MYKITA Shop Osakaに見る、 都市型実店舗に求められるこれからのコミュニティスペースとは?

編集力が必要なのは、WEBサイトや雑誌、テレビといったメディアだけではない。

コミュニティづくりにも編集力が必要だ。

今回取材したのは、11月17日、心斎橋PARCOの2階にオープンした『MYKITA Shop Osaka』の空間デザインに関わった、MYKITA Shop Tokyo及びMYKITA Shop Osakaのマネージングディレクター・川島匠さん、プロダクトデザイナー・倉本仁さん、空間デザイナー・山本和豊さんの3人。

関西初進出となる新店舗は、洗練されたMYKITAらしさを表現しつつも、今までとはひと味違う新しさを感じさせる空間が演出されている。

プライベートでも仲が良いという3人に、今回の新店舗に対する思いについて、また信頼し合ったコミュニティで仕事をすることの楽しさ、それに伴う難しさについて、お話を伺った。

 

川島匠

ホテル、証券会社、銀行、材料開発系ベンチャーを経て、2010年よりMYKITAの日本事業に携わる。MYKITA Shop Tokyo/Osaka - マネージングディレクター、及びMYKITA - Head of B2B Japan。

 

倉本仁

デザインオフィスJIN KURAMOTO STUDIO主宰。プロジェクトのコンセプトやストーリーを明快な造形表現で伝えるアプローチで家具、家電製品、アイウェアから自動車まで多彩なジャンルのデザイン開発に携わる。国内外のデザイン賞を多数受賞の他、iF Design Award(独)審査委員、グッドデザイン賞(日本)審査委員、Compasso d’Oro(伊)審査委員などを歴任する。

JIN KURAMOTO STUDIO http://www.jinkuramoto.com/

 

山本和豊

デザイナー。dessence Inc. / AKY 代表。1976年埼玉県熊谷市生まれ。1999年からCDLとして個人活動を開始した後、2005年株式会社デッセンス設立。住宅、商業空間からプロダクトまで、設計デザインおよび施工をワンストップで手がけ、国内外で活動。コンセプトからマテリアル、ストラクチャーまで、多角的な知見から生まれる包括的なデザインを行う。代表作に、「NEWLAND」企画・総合監修、「1LDK AOYAMA HOTEL」「st companyDover Street Market Ginzaでの「NIKE Genealogy of Free」 の設計デザイン・施工、「角川武蔵野ミュージアム」プロジェクトアーキテクトなど。JCD Design Award DFA Design For Asia受賞。

dessence Inc. / AKY  https://www.dessence.jp

 

MYKITA(マイキータ)

2003年創業のMYKITAは、アイウェアのデザインから製造まで全ての工程をドイツ・ベルリンで行うアイウェアレーベル。"THE MODERN MANUFACTORY"をコンセプトに、ハンドクラフトと最新テクノロジーを融合し、世界最先端のアイウェアを発信。ステンレスシートメタルによりネジを一切使用しない特殊な構造「スクリューレスヒンジ」を採用した、クールでモダンなアイウェアを展開し、注目を浴びている。日本ではすでに、2010年より東京都渋谷区神宮前に『MYKITA Shop Tokyo』を構え、2020年11月20日に心斎橋PARCOの2Fに新店舗『MYKITA Shop Osaka』をオープンした。

MYKITA Shop Osaka
大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-8-3 心斎橋PARCO 2F

MYKIYA Shop Tokyo
東京都渋谷区神宮前5丁目11−6 B1F

 

心斎橋PARCO

2020年1120()に開業を迎えた大型複合施設。元来「大丸心斎橋店 北館」であった同ビルを、丸ごとリノベーション。「新生 渋谷パルコ」のエッセンス=モード・アニメ・NEW飲食・アートに、「百貨店」のテーマである“ラグジュアリー・高級飲食・ゴルフ&スポーツを加え、さらに大型専門店、シネマコンプレックス、多目的ホール・イベントスペースを有する駅直結の複合ビルとなっている。

