「民藝を巡る出雲の旅」島根のおすすめの窯元8選と焼き物の魅力をご紹介

Photo taken with Focos

島根県は個性豊かな窯元が集まっているのをご存知ですか?元々民藝が好きな方にはもちろん、最近ハマった方にもぜひ訪れていただきたい、器の産地のひとつです。どうして島根県は民藝や焼き物が盛んなのか。次の章でご紹介していきます!

目次

【島根に窯元が多い理由】

島根に窯元が多いのには、大きく2つの理由があると言われています。

不昧公の存在

京都、金沢と並び日本三大茶処、菓子処として有名な島根県の松江。江戸時代の大名茶人であった松江藩松平家 7 代藩主・松平治郷(はるさと)の城下町であったことから、松江の茶の湯文化や菓子文化は栄えてきました。

松平治郷は不昧公(ふまいこう)と呼ばれ、「不昧流」という茶道の流派を設立。さらに各地の茶器を収集・調査し、「雲州蔵帳」という記録帳にまとめるなどして、松江の工芸も発展させていきました。雲善窯など、不昧公の御用窯として開かれ、現在まで続く窯もあります。

民藝運動

大正末期から昭和初期にかけ、全国各地の名もなき手仕事に実用性から生まれる「用の美」を見出し、発展を促していった「民藝運動」。思想家の柳宗悦(やなぎむねよし)が提唱し、陶芸家の河井寛次郎(かわいかんじろう)、浜田庄司(はまだしょうじ)を中心としたこの運動に、島根の工人たちは早くから参加していました。

松江商工会議所の太田直行の招きにより、昭和6(1931)年、柳らが「島根工藝診察」を敢行したのをきっかけに、翌年には島根民藝協会が発足。ここから島根の焼き物文化はさらに盛り上がっていったのです。

この2つの理由から、今でも多くの窯元が作陶している島根県。今回はその中でも代表的な窯元と、鮮やかな色彩が特徴の窯元をご紹介していきます。

【出雲を代表する民藝の3大窯元】

出西

シンプルかつ丈夫なデザインで、日常使いにもってこいな「出西窯(しゅっさいがま)」。

戦後すぐ、民藝運動の中心人物、柳宗悦に感銘をうけた若者が始めました。その後、医師でありながら、「民藝のプロデューサー」として名を馳せた吉田璋也(よしだしょうや)の指導を受けながら、発展していきました。吉田璋也は柳宗悦をはじめ、民藝運動の指導者たちと出西窯を引き合わせました。残念ながら現在は非公開ですが、彼の記念館も出西窯の敷地内にあります。

登り窯・電気窯・灯油窯で作られており、年に3〜4回窯焚きされています。タイミングが合えば窯焚きや窯出しの様子を見られるかも。

「呉須(ごす)」と呼ばれる青い釉薬が印象的で、「出西ブルー」と呼ばれています。他にも白や黒の釉薬などカラーバリエーションが豊富。それでいて絵付けなどの装飾が控えめの器が多いので、和洋どちらにも使えます。

幅広い用途をお求めの方や、初めて民藝に触れる方にもってこいだと思います。

工房は定休日以外ならいつでも見学可能。(団体の方は事前のご予約が必要です。)

岡山県・倉敷の石川昌浩(https://www.instagram.com/msh614kw/)さんが作ったガラスのコップ。

併設されている「ル コションドール 出西」というカフェでは、出西窯の器で食事を楽しめます。

出西窯の場所  

〒699-0612 島根県出雲市斐川町出西3368

アクセス    

○飛行機の場合→出雲空港からタクシーで約 20分(約 11km)。

○電車の場合→JR出雲市駅からタクシーで約 10分(約 6km)。

島根県以外で出西窯の器を購入できる場所はこちらから出西窯公式サイト

営業時間

9:30〜18:00 火曜定休(展示販売館「くらしの陶・無自性館」)

9:30〜17:00 火曜・第2・第4水曜定休 (ル コションドール 出西) 

お問合せ

0853−72−0239 

湯町窯  

江戸時代中頃に始まり、「湯町窯(ゆまちがま)」、「雲善窯(うんぜんがま)」、「舩木窯(ふなきがま)」の3つに派生していった「布志名焼(ふじなやき)」。

その中でも湯町窯は大正11年に開かれました。3代目の福間 琇士さん、息子の庸介さんとそのご家族で営まれています。ぽってりとしたフォルムが可愛らしい、エッグベーカーが定番アイテムです。

ブラウンと黄色の物が黄釉、灰色がかった色の物が海鼠釉。

べっこうのような飴色の黄釉(きぐすり)が特徴的。その温かみのある色合いで、一目で湯町窯であることがわかります。

また灰色に近いような深い青色の海鼠釉(なまこゆう)のような、落ち着いたトーンの物も有名です。

もうひとつの特色が、「スリップウェア」。スリップウェアとは、器の表面に「スリップ」と呼ばれる、土に水を加えた化粧土を装飾して焼かれた陶器のことです。写真の奥の棚の上段にあるお皿や、手前の机にあるお皿などがスリップウェアです。

