「SNS=個人が使うもの」という時代は終わりました。
SNSがユーザーの生活の一部として組み込まれている現代では、多くの企業がこぞってSNSを運営し始め、各SNSでは企業向けの広告サービスが提供されるほど。
企業がSNSを使うべき理由は、SNSのブランディング効果の高さにあります。今回は企業が取り入れたいSNSブランディングについて学びましょう!
そもそもブランディングとは?
「ブランディング」という言葉は、とても概念的、言い換えれば非常に曖昧なもののように感じる人も多いでしょう。
ブランディングとは、製品の「ブランド」を作るための一環の活動のことです。
では「ブランド」とは何かというと、ある製品と他の製品と区別するための、ロゴやデザイン、商標といった要素のことを指します。
ただブランディングはロゴやデザイン制作に限らず、消費者のブランドに対するイメージを向上させる活動もあります。
ブランドの価値を高め、消費者がその製品や会社を目にしたとき、共感・憧れ・信頼といった感情を起こさせることがブランディングです。
種類別!SNSの特徴と企業での活かし方
SNSでブランディングをする企業も増えてきましたが、ブランディング活動において重要なのは最適なSNSを選ぶこと。
なぜなら、SNSによってユーザーの年齢層や男女差があったり、ユーザーの関心ごとが違ったりするためです。
そこで、SNSの種類別に特徴や企業での活かし方を解説します。
Twitterの最大の特徴は、ユーザーとの距離が近く、コミュニケーションが取りやすいことにあります。
投稿できる文字数は140文字までですが、近年のユーザーは長い文章をあまり読まなくなっていますから、短く簡潔に伝えればこの文字数で事足りるでしょう。
企業がTwitterを活用するなら、ユーザーと同じ立場での運用がおすすめ。
企業アカウントだとしても“中の人”を感じられる投稿を心がけることが、ユーザーとの距離感を縮められます。
またユーザーのリアルな声もたくさん寄せられているため、Twitterでのアンケートやエゴサーチを通して情報を集め、製品やサービスに反映するのもいいですね。
ビジュアルブランディングに最強のSNSはInstagramです。
F1層の若い女性に人気のイメージがあるInstagramですが、最近は男性の利用者も増えており、食・ファッション・育児・カメラといったジャンルのコミュニティーができています。
画像・動画の投稿が中心になるため、やはり投稿するコンテンツの質にはこだわりたいところ。
シェア機能がないことはネックですが、しっかりとハッシュタグの分析を行い、ユーザーとも積極的に関わる姿勢で取り組めば気になりません。
Instagramを傘下に置いているFacebookは、ビジネスアカウントのための機能が充実しているのがポイント。
Facebookページやグループ機能を使えば、企業を中心としたコミュニティを形成することも可能です。
ただ、日本の若年層はほとんどFacebookを利用していないという現状もあります。
ビジネスマンや40代以降の世代、もしくはBtoBなど、Facebookのユーザー層と自社のターゲット層がマッチしているかの確認が必要です。
YouTube/TikTok
これからは動画の時代と言われていますが、その先陣を切っているのがYouTubeやTikTok。
YouTubeは老若男女問わず幅広い層が利用している一方で、TikTokは10〜20代の若い層の利用者が圧倒的に多く、ターゲットを絞り込めます。
企業がこれから運営を始めるなら、広くリーチでき、他のSNSでもシェアしやすいYouTubeがおすすめ。
しかし既にターゲットは若い世代だと絞り込んであり、エンタメ性溢れるコンテンツを配信する予定ならば、TikTokで勝負に出てみるのもいいかもしれません。
どちらにせよ、動画コンテンツを配信することになります。
しっかりと中身のある動画を制作することが重要です。
SNSブランディングの成功事例
続いてTwitter、Instagram、Facebook、YouTubeの4大SNSでのブランディング成功事例をご紹介します。
Twitterの企業ブランディング事例
「絡みやすい」と話題 - SHARPとタニタ
Twitterで話題になった企業アカウントはSHARP(@SHARP_JP)とタニタ(@TANITAofficial)。
この“中の人”たちは、企業アカウントであることを忘れてしまうくらい、とても自然に一般ユーザーのような使い方をしています。
おーい、@kingjim、@SEGA_OFFICIAL 、@SHARP_JP !
