今や当たり前のように使われる「クラウド」。IT業界のみならず、ビジネス分野全般に浸透し、ジャンルを問わず欠かせない存在となっています。
では、「クラウドってどんな意味?」と尋ねられたら、皆さんはどう答えるでしょうか。サービスの恩恵にあずかりつつも、実は何だかふわっとした印象にとどまっている人も少なくないのでは?
私たちの身近なサービスに用いられているクラウド。具体的にはどういった特徴を持つのかを、メリットやデメリットも含めて解説します。
クラウドの基本を知りたい
クラウドとは、利用者がネットワークサービスを通じ、データやソフトウェア(アプリケーション)を利用するサービスのこと。別名クラウド・コンピューティングともいいます。
例えばパソコンを使って作業する場合、これまでは事前にソフトウェアやデータを入れておくことが大前提とされてきました。文書を作るためにはWordを、表計算をするためにはExcelをインストールしておかなくてはならないというわけです。
さらに、作成した文書・データはパソコンのハードディスクに保存。利用者の側だけでサービスが完結していました。
そこに登場したのがクラウドサービスです。ユーザーのパソコンの中だけでなく、インターネットなどのネットワーク経由でデータを保存したり、ソフトウェア(アプリケーション)を使用したりすることが可能になりました。
cloudとは「雲」を意味する言葉
データを蓄積したり、処理したりする大きな雲に対して、色々な人とさまざまな場所でつながっている図で説明されることが多いクラウド。
そのため「クラウド」の語源は雲(Cloud)から来ているという説もあります。
そしてアクセスしている様子を可視化することは難しく、何となくどこにあるのか、その先が見えないという意味でも「雲」が選ばれたとされています。私たちが「クラウド」を具体的に説明するのができないのも、このあたりに由来するのかもしれません。
クラウドのある場所はどこ?
多くのクラウドサービスがある中で、一番わかりやすいのがGmailやYahoo!メール、MicrosoftのOutlook.comなどのクラウドメール。ユーザー名やパスワードを登録するだけで使える便利なアイテムであり、ネットにつながってさえいればどこにいても使えます。
当たり前のことですが、ネットにつながっていなければ使用できませんから、クラウドがある場所が見えなくとも、インターネットを通じてサービスを利用しているということが実感できますよね。
クラウドサービスにはいくつかの種類がある
クラウドサービスはその利用方法や内容で次の3つに大別されます。
SaaS(サース、サーズ:Software as a Service)
ネーミングからもわかるように、SaaSはソフトウェアをサービスとして提供するクラウドです。
先ほど例に挙げたGmailやYahoo!メールもSaaSに含まれます。私たちが利用するクラウドサービスとして最もなじみがあるものだといえるでしょう。
PaaS(パース:Platform as a Service)
続いてPaaSは、開発環境、いわゆるプラットフォームを解放するクラウドサービス。
企業でのサービス開発で使用され、代表的なものとしてはGoogle App Engineがあります。インフラエンジニアや開発エンジニアなど専門家が使うことが多いサービスのことです。
IaaS(アイアース、イアース:Infrastructure as a Service)
仮想サーバやネットワーク(インフラ)をインターネット経由で提供するサービス。レンタルサーバサービスに近いものです。PaaS同様、エンジニアや開発エンジニアなど専門家の利用が多いサービスです。
クラウドでできる便利な例
クラウドを活用することで便利に利用できる身近なサービスには、以下のようなものがあります。
オンラインストレージ
パソコンでデータを保存する時、従来はパソコン内のハードディスク、USBメモリなどの外付け記録媒体を利用していました。
こういった媒体に変わるサービスがオンラインストレージです。インターネットを介し、クラウド上にデータを保存し、削除するなど自在に管理することできるのです。
パソコンだけでなく、スマホ、タブレット端末など、インターネットに接続できる環境さえあれば、どこからでもアクセスできるのも特徴。同期もスムーズ。ストレージとは「倉庫」の意味で、この倉庫を通せば、複数メンバーでデータを共有することも簡単です。
代表的なオンラインストレージといえばDropboxやOneDrive、Google Drive、iCloud Driveなどが挙げられるでしょう。
メールなどの身近なサービスにも
ご存知GmailやYahoo!メール、Outlook.comなどのクラウドメールもクラウドの代表的なサービスの1つ。くり返しになりますが、クラウドサービスのアカウントさえ持っていれば、どこからでもどの機器でも利用できる画期的なシステムです。
メモとして使える
ファイルやPDFの添付、画像や音声データをまるでメモのように保存でき、検索・閲覧できるクラウドサービスも。代表的なのがEvernoteやGoogleドライブです。
クラウドのメリット・デメリット
私たちの生活に溶け込み、ビジネスや日常でなくてはならない存在となったクラウド。たくさんのメリットを与えてくれる一方、使用にあたってデメリットもあります。
メリット
まずは5つのメリットから。
機器を選ばず、いつでもどこでもアクセス可能
ひとたびアカウントさえ作れば、オンライン環境下であれば利用が可能。パソコンのみならずスマホ、タブレット端末など機器を問わないのも大きなメリットです。
グループなど複数での共有が可能
事前に設定しておけば、データの入ったファイルを多くの人と共有できます。
データ消失などのリスクに備えられる
バックアップをしなくてもいいという点も魅力のひとつ。万が一手元のデータが消えてしまっても、クラウドに保存してあれば問題ありません。
容量を気にすることなく使用できる
一定量までは無料で使えるサービスも多く、有料の場合も容量に応じた金額設定が一般的。
導入や運用がローコストで済む
更新作業などの手間も少なくなるのも◎。企業の場合、自社での運用するとどうしても人的リソースが不足します。そういった面でもありがたい存在です。
デメリット
デメリットは次の3つです。
セキュリティ面での不安がある
クラウドサービスとは、会社の機密情報や個人情報などのを他の場所に託すことでもあります。データ流出するリスクはゼロではないのです。
ただし、一般のコンピュータや自社サーバーがウイルスやハッキングで攻撃されるリスクよりも安全性は高いという指摘もあります。
サービスの持続性に乏しい
ネットワーク障害などトラブルが発生すると、クラウドは使えなくなってしまいます。提供する会社は残念ながら玉石混交です。事業者の倒産やサービスの終了の可能性もゼロではありません。
カスタマイズが難しい
業務内容に応じた柔軟なシステム運用を行うために導入を考える企業もあるでしょう。そういったきめ細かな対応は、クラウドの場合は難しい部分もあります。
クラウドのシステムとリスクを理解して使おう
オンラインであれば、時間を気にすることなくどこからでも手軽に利用できるクラウドサービス。だからこそ、そのしくみやリスクを理解したうえで、利用することが肝心です。
IDやパスワードを複数のサービスで同じものを使いまわすのは厳禁。他社に知られることのないように厳重に管理するなど、個人にも最低限の配慮が求められます。また、信頼できるサービスや業者を吟味することも重要なポイント。
クラウドサービスはシステムとリスクを理解して使いこなせば、この上ない味方になる便利なもの。上手に利用していきたいものですね。