大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-8-3
大阪メトロ御堂筋線「心斎橋駅」南改札直結

TOC

関西エリアのブランド認知を目指して決意した、大型商業施設への出店。

-国内2店舗目の出店、おめでとうございます。今回大阪に新店舗をつくった経緯を教えてください。

川島 MYKITA Shop Tokyoができて10年が経ち、小さいながらも続けてきたおかげで、東京近郊ではMYKITAのブランド認知度が上がってきているという実感がありました。その一方で、関西はまだ認知度が弱かったので、もともと関西エリアに出店したいという思いがあったんです。最初は、関西エリアと言っても、大阪ではなく京都がMYKITAのブランドイメージに合っているのかなと考えて、京都で探していたのですが、「これだ!」という物件にはなかなか出会えず……。そんな中で、心斎橋PARCOさんから出店のオファーをいただいたんです。関西エリアでブランド認知度をしっかり上げていくためには、まずはより多くの人の目に触れなきゃ意味がない。そういう意味で、大型商業施設に出店してブランドを浸透させていくというのは重要だと考え、今回の心斎橋PARCOさんでの出店に至りました。

山本 プレゼンテーションという面で考えると、京都の路面店や町屋スタイルの方が、ブランドイメージも伝わりやすいし、デザインする側としても表現しやすい。だから、今回商業施設の一角でどこまでMYKITAを表現できるかというのは、僕たちにとっても大きな課題でした。人通りが多くて、画一化されがちなこの空間の中で、どうやってインパクトをつくるか、ブランドをどうプレゼンテーションするかがとても難しかったですね。

倉本 そうそう。画一化されてしまいがちだけど、この空間だけは異空間であってほしかった。そのために、材料を予算内で抑えずに踏み切ったことがひとつ大きなポイントだと思います。MYKITAは、世界においても現在No.1と言っていいくらい価値のある眼鏡を販売している。そうなると、空間もその商品にふさわしいものでないといけないなと思ったんです。だからこそ、妥協のない材料を用いることで、物事の本質に向き合ったデザインのあり様を求めました。

川島 僕はMYKITAにずっと触れ続けているので、MYKITAのこだわるポイントを全部考慮していくと、素材選定に関してもデザインに関しても、変に妥協しちゃうとMYKITAブランドのブランド価値を損ねるなって。だからこの新店舗でも、今のMYKITAのブランドイメージを超えていくようなデザインをしないといけないという思いがありました。

 

正反対の素材が交差する空間でつくり出す「いい違和感」。

-おっしゃる通り、すごく高級感のある素敵な場所になっていますよね。この什器が大きなポイントになっているように感じます。

山本 そうですね。まずゾーイングとして、什器がメインカウンターにあるので、それをどんな風に導線の中に入れていくのか、そしてどういう風に仕上げていくかと考えた時に、原始的な材料を用いたクリエイティブな表現方法と、MYKITAの凛とした表現方法が混在する空間をつくり出したいと思ったんです。その両方が混在しているこの空間は、今の日本ではあまり見ることがない、新しい表現になったと思います。

今回使用した木材は、その象徴のひとつです。例えば、さらりとしたメープルの木にしたとすると、すごく上品な雰囲気になって、より一層「今までのMYKITAっぽさ」にはなってくると思うけど、今回はあえてケヤキの丸太を使用したんです。ケヤキって、年輪に荒々しい強さがあって、それでいて品があるんですよ。そのような、品があるけどパワフルな材料を入れるというのが今回のキーポイントですね。この什器を際立たせながらも、尚且つちょっといい「違和感」をつくり出すことで、予定調和的な表現にならないように進めていきました。

山本 このケヤキは、倉庫の奥で発見した宝物です。15年前くらいに製材されたもので、反りを押さえるために長年の間重ねて寝かせられ、乾燥されてできている素材なんです。カウンターは1枚のケヤキの板を使用しているので、全ての木目が揃っています。一般的な素材は、木の板を何枚も剥ぎ合わせて1枚にしていることが多いのですが、このケヤキと見比べると誰が見ても圧倒的に違いがわかるんです。

倉本 普通こういう素材を使用すると、古き良き銘木家具のような牧歌的な雰囲気が出て浮いてしまいがちなんですが、それに色のコントロールだったり、機能に特化したインダストリアルな素材を少しずつ取り込ませることで、うまく溶け込ませることができました。

山本 無駄なく合理的なMYKITAのブランドイメージを表現する方法として、わざと什器とは真逆の方向の素材を取り入れて、空間の中でその2つの要素が握手する、みたいなイメージでつくり上げました。

 

-今回つくりあげた空間デザインの中で、一番難しかったことはなんですか?