どこかほっこりするデザインで、眺めているだけでも癒されます。

湯町窯の場所  

〒699-0202 島根県松江市玉湯町湯町965−1  

アクセス    

○JR玉造温泉駅から徒歩1分。

 JR玉造温泉駅までは、

・飛行機の場合→出雲空港からタクシーで荘原駅(約10分)。そこからJR山陰本線でJR玉造温泉駅(約20分)。または米子鬼太郎空港から空港連絡バスでJR松江駅(約45分)。そこからJR山陰本線かタクシーでJR玉造温泉駅(どちらも約10分)。

・電車の場合→岡山駅から特急やくもでJR玉造温泉駅。(約2時間45分)。

営業時間

8:00~17:00時(平日) 

9:00~17:00(土日・祝日)

お問合せ

0853ー72ー0239

袖師

呉須と飴色の二彩が見事な「袖師窯(そでしかま)」。

明治10年に開かれ、五代目の尾野友彦さんが作陶されています。

ストライプのような縞模様や市松模様など、和風ながらもポップな柄が多く、洋食器とも馴染みます。

お皿だけでなく、コーヒーカップからお茶碗、花瓶など、あらゆる器が作られています。

さまざまな色の焼き物があるので、お手持ちの器に差し色のような感覚で加えるのもオススメです。

袖師窯の場所  

〒690-0049 島根県松江市袖師町3−21

アクセス    

○JR松江駅から市営バス81南循環内回り「袖師町」下車(約5分)。

 JR松江駅までは、

・飛行機の場合→出雲空港から空港連絡バスでJR松江駅(約30分)。または米子鬼太郎空港から空港連絡バスでJR松江駅(約45分)。

・電車の場合→岡山駅から特急やくもでJR松江駅。(約2時間40分)。

営業時間

9:00~18:00 日曜定休

お問合せ

0852−21−3974 

【カラフルで個性的な窯5選】

島根には他にも窯元があり、そのどれもが色とりどりの特徴があります。

雲善窯

目の覚めるようなパキッとした青い色が印象的。湯町窯と同じ、布志名焼にあたります。

江戸時代に不昧公好みの御用窯として開かれたこともあり、茶器が豊富。

藍のような深い味わいのものから、ミントアイスのような明るいトーンまで、さまざまな青を楽しめます。青い器を探している方には、はずせない窯元です。

フレンチトースト専門店のコラボでも話題になるなど、現代のライフスタイルに合わせた器も多く作られています。

雲善窯の場所  

〒699-0203 島根県松江市玉湯町布志名428−8

アクセス    

○JR玉造温泉駅から車で約5分(約3km)。

 JR玉造温泉駅までは、

・飛行機の場合→出雲空港からタクシーで荘原駅(約10分)。そこからJR山陰本線でJR玉造温泉駅(約20分)。または米子鬼太郎空港から空港連絡バスで松江駅(約45分)。そこからJR山陰本線かタクシーでJR玉造温泉駅(どちらも約10分)。

・電車の場合→岡山駅から特急やくもでJR玉造温泉駅。(約2時間45分)。

○車の場合→山陰道松江中央ICから国道9号経由で約5分(約4km)。

営業時間

8:30~17:30 月曜定休

お問合せ

0852ー62ー0738 

椿窯

「半胴(はんど)」と呼ばれる水かめ作りから始まった「温泉津焼(ゆのつやき)」の窯元のひとつ。

京都で作陶していた荒尾常蔵が、1969年に温泉津に移住し開かれた窯です。現在は五代目の荒尾浩之さんが作陶しています。

さまざまな釉薬で作られる、華やかな器。少しごつごつしたとしたフォルムで、可愛らしく牧歌的な印象です。

スポイト型やチューブ型の筒に、粘土を水でといたものや釉薬を入れて模様を描く「イッチン」という技法も特徴。

このイッチンを使って描かれた椿の模様が、代表的なデザインとなっています。

椿窯の場所  

〒699-2501 島根県大田市温泉津町温泉津イ12-2

アクセス   

○JR温泉津駅から車で10分。

 JR温泉津駅までは、

・飛行機の場合→出雲空港から空港連絡バスでJR松江駅(約30分)。そこから特急スーパーおきでJR温泉津駅(約1時間)。または米子鬼太郎空港から空港連絡バスでJR松江駅(約45分)。そこから特急スーパーおきでJR温泉津駅(約1時間)。

