マーケティングで使われるLTVとは?計算方法とLTV向上のポイント

マーケティングの現場では「LTV」という言葉が頻繁に使われますが「実は意味をわかっていない…」という人もいるのではないでしょうか?

LTVは企業のマーケティング戦略で活用できるだけでなく、顧客のロイヤリティ(愛着度)や満足度にも関わる大切な指標です。

今回はLTVの意味や計算方法、そして現場での活用方法について解説します。

 

目次

マーケティングにおけるLTVとは?

「LTV」とは「Life Time Value(ライフタイムバリュー)」の頭文字を取ったもの。日本語では「顧客生涯価値」という意味です。

顧客はその企業で一度お買い物をしたら終わりではありません。食料品は日々の生活の必需品ですし、大型家電や家具なども必ず買い替える時期がきます。購入を繰り返していくことで、顧客は企業にお金を何度も落としていきます。

このように、顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益が「LTV」なのです。

 

サブスクリプションサービスでのLTV

毎月定額を支払うことで、商品やサービスの利用権を得るサブスクリプションサービスでは、顧客との永続的な関係性が生まれます

サブスクリプションのLTVを上げるポイントは「いかに継続してもらうか」です。顧客の利便性を向上させたうえで飽きるのを防ぐ工夫をし、解約率を下げることが重要になります。

ただ「LTV」という言葉はマーケティング・医療・金融と不動産によって意味が大きく異なります。次にそれぞれの意味を解説するので、使い分けられるようにしておきましょう。

 

金融や不動産では評価額に対するローンの比率を示す

不動産や金融の世界では「Loan to Value(ローントゥバリュー)」の略語として「LTV」が用いられます

これは「総資産有利子負債比率」という意味。不動産を取得する際、借り入れの比率が評価額の何%を占めるかという割合や、不動産投資信託(REIT)が保有している不動産の価格に対する負債の割合を示します。この割合が小さいほど借入金が少なく、投資商品・ローンの安全性が高いと判断されます。

参考までに、REITでは次の計算式でLoan to Valueを算出します。

LTV=有利子負債÷総資産
LTV=有利子負債÷(有利子負債+出資総額)

不動産や金融ビジネスの場合、マーケティングの「LTV」とはまったく違う意味で使われることに注意しましょう。

 

医療では人工呼吸器を示す

医療機器に「LTV」という人工呼吸器があります。軽くてコンパクトで、乳児から成人まで対応。病院だけでなく自宅でも使える医療機器です。

医療に携わる人でなければ関わることはほとんどないですが、豆知識があると医療系ドラマなどで登場したときに使えるかもしれませんね。

 

LTVの計算方法

LTVの計算方法は、サブスクリプションか、買い切り型か、などによって変わるため、計算式もいくつかあります。

  1. LTV = 顧客の平均購入単価 × 平均購入回数
  2. LTV=顧客の平均購入単価×平均購入頻度×契約継続期間
  3. LTV = 顧客の年間取引額 × 収益率 × 顧客の継続年数
  4. LTV = (売上高 - 売上原価) ÷ 購入者数

 

(例)

  • 通販で1,000円の定期配送商品を販売
  • 年間20%が解約

平均購入単価:1,000円
平均購入頻度:12回
契約継続期間:1÷0.20=5年

LTV=1,000円×12回×5年=60,000円

ただしこのLTVは売上だけの値なので、そこに広告費などの「顧客獲得費用」を加味する場合は次のような計算式が用いられます。

LTV=(平均購入単価 × 平均購入頻度 × 契約継続期間)ー(新規獲得費用+顧客維持費用)

検証する商品・サービスのモデルでわかりやすい計算式を参考にしてみてください。

 

LTVの活用と向上のポイント

LTVはマーケティングのどんなシーンで活用できるのでしょうか?また、LTVを向上させるにはどんな施策を行えば良いのでしょうか?

