売り上げが指標になる「マーケティング」に比べて「ブランディング」の成果は目に見えにくいのが特徴です。
実際にブランディングの手法はわかっていても、それを実行した後の効果測定で「この効果はブランディングによるものなのか?それとも他の販促活動によるものなのか?」という疑問が残ります。
そこで今回は、ブランディングの効果測定のために設定しておきたい指標について解説します。
ブランディングの課題は定量化しにくいこと
似たような商品・サービスが溢れる現代では、いろいろな場面でブランディングの大切さが主張されています。ブランディングを行うことで、次のようなメリットを得られるのです。
- 自社が「ブランド」として識別され、他者と差別化できる
- 「〇〇といえばこの会社」のようにイメージ形成ができる
- 他のマーケティング活動の後押しになる
- 認知度や売上アップ、好感度やエンゲージメント率の向上
しかし、その一方で大きな課題が残ります。それは、ブランディングの効果を定量化しにくいということです。
認知度や好感度といった概念は数値には表れにくいもの。
売上が上がったと言っても、それがブランディングによって売上アップに繋がったのか、それとも他のマーケティング施策による売上アップだったのかが見えづらいです。
ブランディングでPDCAを回していくためには、その効果を定量化して測っていく必要があります。
ブランディングの評価指標と効果測定方法
ブランディングの見えづらい効果を定量化するためには、認知度や好感度といった概念に数値をあてはめるなどの工夫が必要です。
ブランディングの効果測定にオススメの評価指標と効果測定方法をご紹介します。
ブランド認知度・知名度の指標と測定
そのブランドについて知っているか、どんな商品・サービスを提供しているかなどの「認知度」「知名度」は、ブランディングの代表的な指標です。
認知度・知名度が高いほどその市場で知られているということなので、市場でのシェア拡大にもつながります。
新規接触率
新規接触率とは、簡単にいえば「そのブランドを初めて知った人の割合」です。
新規接触率は次のように計算します。
新規リーチUU ÷ 各媒体接触UU = 新規接触率(%)
例えば、A広告で10,000人のユニークユーザーに対し、新規リーチが5,000人なら新規接触率は50%。B広告で25,000人のユニークユーザーに対し、新規リーチが23,000人なら新規接触率は92%です。
その割合が高ければ高いほど「初めて知った人が多い=あまり認知されていない」という判断ができます。。
目標は新規接触率を下げて認知度を高めていくことですが、すでに新規接触率が低い媒体に広告を出してもあまり効果は見込めません。
例でいえば、A広告よりもB広告への広告配信が有効ということになります。
アンケート調査
アンケート調査を行い、消費者のリアルな回答からブランドの認知度を推し量るのもよくある測定方法の1つです。
アンケート調査は例えば次のような設問・回答方式で行います。
- ブランド名のみを提示し、ブランドについて知っているかを訪ねる。「よく知っている」「知っている」「聞いたことがある」「あまり知らない」「まったく知らない」の5段階で回答。
- ブランド名とロゴを提示し、ブランドについて見聞きしたことあるかを訪ねる。「よく知っている」「知っている」「見た・聞いたことがある」「あまり知らない」「まったく知らない」の5段階で回答。
- ブランド名やロゴを提示し、そのブランドの商品・サービスについて知っているか訪ねる。「利用したことがある」「知っている・見たことがあるが利用したことはない」「あまり知らない」「まったく知らない(見たことも聞いたこともない)」の4段階で回答。
アンケート調査であれば、認知度や知名度といった概念を3〜5段階程度にスコア化できるという利点があります。
マクロミルなどアンケート調査代行サービスもあるので、施策の前後で利用を検討してみても良いでしょう。
エゴサーチ
GoogleやSNSなどで自社名を入力して検索することを「エゴサーチ」といいます。
エゴサーチを行うことで自社のことを話題にしている人を見つけたり、どんな話題が取り上げられているかを調べたりできます。
例えばTwitterでエゴサーチをすると、ツイートに会社名や商品名を使ったツイートがヒットします。
世の中には同じような名前のものが溢れていますが、いくらスクロールしても自社のことを指したツイートが見つからない場合、まだSNSに広まるほどの知名度ではないということです。
Instagramで会社名や商品名にハッシュタグをつけてエゴサーチすると、そのハッシュタグの投稿数も表示されます。
ただ、エゴサーチは「自社がどう思われているか」や「どれくらい言及されているか」を調べるのには最適ではあるものの、十分に定量化できないという課題が残ります。