・電車の場合→岡山駅から特急やくもで出雲市駅(約3時間10分)。そこからJR山陰本線でJR温泉津駅(約1時間10分)。

営業時間

9:00〜17:00 不定休

お問い合わせ

0855−65−2286

白磁工房

 当主の石飛勝久さんと息子の勲さんの二人で作陶されています。「白磁」とは、その名の通り模様のない白色の磁器のこと。純度の高い素地に、鉄分などの不純物の少ない透明釉薬をかけ、高温の還元炎で焼成されています。

シンプルなデザインのものが多く、使いやすいのが特徴。洋物の食器や花器なども作られています。

白磁工房の場所 

〒690-2634 島根県雲南市三刀屋町乙加宮1207−1

アクセス

○鍋山交流センター前バス停から徒歩2分。

 鍋山交流センター前バス停までは、

・電車の場合→出雲市駅から出雲市バス三刀屋線三刀屋バスセンター行で旭町(約45分)。そこから雲南市民バス根波線三刀屋バスセンター行で鍋山交流センター前(約10分)。

○車の場合→三刀屋木次ICから約15分。

営業時間

9:00〜17:00 不定休(見学の際は事前確認をオススメします。)

お問合せ

0854ー45−4514

舩木窯

湯町窯、雲善窯と同じく布志名焼の系譜で、「布志名黄釉」というレモンイエローのような黄色の釉薬が特色。雲善窯のすぐ近くにあります。

6代目の舩木伸児さんが作陶しています。職人の代によって趣が変わり、西洋のような装飾のものからシンプルなデザインのものまで。幅広い作風を楽しめます。

舩木窯の場所 

〒699-0203 島根県松江市玉湯町布志名437

アクセス   

○JR玉造温泉駅から車で約6分(約3km)。JR玉造温泉駅までは、

・飛行機の場合→出雲空港からタクシーで荘原駅(約10分)。そこからJR山陰本線でJR玉造温泉駅(約20分)。または米子鬼太郎空港から空港連絡バスで松江駅(約45分)。そこからJR山陰本線かタクシーでJR玉造温泉駅(どちらも約10分)。

・電車の場合→岡山駅から特急やくもでJR玉造温泉駅(約2時間45分)。

○車の場合→山陰道松江中央ICから国道9号経由で約5分(約4km)。

営業時間

9:00〜16:30くらいまで 不定休(見学の際は事前確認をオススメします。)

お問合せ

0852−62−0710

森山窯

椿窯と同じく、温泉津焼の窯元のひとつ。民藝運動の中心人物の一人である河井寛次郎の最後の内弟子、森山雅夫氏が開いた窯です。

全体的に少しグレーがかったような落ち着いた色合いと、一息つきたい時にそっと寄り添ってくれる、柔らかなシルエットが魅力です。

森山窯の場所 

〒699-2501 島根県大田市温泉津町温泉津イ3−2

アクセス   

○JR温泉津駅から大田市生活バス温泉津線上町行きで終点まで(約9分)。そこから徒歩で約11分。または大田市生活バス温泉津線上町行きでやきもの館前(約10分)。そこから徒歩で約5分。

JR温泉津駅までは、

・飛行機の場合→出雲空港から空港連絡バスでJR松江駅(約30分)。そこから特急スーパーおきでJR温泉津駅(約1時間)。または米子鬼太郎空港から空港連絡バスでJR松江駅(約45分)。そこから特急スーパーおきでJR温泉津駅(約1時間)。

・電車の場合→岡山駅から特急やくもで出雲市駅(約3時間10分)。そこからJR山陰本線でJR温泉津駅(約1時間10分)。

○車の場合→山陰道湯里ICから国道9号経由で約5分(約5km)

営業時間

8:30〜18:00 日曜午後定休(連絡があれば営業)

お問い合わせ

0855−65−2420

【おすすめの窯元の巡り方】

まずは各地から出雲松江に向かうのがオススメです。そこを拠点に、2日にわけて窯元をめぐるのが良いでしょう。

出西窯・椿窯・白磁工房・森山窯で1日、袖師窯・雲善窯・舩木窯・湯町窯で1日のスケジュールを組むと、ゆっくりまわれます。

出西窯・椿窯・白磁工房・森山窯出雲空港からの方が近いです。出西窯と白磁工房は車で25分ほど。白磁工房と椿窯は車で1時間20分ほど。そして椿窯と森山窯は道路を挟んで向かいにあります。ですので、出雲空港から出西窯→白磁工房→椿窯→森山窯の順だと、スムーズに巡れます。

袖師窯・雲善窯・舩木窯・湯町窯はどれも近い位置にあります。袖師窯と湯町窯が一番離れていますが、それでも車で10分ほど。この2軒の間に雲善窯と湯町窯があります。松江駅から袖師窯が車で5分ほどで一番近いので、松江駅→袖師窯→雲善窯→舩木窯→湯町窯の順がまわりやすいと思います。

同じ島根県でも、窯元ごとに全く異なる個性や魅力があります。その違いをぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

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