眠ったままの市有地を地域活性化にどう活かすかを考えるのは、その地域の自治体(地方公共団体)の仕事。しかし自治体だけでは建設・運営のためのリソースが不足しているという問題があります。
そこで行われるのが、民間事業者を対象としたサウンディング型市場調査。「サウンディング 」はあまり聞きなれない言葉ですが、ビジネスをしている人なら知っておきたいことの1つです。
今回はサウンディング型市場調査について取り上げ、メリットやデメリット、そして具体的な進め方をまとめました。
※本記事では建築分野における「地盤調査」の意味のサウンディングではなく、自治体やビジネスにおけるサウンディングについて解説しています。
サウンディング型市場調査とは
「サウンディング型市場調査」とは、簡単に言えば自治体が民間事業者を対象に行うマーケティングのようなものです。
市有地をどのように活用するかを検討するにあたって、事業者の意見や提案を聞いたり、市場性を把握したりと、直接対話を行うことで有効活用法についての具体案を固めていきます。
また、サウンディング調査は自治体が資金・ノウハウ・人材を調達するためのものでもあります。サウンディング調査では実際に建設等に関わる事業者を決定し、自治体と事業者が協力しながら地域活性化を図っていくのです。
「サウンディング」の語源
「サウンディング(sounding)」の語源は、英語で「音」を意味するsoundから来ています。動詞だと「sounding=音を出す」という意味になりますが、名詞にすると「探り(を入れる)」とか「調査・打診」の意味に。
サウンディング型市場調査とは、まさに「市有地の活用方法について、民間事業者はどう考えているかを探りを入れる・協力を打診する」ということになります。
メリット
サウンディング型市場調査を行うメリットを解説します。
客観的な市場性を把握できる
自治体のみでビジネスを考えるのは経験やアイデアが不足しており、現役でビジネスを回している事業者にはかないません。
そこで事業者の力を借りることでビジネス視点を得ることができ、客観的に市場性を把握できるようになります。
課題が明確になる
「内部だけで話を進めていたら、後から思わぬ課題が見つかった」という経験はありませんか?自治体だけでは見えなかった部分でも、事業者が加わることで、どこに課題があるかが浮き彫りになります。
また、施策に移す際には事業者も一緒に協力することになるため、事業を進める中で新たに見つかった課題もすぐに把握・対応できるようになるでしょう。
資金と人材を確保し、ノウハウを共有できる
事業内容や事業スキームについての賛同があればいよいよ実行です。しかし自治体だけではヒト・モノ・カネのリソースが足りません。
そこで賛同した事業者と協力することで、自治体は資金や人材を確保でき、さらに事業者と自治体の持つノウハウを共有できます。
デメリット
一方でサウンディング型市場調査にはデメリットもあるので、確認しておきましょう。
スケジュール擦り合わせの問題
事業内容に賛同があっても、自治体には自治体のスケジュールが、事業者には事業者のスケジュールがあるもの。
うまく調整できれば問題ありませんが、噛み合わなかった場合には他の事業者を探すか、スケジュールを変更するか、事業自体が白紙に戻ることもあり得ます。
有識者の意向を尊重
自治体は県知事や市長などの有識者とも繋がっているため、事業計画について意見を求める場面も多いです。
そこで有識者の意向を確認できますが、事業者の意向と違った場合には、有識者の意向を優先しがちです。それにより自治体の事業者の間に亀裂が生まれてしまうことも少なくありません。
形だけのサウンディングになることも
「本気で地域活性化を図りたい。住民にとって有用なものにしたい」という自治体であれば、しっかりとサウンディングに取り組むでしょう。
しかし、中には
- 内容の良し悪しよりもとりあえず参加事業者を確保したい
- 本当はやりたくないので、断念の理由を探すためにとりあえずサウンディングだけする
という自治体もあるのは事実です。
すると形だけのサウンディングとなり、きちんと市場性が見えないまま施工に着手したり、「参加事業者がいなかったから」とアリバイを作って意図的に計画を断念したりといった、残念な結果に終わることもあります。
サウンディング調査の進め方
自治体が民間事業者に事業スキームを説明し、地域活性化のための計画を一緒に実行する企業を探すためにサウンディング型市場調査が行われます。
では、その具体的な進め方を解説しましょう。
サウンディング調査実施要綱の作成・公表
まず、民間事業者はサウンディング型市場調査の実施要綱を作成し、公表します。実施要綱には、
- 今回取り組む事業の大まかな概要
- 事業説明会の日時、場所
- 対話項目の掲示
などを明記します。
ホームページへの掲載、商工会議所への掲示はもちろん、目ぼしい民間事業者がいれば直接企業訪問をし、説明しに行くのも良いでしょう。
事業説明会を開催
指定した日時・場所にて事業説明会を開催します。内容としては、新規事業の具体的な内容や事業スキーム、スケジュール案、募集している事業内容(建設・マーケティングなど)、資金計画など。
説明会の後は事業者に企画提案書を提出してもらったり、申し込みの受け付けをして事業者の公募を行います。
一度事業説明会を通して興味のある民間事業者を呼び込み、その後の対話に繋げていくので、説明会にはしっかりと取り組みたいところです。
ただし、すでに目ぼしい民間事業者がいる場合や、説明会への参加事業者が少ない場合には省力してもかまいません。
民間事業者との対話を実施
事業説明会の後は応募してきた民間事業者と、事前に提出してもらった企画提案書をもとに直接対話を行います。その際、自治体の考えを再度共有すると良いでしょう。
- 市場ニーズはあるか
- どんな事業案があるか
- 課題はどこにあるか
- どれくらいのリソース(資源や人材など)を割けるか
- スケジュールの擦り合わせ
など、事前に聞いておきたいことをまとめておくとスムーズです。
対話の中でその事業者に実施企業となってもらえるかを打診しましょう。お互いに合意すれば、地域活性化のために手を取り合って事業を進めていくことになります。
対話結果を作成・確認・公表する
最後に、説明会への参加事業者やその他の関係者に対話の結果を公表しなければなりません。
サウンディング型市場調査を行ったら対話結果を作成、参加事業者に一度確認してもらい、最後に公表して終了です。
サウンディング型市場調査の意味を理解して地域活性化を目指そう
地域の活性化に積極的な自治体もいれば、あまり意欲的ではない自治体もいます。「上の方から言われて…」としぶしぶサウンディング調査を行うよりも、強い意志を持って取り組む方が、その市有地を有意義に使う最善の方法が見えてくるでしょう。
自治体の取り組む姿勢は民間事業者には伝わりますし、将来的には地域の住民が利用するからこそ、きちんとした態度で取り組みたいですね。
サウンディング型市場調査を通して事業パートナーを探し、あなたの地域活性化を目指しましょう!