そろそろ今年も旅にでもどうでしょう
。来週くらいだけど。https://t.co/rDrl5i5yA0 pic.twitter.com/EMfPfkiszS— 株式会社タニタ (@TANITAofficial) November 29, 2019
例えば、このツイートではタニタの「旅行にでもどうでしょう」という呼びかけに対し、SHARPは「行けたら行くわ」とリプライ。
さらにタニタは「絶対来ないやつやん」と返事し、まるで友達のようなやり取りがみて取れます。
こうした一般人感あふれるやり取りがTwitterユーザーの間で「絡みやすい」と話題になり、親しみやすさをブランディングできたのです。
ユーザー同士の交流の場 - モンスターストライク
アクションRPGゲーム「モンスターストライク(通称:モンスト)」の公式Twitterアカウントは、なんとフォロワーが約300万人。
話題のゲームだからという理由も考えられますが、その秘密はツイートのコメント欄にありました。
TVアニメ「#ワールドトリガー」とのコラボが2/2~開催🎉
小南桐絵、迅悠一、三雲修、雨取千佳、空閑遊真たちがガチャに登場⚔
三門市防衛ミッションで、グッジョブや勲章をゲット✨
サイドエフェクトも発動可能に💪多目的型トリオン兵 レプリカも登場👾https://t.co/ol3QbaVGnl#モンスト pic.twitter.com/cTg7bhPq4C
— モンスターストライク公式(モンスト) (@monst_mixi) January 28, 2021
ツイート自体はニュースや最新情報、イベント告知等が多いですが、コメント欄を見るとユーザーが思い思いの“つぶやき”を投稿しています。またユーザーがモンストについて言及したときにはリツイートすることも。
「このアカウントのツイートを見ればみんな何かしらコメントしてる」「他のモンストプレイヤーの状況がわかる」など、ユーザー同士が繋がるアカウントになっているのです。
映画さながらのプロモーション - シーチキンチキン(はごろもフーズ×プリマハム)
はごろもフーズとプリマハムがコラボして登場した商品「シーチキンチキン」の公式Twitterアカウント(@seacknckn)は要注目!
はごろもフーズ「シーチキン」🐟
✖
プリマハム「サラダチキン」🐔2つの味がコラボした
「#シーチキンチキン」誕生から1年…🌠決戦の舞台は銀河へ🌠
マグロとニワトリによる
壮大な激突を描いたWebムービー公開!!🎬【CAST】
🐟:CV.古川登志夫
🐔:CV.神谷明
🐟🐔の妻と子:CV.山本百合子— シーチキンチキン (@seacknckn) October 23, 2020
なんとアニメーション技術を駆使したハイクオリティな動画や、本格的なビジュアル画像を次々に投稿し、ストーリー調に仕上げています。まさに、映画さながらのプロモーションです。
このキャッチーさがウケたのは、バズを生みやすいTwitterをプラットフォームに選んでいるから。
Twitterユーザーの「共感してほしい」「シェアしたい」というニーズに応えた成功事例です。
Instagramの企業ブランディング事例
力強いメッセージを伝える - Nike
NikeのInstagramアカウントでは、製品をほとんど紹介しません。
その代わり、著名なスポーツ選手やスポーツ団体を取り上げ、彼らに力強いメッセージを発信してもらっています。
この投稿をInstagramで見る
Instagramのフィードも製品ではなく個人や団体の“顔”に焦点を当てたものが並び、IGTVなどを入れながら動画でも訴求。
Nikeを通して他人に語ってもらうことで、Nikeの企業価値も、そしてその人物の価値も高めているのです。
クリエイティブにこだわる - Starbucks
アメリカ発祥のコーヒーチェーン店、スターバックスの日本アカウント「スターバックス公式(@starbucks_j)」は、1日1〜2回ほど投稿しています。
注目すべきは、投稿される写真や動画のクリエイティブの質の高さ。
パッと華やかで目を引くけど、主張しすぎない。日常の中にありそうなシーンなのに、雑誌のようにおしゃれ。
そんな現代のインスタグラムユーザーの好みやトレンドに合う写真や動画が日々アップされるため、フォローしていると「自分もおしゃれになった気がする」と気分の高揚感を味わえるのです。
キャラクターを全面に押し出す - ゼスプリキウイ
ゼスプリキウイといえば、「ゼスプリ・キウイ・ブラザーズ」と呼ばれるキャラクターが特徴。
公式Instagramアカウント(@zespri_jp)では、このキャラクターを全面に押し出したプロモーションが行われています。
ほとんどの写真にキャラクターが登場し、もはやキャラクターが登場しないキウイの画像であってもキャラクターの顔が浮かび上がりそうなほど。
ゆるキャラによって地域に興味を持ってもらうのと同じように、公式キャラクターを全面に押し出すことによって親しみやすさを出し、スーパーで見かけたら思い出してもらえるようなブランディングが可能です。
Facebookの企業ブランディング事例
写真と文章のバランスを活用 - 土屋鞄製造所
Twitterはテキスト中心で掲載できる写真の枚数は限られ、文字数も140文字まで。
一方でInstagramは写真中心なので、長文テキストがほぼ読まれないことが課題。
そこで土屋鞄製造所は、写真と文章のバランスが良いFacebookを選びました。
なかなか伝わりにくい皮革鞄の魅力を、写真+文章、ときには動画なども駆使して伝えています。
作り手のこだわりや注目ポイントも紹介し、製品そのものの価値を高めている点も参考にしたいですね。
Facebookユーザーは年齢層が高いですが、見事にユーザー層とターゲット層をマッチさせている事例です。