続いては、LTVの活用の例や、LTV向上のポイントを解説します。

 

ドコモの対策

NTTドコモでは、LTVを向上させるため2017年から長期契約者の優遇を強化しています。内容は4年以上契約している使用者には割引や、dポイントの利用によるスマホ代の削減など、顧客の料金負担を減らすというもの。

格安SIMへ移行する消費者が増えていく中で、新規顧客の獲得コストよりも、維持コストをかけて既存顧客の解約率を下げることの方が投資対効果が高いからです。

これはスマホキャリアだけに言えることではありません。他の商品・サービスを扱っている企業も同様に、新規顧客の獲得より、すでに自社の製品の利用体験のある既存顧客をフォローする施策の方がLTVの向上にも繋がりやすいと言えます。

 

LTVを最大化させるには

ドコモのように既存顧客を優遇する他に、LTVを最大化させるポイントが5つあります。

  • 新規顧客の獲得費用を下げる
  • 平均購入単価を上げる
  • 商品の購入頻度を上げる
  • 継続期間を伸ばす
  • 顧客の維持コストを下げる

単純に単価を上げるだけでは顧客からの反感を買いますし、継続期間を伸ばしたくて定期回数の縛りを長くすると新規顧客を獲得しづらくなります。

どれか1つだけに取り組むのではなく、複数の施策に取り組んで、サービスの品質やサポートも充実させながら、総合的にLTVを向上させていくことが重要です。

 

広告のCPA算出

新規顧客1人あたりの獲得費用を「CPA」と言います。LTVがわかれば、広告を出稿するときの上限CPAも次の計算式で算出可能です。

上限CPA=LTV × 粗利率

 

(例)

LTV:60,000
粗利率:20%
上限CPA=60,000 × 20%=12.000

新規顧客1人あたりの獲得費用の上限は12,000円ですから、仮に10万円分のWeb広告を出した場合、9人以上の新規顧客を獲得できれば、その広告の費用対効果が高いと言えるでしょう。

このように、LTVは広告にかける費用を計算するために活用可能です。

 

SaaSの公式

SaaS型の事業ではソフトウェアをオンラインで提供していることから、顧客の継続利用が企業の売上に結びつきます。そこでSaaS事業の将来性を見いだすために次の公式が使われるようになりました。

LTV / CAC > 3x

この公式について詳しく解説すると「LTVはCAC(顧客獲得費用=CPA)を3倍にした値を上回らなければならない」ということです。

SaaS事業では顧客獲得費用以外にも、開発コストや運営コスト、その他細々とした費用がかかっています。よって、単純にLTV > CACだけではコスト回収をして利益を出すことができないのです。

LTVがCACの3倍を上回っていればその事業には将来性や安定性があると言えるでしょう。

 

アプリプロモーション

多くのアプリパブリッシャーが、バナー広告やSNS広告などを使ってアプリプロモーションを実施しています。そこでアプリプロモーションを成功させるための指標がROASとLTVです。

ROASは「Return On Advertising Spend」の頭文字を取ったもので、その広告経由で売上がどれだけ発生したのかを計算します。投資に対するリターン率のことですね。

ROAS=売上÷広告費×100(%)

(例)

売上:200万
広告費:100万

ROAS=200 ÷ 100 × 100(%)=200%

この場合、広告費に対して200%の売上を上げられたということです。

アプリの売上とは、主にアプリ内課金や、アプリ内で表示する広告収益のこと。しかし、アプリを無料の範囲内でしか使わない顧客もいますよね。

そこでLTVを算出し、かけられる広告費の目安をチェック。ROASとLTVから、次の広告戦略を打ち出していくのがポイントです。

 

これからの時代はLTVが重要になる理由

サブスクリプションなどは安価でユーザーが利用を始めやすいというメリットがありますが、逆にあまり継続せずにすぐ辞める人も出やすいということでもあります。

商品やサービスが飽和状態にあり「やってみては辞める」「使ってみては乗り換える」という人が増えたこの時代で、企業が継続的に利益を上げるためにはLTVの向上が重要です。

LTVの向上を意識しながらマーケティングやサービスの改善に取り組みましょう。

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