文章を書くうえで、どう書けばいいのか判断に迷いやすいのが数字です。
日本語にはひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字などさまざまな表記方法があり、それに加えて数字にも複数種類の表記方法があります。
今回は文章中での正しい数字の使い方、特に算用数字と漢数字の表記の使い分け方法を解説します。
日本語で使う数字の種類
まずは簡単に、日本語で使う数字の種類を見ていきましょう。
算用数字(アラビア数字)
【アラビア数字】
1、2、3、4、5
算用数字、またの名をアラビア数字は、世界各国で使われている数字表記です。
日本人も幼少期から触れているため、最も身近で使いやすいのではないでしょうか。
漢数字
【漢数字】
一、二、三、四、五
漢字のうち、数字を表すものが漢数字です。
漢字は中国から伝わってきたものですから、中国でも漢数字を使用します。ただし、中国では「漢数字」とは言わず「小写」と言います。
ローマ数字
【ローマ数字】
Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ
ローマ数字はラテン文字から来た数字です。映画やゲームなどのタイトルに使われるのをよく見かけますが、日本語の文章中ではほとんど使用しません。
ここで注意したいのは、「a、b、c 」を「ローマ字」と言うけれど、「1、2、3」を「ローマ数字」とは言わないことです。起源がラテンかアラビアかの違いがあるため、混同しないように注意しましょう。
大字
【大字】
壱、弐、参、肆、伍
大字も中国から伝わった漢字の数字表記で、中国では「大写」と言われます。
漢数字では数字の書き換えが懸念される場合があるため、重要書類などで書き換えを防ぐために使われることが多いです。
数字の基本的な表記ルール
文章を書くとき特に迷いやすいのが、算用数字と漢数字の使い分けです。
まずは、数字の基本的な表記ルールを覚えましょう!
縦書き・横書きで使い分ける
日本語には縦書き・横書きの文章があります。基本的に、縦書きでは漢数字、横書きでは算用数字と使い分けましょう。
現代ではメールも文書も横書きが主流のため、必然的に算用数字を使う機会の方が多くなります。
そんな中でもハガキや封筒の宛名書きなどは縦書きの形式を取るケースが多いです。その場合には、うっかり算用数字で書いてしまわないように注意してくださいね。
固有名詞・熟語は正しく表記する
横書きの文章であっても、場合によっては漢数字を使う方が適している場合があります。それは、固有名詞や熟語を書くときです。
例えば「九州」「四国」には漢数字が使われており、これを「9州」「4国」にしてしまうと、まったく違う意味になってしまいます。また「一石二鳥」という四字熟語を「1石2鳥」と表記するのもおかしいですよね。
固有名詞や熟語などは、しっかりと漢数字を使って正しく表記しましょう。
カウントできる数字は算用数字
算用数字はその名前からもわかるとおり、カウントするために使われます。そのため、文章中でもカウントできる数字には算用数字を使いましょう。
りんごの個数を表す場合…1個、2個、3個
時間を表す場合…午後2時
年数を表す場合…1582年6月2日
金額を表す場合、数字が連続するとわかりにくいため、間に「万」や「億」を使うことで視認性を高めてあげる工夫をするといいですね。
「29,999,999円」→「2999万9999円」
数字も含めて一語となる場合は漢数字
その言葉が数字も含めて一語となる場合には、漢数字を使いましょう。
例えば「一人前」には「成人であること、または成人の資格・能力があること」という意味がありますが、これを「1人前」と書いてしまうと、「1人分の分量」という意味になってしまいます。
他にも「青二才」「一か八か」なども、漢数字を含めて一語です。こうした語には、漢数字を使うのが適切です。
覚えておきたい!数字の特殊な表記ルール
数字表記には上記の基本ルールの他にも、かなり細かい表記ルールが存在しています。ここでは、ライターならしっかり覚えておきたい特殊な表記ルールを見ていきましょう。