美しい写真と共に応援メッセージ - JAL(JAPAN AIRLINES)
JALのFacebookアカウントには200万人近いフォロワーがいます。
なかなかフォロワーが増えにくいFacebookですが、これだけのフォロワーがいるのはJALが応援メッセージを投稿しているためです。
https://www.facebook.com/jal.japan/posts/4027457900620177美しい写真と共に投稿される応援メッセージは、JALの社員一人ひとりが考えたもの。
企業アカウントというとどうしても「企業っぽさ」が出てきてしまいますが、JALのFacebookアカウントはまるで「個人ユーザー」が運営しているような人の温もりを感じさせます。
特に大変な時期には、JALからのメッセージが生きる力、明日への活力を生み出してくれるため、消費者は「希望」を求めてアカウントをフォローしているのです。
Facebookの機能を賢く活用 - Soup Stock Tokyo
具沢山のヘルシースープを提供するSoup Stock TokyoのFacebookアカウントでは新商品のお知らせなどを投稿していますが、注目したいのは投稿以外の部分。
- メディアの投稿をFacebookでも紹介
- ショップ機能を使ってお買い物を促進
- 高精度なFacebook広告の配信
など、Facebookに備わっている機能を賢く活用しています。
https://www.facebook.com/671385906261142/posts/3716245071775195/?d=n特にFacebook広告は年齢・性別・地域・関心と細かくターゲティングが可能。
Soup Stock Tokyoのターゲットは「都内に住む20代の健康志向の女性」と明確なため、無駄なくコストパフォーマンスの高い広告配信によりブランディングができるのです。
YouTubeの企業ブランディング事例
お役立ちコンテンツを配信 - 資生堂
高品質の化粧品を提供している資生堂は、YouTubeを運営しています。
以前は広告動画中心の投稿でしたが、動画ブームの追い風を受けてお役立ちコンテンツの配信を開始。着付けやレシピ動画なども挙げ、幅広い年代の女性から注目されるチャンネルになりました。
特に注目したいのはその更新頻度です。
毎日更新は当たり前、1日に2〜3本の動画をあげることもあり、キュレーションメディア並みの勢いを見せています。
SNS運用にしっかりと人員と時間を割いて体制を整えている背景が伺えますね。
動画によって追体験する - Red Bull
Red Bullといえば「翼をさずける」というキャッチフレーズで有名ですが、YouTubeではスポーツ関連の動画を投稿しています。
スポーツ選手が必死に練習や競技に取り組む姿から、そのスポーツの解説、歴史などを深掘り。そしてどの動画もスタイリッシュに編集されています。
エナジードリンクを飲むことで得られるエキサイティングな体験を、動画によって消費者に追体験させているのです。
視聴した人だけがわかる奥深い魅力 - TOYOTA
テレビCM等でよく見かけるTOYOTAのスタイリッシュなブランド訴求動画。TOYOTAのYouTubeチャンネルを見ると、ブランドに対するイメージがガラリと変わるかもしれません。
YouTubeチャンネルには車種ごとの商品紹介動画に運転動画、ユーザーへのインタビュー動画などが公開されています。中には著名人が運転したり、インタビューに答える動画も。
テレビCMだけを見てもわからない、YouTubeチャンネルを視聴した人しかわからないような、TOYOTAの奥深い魅力が動画の中に詰まっているのです。
こうした動画は新規顧客の獲得にはあまり向きませんが、逆に顧客をファンに育てることに向いています。
SNSブランディングは本やセミナーでも学べる!
SNSブランディングやブランディングそのものについて学ぶには、体系的にまとめられた本を読むこと、セミナーに参加してみることもおすすめです。
SNSブランディング関連の本なら、SNSの著名人が出しているものが多いですし、読みものとしても楽しめます。
共感SNS 丸く尖る発信で仕事を造る
例えばインフルエンサーとして活躍しているゆうこす氏は多数の著書を出版していますが、『共感SNS』は個人も企業も参考にできる書籍です。
彼女の生き方、在り方、SNSでの発信方法など、ブランディングに必要な要素がぎゅっと詰め込まれています。
僕らはSNSでモノを買う
『僕らはSNSでモノを買う』では、現代のユーザーとSNSの関係性や、SNSから購買するまでの行動・心理などが解説されています。
そんな中で企業はどうやってブランディングやマーケティングを行えばいいのか、ヒントが見つかるでしょう。
また最近は企業向けのSNSセミナーも多く開催されているので、地域で開催されているもの、遠方で開催されオンラインで参加できるものも探してみてください。
もちろん、これらの情報収集もSNS上で可能です。
SNSブランディングを行うなら、自らがいちユーザーとしてSNSを使いこなすことも忘れてはいけません!
ビジネスと相性の良いSNSを選んでブランディングに繋げよう
SNSブランディングが成功するかどうかは、自社のビジネスやターゲット層と相性の良いSNSを選べるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。
Twitterで10万人のフォロワーがいても、Instagramでは1000人にも満たない事例もたくさんあります。
まずはSNSの特徴を理解し、自社と相性の良いSNSを選別しましょう。
そしてユーザー層に合わせた運営を行い、ブランディングに繋げていきましょう!