ブランドアフィニティ・ブランドロイヤリティの指標と測定
ブランドアフィニティとは、そのブランドに対して親近感を抱いているということ。
そしてブランドロイヤリティとは、そのブランドに対する忠誠心や愛着のことです。
ブランドアフィニティやブランドロイヤリティが高まることで、顧客が継続して購入してくれたり、口コミによる新規顧客獲得に繋がったりなどのメリットがあります。
ブランディングはまさにブランドアフィニティやブランドロイヤリティを高めるための活動だと言っても過言ではありません。
DWB(Definitely Would Buy)
DWB(Definitely Would Buy)とは「絶対に買いたい」という消費者の購入意向を表したものです。
消費者に「絶対に買いたい」「買いたい」「どちらでもない」「あまり買いたくない」「まったく買いたくない」という5段階で評価してもらい、それぞれの割合を算出します。
もしくは特定の消費者に対し自社商品を1つずつ提示し、それぞれで同じアンケートを行い、「絶対に買いたい」と回答した割合を算出します。
DWBの割合が大きければ大きいほどブランドアフィニティにブランドロイヤリティが高いということです。
NPS(Net Promoter Score)
NPS(Net Promoter Score)とは「他人への推奨度(おすすめ度)」を数値化したものです。
「この商品・サービスを友人・知人に勧めますか?」という質問に対し、0〜10の数字でおすすめ度を回答してもらいます。
- 10~9:推奨者・プロモーター
- 8~7:中立者
- 6~0:批判者
の3段階で評価していきますが、この割り振りからわかる通り、わりと厳しい目で見ていきます。
ここからNPSを出すには、全体の推奨者の比率から批判者の比率を差し引きます。
例えば推奨者が70%、中立者が10%、批判者が20%いた場合、NPSは50です。批判者の数が多ければ、マイナスの数値になることもあり、-100〜100までの数値で表されます。
NPSが100に近いほど推奨者が多く批判者が少ないということ。リピーターや新規顧客の獲得だけでなく、「消費者が企業に対し良いブランドイメージを持っている」という指標にもなります。
ロイヤルカスタマー数
先ほどのDWBで「絶対に買いたい」と回答した人がロイヤルカスタマーです。ロイヤルカスタマーは自社商品を継続して購入してくれるため、言い換えれば「良質なリピーター」だと言えます。
多くの消費者に同じ調査をしたうえで、ロイヤルカスタマーの数と割合を算出してみましょう。
「パレートの法則」によると、ロイヤルカスタマーの数は全顧客数のうち2割程度ですが、利益全体の8割を担っています。さらに「1:5 の法則」では、新規獲得のコストはロイヤルカスタマー獲得コストの5倍です。
こうした法則から読み取るだけでも、ロイヤルカスタマーの存在は今後のビジネス存続に大きな影響を与えることがわかりますね。
利益・売上貢献の指標と測定
売上がアップした、利益率が高くなったといっても、それが必ずしもブランディングによる効果とは限りません。
営業ががんばったおかげだったり、仕入れで値引きしてもらったりなど、様々な要因が絡んでいきます。
そのためブランディングだけによる売上効果を測るのは難しいのですが、ここでは参考になる指標をご紹介します。
リピート率×単価
購入者のうちどれくらいがリピーターであるか、さらにリピーターはどれくらいの購入単価であるかでブランディング効果を測ります。
リピーターが多いということは、前述したようにブランドアフィニティやブランドロイヤリティが高いということ。
1人あたりの購入単価が高ければ、商品1つの単価というより、ライン買いやまとめ買いなどが考えられます。購入単価の高いリピーターは、ブランドに対する信頼度や愛着がかなり高まっているということです。
リピート率×単価が、売上に対するブランディングの影響力になります。
購買チャネル
「どこで購買したか」もブランディング効果を測る指標になります。
例えばAmazonや実店舗などは、誰でもふらりとお店の中を覗きに来れます。
しかし、Googleで直接商品名や会社名を検索し、自社が運営するECサイトから購入した場合、その消費者のロイヤリティは高いと言えるでしょう。
ECサイトの購買まで繋がった流入を調べてみると、オーガニック検索の他SNSやダイレクトなアクセス(ブックマークなど)からの流入も見つけられます。
こうした流入が多ければ、消費者が自発的に買いに来るほどのブランディングができているということになります。
指標(KPI)を意識しながらブランディングしよう
指標(KPI)が曖昧になったり、効果がぼやけたりしていると、取り組むべきブランディング施策もぼやけていまい、あまり大きな効果が得られません。
そうした事態を避けるため、ブランディングでは指標を意識しながら取り組んでいきましょう。