山本 「MYKITAウォール」自体を壁の中に埋める作業です。これはなかなか難しい作業で、施工業者さんはやりたくない作業だったと思います(笑)。今までのMYKITAの店舗は、ウォールが表に出ているのですが、この店舗ではあえて全部壁の中に埋めているんです。MYKITAウォール自体に、ちょっと曲がっていたり、ちょっと厚かったりと少しブレがあるので、この作業のためだけに既製定規をつくったりと、思いの外時間かかる作業でしたね。

川島 やっぱり、これはMYKITAの全世界のシグニチャーでもあって、この壁を見ればMYKITAって一発でわかる重要なものなんですよね。だからこそ、一番力を入れて面白いものにしたかった。

山本 MYKITAウォールはとてもシャープなのですが、そのシャープさを際立たせるために空間の壁の出隅を全てラウンド加工して、角が立たないようにしています。出隅を通常の角にすると、光が当たる部分と影の部分の間に強い陰影が生まれます。出隅を柔らかな表情にすることで霧のようにふわ〜っと流れている空間でMYKITAウォールだけがしっかり立っているという、しっとりとした空間になるようにしています。

 

-すばらしいですね。上品だけど、MYKITAウォールがしっかりと際立っています。今回の店舗には、カールツァイスの新機器も導入されたということですが、何か狙いがあるのでしょうか?

川島 はい。MYKITAは基本的に、カールツァイスの機器を導入するように本社から推奨されているのですが、決して安いものではないので、一部の機器のみの導入などが多いものの、今回の新店舗にはフルセットで導入しました。現状の日本では、カールツァイスのフルセットを導入しているお店は数えるほどしかないんです。しかし、せっかくお客様に来ていただくのならば、最高の空間で、最高の測定を受けていただきたいという思いがあり、フルセット導入を決心しました。日頃のものの見え方が良くない方や、苦労されている方はたくさんいらっしゃると思うので、お客様に機械によって可能な限り解決したいという狙いがあります。なので、視界の見え方に悩みを抱えている方や、見え方にこだわりを持っている方にはぜひ来て体感していただきたいですね。

 

本音で言い合えるコミュニティだからこそ、いいクリエイティブが生まれる。

-今回の新店舗のデザインを3人でやることになったきっかけはなんだったのでしょうか?

川島 4年前のMYKITA Shop Tokyoのリニューアルの際に、倉本さんを介して山本さんを紹介していただき、山本さんに施工を手伝ってもらったのが、最初の3人での出会いですね。その出会いがあり、今回のShop Osakaの空間デザインをお2人にお声がけしました。MYKITA本社にはデザインチームがあるので、基本的には本社サイドでショップデザインするのが標準形なんですが、僕が10年間MYKITAに関わっていた中で、もう少し日本寄りにローカライズしたいという思いがありました。そこでMYKITA本社に交渉をしたところ、面白い化学反応が起きるかもしれないということで本社サイドが受け入れてくれて、今回に至ります。

 

-3人は仕事の関係だけではなく、プライベートでも仲が良いとお聞きしました。

倉本 はい。ご飯を食べに行ったり、釣りをしたり、飲んだりと。でも、あまり仕事と遊びを分けているというわけではないですね。この3人の関係性も含めて、気心の知れているコミュニティで仕事することって、「良くないものを良くないと言える」というのがとてもいいところですよね。また、それをプラスに転じられるのはこの3人の関係性があってのことだと思います。

川島 ビジネス上だけの関係性と、普段から仲良いコミュニティで仕事するのとの違いは、人生の充実に繋がるところだと思います。ビジネスだけの関係性で仕事を考えると、どうしても損得勘定になってしまう。僕自身、そういう関係性はなかなか、モチベーションも長続きしなくて、身も心も削られてしまうんですよね。でも普段の関係線の延長で仕事できて、みんなで利益を出してシェアできるっていうのはとても充実感があるし、次もまた何か一緒にやりたいと思えるのが、「生きている」という実感がして、すごく幸せなことだなと感じています。

山本 僕が信頼できるコミュニティで仕事していていいなと思ったのは、事前に正しい情報を知ることができるところです。初めて仕事する人だとネガティブな話ってなかなか共有しないから、正しい情報を聞き出すのって、すごく難しいことだなと思っていて。でも、僕らは普段から集まって飲んでワイワイするだけではなく、その中で仕事の話もたくさんしているんです。その点、今回の仕事に関しても、MYKITAに対して川島さんが抱えている問題意識などを事前にずっと聞いているので、プロジェクトが始まる以前からなんとなく共通認識があるというのはとても大きいですね。

