に失礼になったりする場合も。
ビジネスシーンにおいては、ら抜き言葉を適切に言い換えて使いましょう。