わたしが敬愛する友人たちには1つ、共通点があります。
それは「自己肯定感が高い」ということ。
どんな自分も認めて愛し、大切にしてあげている人は魅力的です。
なぜなら、内側からキラキラとしたエネルギーがにじみ出ているから。
なんとも抽象的ですが、そんな人に出会えばすぐにわかるはず。ほどよい自信と、自分や周りへの愛に満ちているのです。
わたしたちが生きるこの世界は、情報に溢れています。
役に立つ話もあれば人を傷つける言葉も転がっているし、自分より優秀で美しくて人気者で豊かな人なんてたくさんいる。比べようと思えばいくらでも比べられます。
でも”わたし”は一人しかいません。
良いところも悪いところもひっくるめて、そんな自分を自分で愛してあげることが、時には凶器にもなる情報や比較から自分を守り幸せに生きるためのカギなのではないかと思っています。
だから今回は、自己肯定って素晴らしい!と思える作品を紹介します。
ただの恋愛コメディではない『マンハッタン・ラプソディ』
コロンビア大学で文学を教えるローズは美しく恋多き妹クレアとはかなり対照的。
一度も恋を実らせたことのないまま、ルックスにコンプレックスを抱えた地味な服装でほぼすっぴんの身なりを気にしない中年になってしまいました。
しかも密かに想いを寄せていたアレックスは、自分の妹と婚約してしまい、やっぱり自分には恋なんて無理だと気を落としてしまう……。
そんな冴えないローズが同じ大学の数学教授・グレゴリーと出会い恋をして、セックスやルックスに対する価値観の違いを乗り越えながら、身も心も美しく自信のある自分に生まれ変わっていく姿が、この映画の見どころです。
自分を認めることで、冴えない中年女から自信のある女性に
この作品を「中年男女のラブコメディ」と評価しているコメントをよく見るのですが、わたしはそれ以上に「自己肯定感を高める成長物語」だと捉えています。
確かにラブストーリーなのですが、その芯の部分に “ローズの自信” という軸があると思うのです。
ストーリーの流れに沿って、自信のアップ(↑)ダウン(↓)をまとめてみます。
映画を見る際にはぜひこの “ローズの自信” という軸にも着目してみてください。
①美しい母と美しい妹に囲まれ、ちやほやされる二人と自分を比較して外見へのコンプレックスに縛られていたローズ。(自信:↓)
②しかしグレゴリーと出会ってから、知識に対する情熱に共感されたり、教授としての姿をリスペクトされることで、自分の外見ではなく内面を見てもらえる喜びを感じ、少しずつ自信をつけはじめます。(自信:↑)
③その自信は次第に容姿にも現れ始めるのですが、実はグレゴリーは過去の苦い経験から「美女を見ると目眩がする」という特異な体質の持ち主かつ、セックスレスのプラトニックな関係を求めていました。
ゆえに、外見も美しくなりはじめたローズがベッドに誘った時、激しく動揺して怒ってしまいます。(自信:↓)
④これに傷ついたローズは「やっぱり自分は美しくないから、魅力的じゃないからだ」と自信喪失してしまうのですが、母との会話の中で「自分も美しいし愛されてきていた」ということを自覚したことで自信とやる気を取り戻し、美しくなるために努力をはじめます。(自信:↑)
⑤美しくなったローズは、過去に恋心を抱いていたアレックスにデートに誘われて夢にまで見ていたキスをされるのですが、その時のローズのセリフがこの映画の真骨頂だと思っています。(自信:↑)
No, no. It’s not you, It’s me.
『マンハッタン・ラプソディ』© 2022 SONY PICTURES ENTERTAINMENT (JAPAN) INC. ALL RIGHTS RESERVED.
See I don’t feel anything, isn’t that great?
I never thought about what I would feel,
I was only thinking about you.
I only wanted to make you happy
I never thought I was good enough for you.
(Alex:You are good enough for me, you are, you are)
I know, I know.
but Alex, you are not good enough for me.
『あなたは何も悪くないの、私が何も感じないのよ。
今までは自分に自信がなく、あなたを喜ばせることばかり夢見てた。
(アレックス:自信がない?君はすばらしいよ)
そう、自信が生まれたからあなたじゃ物足りないの』
このシーンこそ、自分に自信がなくコンプレックスの塊だったローズが自己肯定感の高い女性に成長した証であり、「そうだよね!!! ローズかっこ良すぎ!!」と共感に心が震えた瞬間でした。
美しい自分もそうでない自分も、どんな時もありのままの自分を認め、愛する。
それが自己肯定であり、いまわたしたちの生きる世界で必要な要素だなと感じています。
それをこんなに楽しく分かりやすくかっこ良く伝えてくれる『マンハッタン・ラプソディー』は、実は1996年公開。
ほぼわたしと同い年の映画です。
それにも関わらず、テーマがこんなにも今っぽいと感じるのには訳があります。
この作品の監督は、主演でもあるバーブラ・ストライサンド。
現在80歳の彼女は、デビュー当初から今もずっとフェミニストで居続けるわたしたちの大先輩でもあります。
(詳しくはこちらを読んでみてください!)
『マンハッタン・ラプソディー』もそんなバーブラからのメッセージであると受け取り、どんな自分も愛することをやめないで生きたいと思います。
皆さんにとっても自分を大切にしたいと思えるきっかけになれば嬉しいです。
今回の参考文献
『マンハッタン・ラプソディ(THE MIRROR HAS TWO FACES)』SONY PICTURES ENTERTAINMENT (JAPAN) INC.
編集・文/本間綾乃(Roaster) イラスト/蔵元あかり(Roaster)