 

-友達と仕事するのって、友達だからこそ難しいことも出てくるとは思いますが、本当に言い合える関係ができていれば楽しくて、いいものができるはずだと思います。

川島 コミュニティの中に、お互いがちゃんと責任を持つということと、フォローアップできる関係性があれば、絶対悪いものにはならないと思います。でもそれには、若い頃にそれぞれみんな苦労してきた背景があって、その苦労があるからこその今、なんじゃないですかね。

倉本 それは大きいかもしれない。僕は、それぞれが一度は企業に入って、社会の一般的なものに揉まれた経験があるっていうところも大きいと感じています。多分、その背景がないと良い関係性は作れないと思います。苦労してきた経験があるからこそ、相手がこういう負荷を感じているだろうなっていうのが想像し合えるんですよ。

 

「ブランドの空気を肌で感じる場所」としての重要な役割。

-現在はコロナウイルス感染症により、外出を控える方も多いと思います。そんな中で、都市型の実店舗の役割に対する考え方の変化などはありましたか?

倉本 コロナの影響によって家から出にくくなって、一方で情報だけでものが購入できるようになっている中で、それでもやっぱり手にとって物質を体験することで見えてくる本質的な価値ってあると思うんです。MYKITAが販売しているプロダクトはまさにそれですよね。自分は、その価値発見の体験をサポートすることが実店舗の大切な役割だなと感じました。MYKITAのプロダクトは実際に店舗で触って、掛けてみることで、それが相当に上質なものであることが五感全体で伝わってくるんです。だからこそ、店舗自体は人間の感性を最大化させる装置であって欲しい。空間の細部まで気を配っているのはまさにその役割を担っているからこそなんですよね。店舗にこないと感じられない肌感覚があることを伝えたいです。

川島 リアルな実店舗がなぜ必要なのかと考えたときに、「ブランドの空気を感じる場所」という重要な役割があると僕は思っていますね。実店舗では、五感を含めた360度の体験ができますが、デジタルは未だそこまで到達していないかと。それと、実店舗ではお客様のお話を直接お聞きすることができる。だからこそ、その重要な役割を持つ店舗が必要不可欠だと思っています。

ファンを育てるデジタル上のコミュニティづくりが次の課題。

山本 今の話を聞いている中で、実店舗に来れなくても、どこかでMYKITAを通して介在できるコミュニティがあったら面白いなと、ふと思いました。MYKITAファンが集まり、MYKITAに関する情報を提供して、ファンを育てていくことのできる架空のスペースがあったら面白いなと。やっぱり、実店舗にこないとわからない魅力が多すぎるので、その良さを伝えることのできるデジタルプロモーションがあるといいなとも思いますね。

川島 確かに。ECだけで購入するのはなかなか難しいけど、そういうデジタル上のコミュニティを通じて「次に買う眼鏡はMYKITAにしよう」と思っていただけるようなコミュニティづくりは大切かもしれないです。カスタマージャーニーが大きく様変わりしてきている昨今、今後の課題ですね。

 

偶発的な出会いのきっかけとなるようなお店に。

-最後になりますが、新店舗にはどんなことを期待していますか?

山本 MYKITAは今まで関西エリアでプレゼンテーションできてなかったという部分があるので、もちろん知らない人が多いと思うんです。でも、このような大型商業施設に入っていたら、偶発的にお店に出会えるじゃないですか。なのでこの店舗が、なんか面白いブランドだね、と思っていただける出会いのきっかけになればいいなと思います。

川島 山本さんが言うように、もともと関西エリアでのブランド認知度向上というテーマがありました。だからこそ、この心斎橋PARCOに出店させていただいたことで生じる、認知度への期待が大きいなと思いますね。まだMYKITAをご存知ない多くの方に入っていただいて、触れていただいて、感じていただける場になればいいなと。もちろん、すぐ購入に至らなくても全然良いと思っていて、この店舗でこの感覚を感じてもらって、お客様の心に何かしらの印象が残ればいいなと思います。

 

インタビュー:大崎安芸路(ロースター)/編集・文:川崎きさら(ロースター

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