またWebメディアや雑誌、新聞などの媒体によってそれぞれ細かいレギュレーションが決まっている場合があります。文章を載せる媒体に数字の表記ルールがあれば、そちらに従ってください。
繰り返す数字
「1人1人」や「一つ一つ」など、数字を繰り返す言葉もありますよね。実は数字を繰り返すときの表記ルールは媒体や用語集によって異なるのですが、最も有力なのは次の2パターンです。
- すべて漢数字にする
- 後ろをひらがなにする
【例】
一人一人、一人ひとり
一つ一つ、一つひとつ
「1人1人」とすべて算用数字で表したり、「1人一人」と算用数字・漢数字を混合するのはあまり適していません。
書き方に迷ったら、「すべて漢字」「後ろをひらがな」のどちらかに統一しましょう。
日本古来の数え方
日本には古来から伝わる、日本語独自の数え方があります。日本古来の数え方をする場合には漢数字を使いましょう。
では、具体例で見ていきましょう。
ついたち、ふつか、みっか → 一日、二日、三日
例 「この内容なら三日で完成します。」
「3日」と書くと、もしかすると「今月の3日」「12月3日」と勘違いする人がいるかもしれません。
「三日」であれば「所要日数は三日間(みっかかん)」だと伝わりやすいです。
よじょうはん、ろくじょう → 四畳半、六畳
ひとま、ふたま、みま → 一間、二間、三間
例「六畳二間のアパート」
「畳」も「間」も昔から伝わる数え方です。これを「6畳2間のアパート」と表記してしまうと、なんだか違和感がありますよね。
また「級」と「段」の数え方の違いにも注意しましょう。
海外では、3級→2級→1級と、数字が小さいものの方が位が上という数え方があります。
一方で日本では、五段→六段→七段と数字が大きいものの方が位が上で、最大九段まであります。
よって、「英検2級」のように「級」は算用数字を使うのに対し、「剣道五段」のように「段」は漢数字を用いるのです。
カウントできるが特殊な言い回しの場合
カウントできる数字は算用数字を用いますが、実は例外があります。それは、カウントはできるが、実質的にはカウントしない場合です。
わかりやすいように、例文を見てみましょう。
そこには、ひとりの女性がいた
→そこには、一人の女性がいた
「ひとり(1人)」は確かにカウントできる数字ですが、ではそこに2人目や3人目がいるかというと、そうではないですよね。書き手は「一人=特定の女性」に焦点を当てています。
ふたりの時間を過ごした
→二人の時間を過ごした
この例文でも「二人」に焦点を当てており、そこに3人目や4人目は存在しません。
このように、数字を算用数字・漢数字どちらで書くかによって意味が変わる語はたくさんあります。どういう意味でその語を使いたいのかによって、漢数字・算用数字を使い分けましょう。
算用数字の半角・全角
算用数字を用いる場合には、半角で書くか・全角で書くかも迷いやすいポイントです。
半角・全角の表記には2通りあります。
- すべて半角で表記(「7つ」「100万人」など)
- 一桁の数字は全角、複数桁は半角(「7つ」「100万人」など)
半角・全角は見た目の読みやすさにも影響します。明確にどう使い分けるかは、媒体のレギュレーションに従えば間違いないでしょう。
最初から最後まで同じ表記で統一
算用数字・漢数字どちらを使っても良いケースでは、最初から最後まで表記を統一させましょう。
例えば、冒頭で「7つのポイントを解説します」と書いた場合には、途中で「七つ」と漢数字に変えたり、「7つ」と全角で書いたりせず、最初から最後まで「7つ」と半角の算用数字で表記します。
もし途中で表記を変えてしまうと読者に違和感を与えてしまいます。細かいポイントですが、文章には統一感を持たせましょう。
文章中の数字表記ルールを意識しよう
文章の数字表記には細かいルールがあるものの、実はほとんどの人が自分の“感覚”で表記しています。
無意識であっても「一人前」「一石二鳥」など正しく表記できている人も多いでしょう。ただ、中には間違えた表記が習慣づいている人も。
改めて数字の表記ルールを意識し、正しい表記を心がけるようにしましょう。