天才編集者・箕輪厚介さんが考える「編集者」とは?

目次

編集とは?
面白い素材を集めて料理し、世に“喜び”や“驚き”を提示すること。あまねくビジネスに有用な技術である。

編集者として手がけた書籍は1年間で累計100万部を突破。月会費5940円のオンラインサロンには1000人超が参加。加速度的に成長し続ける天才編集者・箕輪厚介さんによる連載企画が始まります。

今回はその“β版”として、どんな連載にするかを箕輪さんに考えてもらった会議の模様をそのままコンテンツ化。二転三転しつつも、結果的にとても魅力的な新企画が誕生しました。そして早くも、「編集とは何か」という本質に迫った内容となっています。

箕輪 厚介(みのわ こうすけ)

編集者 株式会社幻冬舎所属

双葉社にて、見城徹『たった一人の熱狂』をはじめとするビジネス書をヒットさせ、2015年に幻冬舎へ入社。2017年には「NewsPicksBook」の編集長に就任。堀江貴文『多動力』、落合陽一『日本再興戦略』など話題作を連発し、創刊1年で累計発行部数100万部を突破。昨年には、自著『死ぬこと以外はかすり傷』を刊行し、こちらも10万部を超える大ヒット。現在はオンラインサロン「箕輪編集室」を経営するなど、既存の編集者の枠に囚われない活動を続けている。

大崎 安芸路(おおさき あきじ)

編集者/メディアディレクター

90年代の伝説のファッション誌『relax』や『asAyan』など、数々のカルチャー誌の編集を経て、制作会社ロースターを立ち上げる。女性ファッション誌『Soup.』元編集長。独立後は、美女コンテンツの先駆け『美女暦』やAKB48写真集『わがままガールフレンド』のディレクション、写真週刊誌『FLASH』でカメラマンとして連載を持つなど、雑誌編集者の枠を超えて活動。現在は持ち前の企画力を生かし、ビジネスやグルメのコンテンツ制作にも力を入れている。
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レジェンド編集者は、きっと僕のことが嫌いです

大崎
箕輪さんの連載企画をやらせてもらうことになりました。つきましては、どんな企画にするかたたき台を用意したので、一緒に考えていただければと。何か「こんな連載がやりたい」というのはありますか?
箕輪
ひとつ言えるのは、最近は自分の記事が毎日のようにネットに上がっているので、普通にインタビューするだけでは新鮮味がないのかなと。
大崎
では、誰かと対談したり、コラボしたりというのはどうですかね。
箕輪
そっちの方が面白いかもしれません。例えば川村元気さんがメンズノンノで連載していて本にもなった『仕事。』みたいな感じとか。

あれは宮崎駿さん、篠山紀信さん、秋元康さんといった巨匠と対談し、自分くらいの年齢のときに何をしていて、どんな葛藤があったかを訊くという内容でした。

そんなふうに何か切り口がひとつあると、「箕輪の普通の記事は飽きた」という人にも刺さるかもしれません。

打ち合わせは、この後の地方の仕事のため、品川の貸しスペースで新幹線を待つ空き時間に行われた。
大崎
箕輪さんは「編集2.0」という言葉も使っている通り、これまでと全く違う編集者象を体現しています。だから、これまでのレジェンド編集者たちと対談するというのも面白いのかなと。
箕輪
ああ、それは面白いかもしれない。ただ、そういった方々はきっと僕のことが嫌いですよ。なんか怒られそうだな。「君か? 最近やたら騒いでいるのは」って(笑)。
大崎
そんなことないですよ!(笑)。あとちょっとやってみたいのが、大喜利みたいなスタイルです。
箕輪
どういうことですか?
大崎
例えば“働き方改革”とか“新元号”といった旬なキーワードを挙げ、それについて思うところを互いに語るというものです。
箕輪
へえ、面白そう。
大崎
あとは、みうらじゅんさんとリリー・フランキーさんが『週間SPA!』で長期連載している『グラビアン魂』のように、誰かとコンビを組んでの連載というのもありかなと。
箕輪
いいですね。それなら、例えばPR会社・GOの三浦崇宏という人間がいます。あいつは口が達者で僕と波長も合うので、三浦との2人だったら面白いものになりそうな気がします。
大崎
いくつか挙がりましたが、特に良さそうなのはどれでしょう?
箕輪
いろいろ考えると、やっぱり編集者対談がいいかなと。「編集者」というくくりを、コンテンツを作る人みたいなところまで広げてもよさそうですね。

「編集者2.0」という打ち出しにはするんだけど、それこそ川村元気さんといった映画関係者がときには来たりしてもいいのかなと思います。

大崎
それいいですね! 紙の編集者以外の人が来ても面白そうです。
箕輪
編集って、言ってみれば世の中の素材を自分なりに編んで世間に問うみたいなものですよね。

だから別に紙の編集者じゃなくても、編集はしているんです。

大崎
そうですね。その職業なりの「編集」というものがあります。そういった“広義の編集者”にした方が、記事の普遍性も高まりそうですね。絶対に面白いと思います!

いずれにせよ人選が重要になってきます。なるべく既視感が出ないようにするには、箕輪さんが会ったことのない人がいいかもしれません。

箕輪
そっちの方が新鮮で面白いでしょうね。

ただし会ったことのない人だと、まずは自己紹介をして、僕のスタイルはこうです、私のスタイルはこうですと持論を展開することになる。で、僕は毎回「どうすれば本が売れるか」みたいな同じ話をするという流れになりがちです。

これだとあまりケミストリーは生まれないのかなと。

「会ったことがある人がいいのか、初めての人の方がいいのか……」
大崎
確かに、それは言えてますね・・・。
箕輪
だからそれを避けるためにも、毎回違うキーワードを設けるのがいいかもしれませんね。
大崎
先ほどの大喜利との合わせ技ですね。
箕輪
あらかじめ「編集者とは?」という定義をひとつ作っておき、あなたの仕事のここが編集者ですよねという話を最初にする。そして“キャッシュレス”なり“ホテル難民”なりの旬なワードを決め、それをどう編集していくかを対談する。

その話の中で、私の仕事はこうで、こういう考え方を持っていて、というのを話していく方がいいのかなと思います。

大崎
すごくいいですね。それならさまざまな化学反応も生まれそうです。ぜひこの形でやらせてください!

編集者は詐欺師であり、マジシャンである

大崎
では、どんな人と会いたいですか?
箕輪
やっぱり伝説の編集者には会いたいですね。それこそ見城(徹)さんもそのひとりですが、確かマガジンハウスの方で、「象を会社の経費で買った」という逸話の(笑)。
大崎
『ブルータス』の元編集長・小黒一三さんですね!僕が聞いた話では、アフリカ出張で使った経費の領収書を全部無くしてしまい、「アフリカゾウ 1000万円」って領収書を会社に出したら通ったって(笑)。もはや都市伝説ですね。
箕輪
「箕輪さんは破天荒だね」とか言われますが、いやいやいやと。あの頃の編集者は、やっぱりケタが違いますよね。

見城さんなんて、会社に内緒で尾崎豊さんの事務所を作って、アルバムを出しているわけですからね。

会社員なのに、副業でトップアーティストのプロデュースをしていたっていう。すごいですよ。

大崎
今ではなかなかあり得ない話です(笑)。
箕輪
今は経済的な状況もあってスケールが小さくなっているので、そういう人の話はぜひ聞きたいですね。

小黒さんと見城さんが組んだ仕事で、アフリカのある部族の絵を仕掛けようということで、何億円も使ってニューヨークで個展を開き、アメリカのスターを呼んでブランディングしてから日本でグッズを展開するというのがあって、もう意味がわからない(笑)。でも今の僕と近かったりもします。

大崎
確かに!
箕輪
結局編集者って、詐欺師かマジシャンかみたいな存在なんですよね。手を変え品を変え、世に面白いと思わせて一発当てるみたいな。レジェンドたちとはそういう話をしたら面白そうです。
大崎
箕輪さんがよく言っている、「ストーリーを売る」という考え方にも繋がりますね。
箕輪
そうですね。だから根っこの部分では、本が10万部売れようが、30万部売れようが、ぶっちゃけどうでもいいんですよ。

人がすごく喜ぶとか、“こんなの見たことがない”ということをやりたいだけなんです。それが編集という行為の根っこにある気がします。

昔のように大スケールの仕事をする最大の秘訣

箕輪
昔の編集者の破天荒な話を聞いて、その本質は何なんだろう?と考えると、要は面白いものを作った人が偉いというプレッシャーに勝つために、常に酒の力なりなんなりを借りて、常識的にならない努力をしていたんだろうなと。

僕も気持ちがわかります。だって辛いですもん。朝起きて、ああ面倒くさいなって思います。普通になりたいなって。

大崎
思うんですか?(笑)
箕輪
思います。ツイッターなり飲みの席で大きなことをわーっと言って、寝て起きたときにそれに対するレスがバーっとたまっているじゃないですか。ああ、余計なことを言わなきゃよかった・・・と。

そんなふうに朝はたいてい素の僕が顔を出すんですが、「よし、がんばろう」と奮い立たせる。その繰り返しです。だから昔の人も、素の自分でいないように狂った素振りをしていたんだろうなと。

大崎
ただ昔と違うのは、出版社に体力がないところです。昔は狂った人を飼い慣らすだけの体力があった。
箕輪
今だと、象を買ったら普通にクビですよね(笑)。
大崎
クビですね(笑)。対して箕輪さんは、お金の出どころを自分で作っています。要はそこが大きなポイントなのかなと。
箕輪
収益源が出版社ではないというのが大きいですよね。

例えば雑誌の編集者だったら、雑誌でレストランを取材した知識を、オンラインサロンを開いてそういう店に行きたい人に提供するとか。そうやってスターになれば、本業の雑誌にも貢献できる。

昔みたいにスケールの大きな仕事をするには、そうやって自分で副業してマネタイズすることが大きなポイントなのかなと。そして今は、それを誰もができる時代です。

というわけで、箕輪厚介氏による連載企画『編集者2.0対談』がスタート!第1回は、2月を予定しております。

さまざまな形で“振り切っている”広義の編集者たちが登場し、これからの時代にますます欠かせない「編集」という行為の本質をあぶり出していきます。どうぞお見逃しなく。

このコンテンツは株式会社ロースターが制作し、ビズテラスマガジンに掲載していたものです。

企画・取材:大崎安芸路(ロースター)/文:田嶋章博/写真:norico

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