Slackの達人に聞く、チーム作業効率を最大化させる方法

IT企業をはじめとして、人気が高まっているコミュニケーションツール「Slack」。会社で導入した、社外のプロジェクトで使っている、といった方も多いのではないでしょうか。しかし、チャットツールとして使っているものの「いまいちよくわからない」「使いこなせていない」といった声も聞かれます。

Slackは、ほかのビジネスコミュニケーションツールやFacebookメッセンジャー、LINEなどとどう違うのでしょうか。今回は、Slackの入門講座などを開いているWebクリエイターの生明義秀さんにお話をうかがいました。チームのコミュニケーションを円滑にし、作業を効率化するさまざまな機能について、”Slackの達人”が伝授します。特に初心者の方には、「こんな便利な機能があったなんて!」という発見があるはずです。

 

生明 義秀(あざみ ぎしゅう) AZM Design代表
アートディレクター、グラフィックデザイナー、Webクリエイター。広告戦略や制作システムに関するコンサルテーションも行い、さまざまな企業の研修に講師として招請されている。また、最新技術の啓蒙や後進の育成に従事。美術学校などの教育機関で講師を務めるほか、Adobe MAXなどの大規模なイベントをはじめ、宣伝会議やデジタルハリウッドなどの専門講座にも多数登壇。昨年から必要性を感じてSlackの実践入門講座を開催している。

 

目次

Slackで「ワークスペース」が分かれている意味とは?

――まず、根本的なことからおうかがいします。Slackとは、何なのでしょうか?

生明 チームコミュニケーションツールです。もう少し具体的に説明すると、チャットツールですね。「サイボウズ」のメッセージ機能や掲示板機能、「Chatwork」などを使ったことがある方は多いのではないでしょうか。それらと同じグループウェアと呼ばれるサービスのひとつで、社内のメンバーやチームのメンバーとリアルタイムでやり取りができます。コミュニケーションツールとしては比較的新しいアプリケーションで、日本語版の利用が可能になったのも2017年11月。わりと最近なんです。

Slackの「ワークスペース」画面構成

――チャットツールといえば、日本ではLINEが普及していますよね。

生明 LINEは一般個人向けのコミュニケーションツールと言えるでしょう。電話番号と紐付いていますし、ビジネスというよりはプライベートで使うサービスだと考えられます。もし仕事で使っていたとしても、アカウントが基本的にはひとつしか取れないため、仕事の話も家族や友人とのやり取りも、画面上に並列に並んでしまう。でも、Slackの場合はそうならないんです。

――Slackだとどうなるのでしょうか?

生明 Slackは、「ワークスペース」というものを開設して使います。これは、会社やチームなど組織単位で取得・開設でき、URLも各々独自のものがワークスペースごとに生成されます。ほかのビジネス系コミュニケーションツールは、まずサービス全体にジョインしてから利用するものがほとんどですが、Slackは、独立されたワークスペースにジョインする、という点が大きく異なっていますね。そのワークスペース内には、その企業のメンバーやチームメンバーしかいません。

――サービスやアプリケーション全体に対してログインする、という使い方ではないんでしょうか?

生明 はい。同じSlackを使うのでも、ワークスペースごとにアカウントを作り、パスワードを設定することになります。

――パスワードを毎回設定するんですか。それは、少し戸惑いがありそうですね。

生明 私も最初は面倒に感じました(笑)。まずサービスにログインして、その後各プロジェクトやチームのチャットグループに入る、というのが当たり前だと思っていたので。でも、Slackを使い込んでいくと、ワークスペースが分かれているのが逆に利便性が高いと思えるようになってきました。

例えば、仕事だけではなく趣味の仲間とワークスペースを作ったとします。そうすると、仕事のアカウントとは別のメールアドレスで登録できますし、プロフィール画像も変えることができる。コミュニティーごとに使い分けられるのは便利ですよ。

独立したURLがあるというのも、Webの仕事をしている身としてはストンと腑に落ちました。Slackは、ITエンジニアに親和性が高いと言われ、彼らからもとても人気があるんです。

 

強力な検索性とチーム編成機能で、新しい働き方に対応

――ITエンジニアに親和性が高いというのは、例えばどんなところでしょうか?

生明 ファイルのアップロード、共有がしやすいことや、マークダウン記法に対応しているところなどが、評価が高い一因です。マークダウン記法というのは、普通のテキスト形式で書いた文書からWebを表現するためのHTMLを生成するために開発された記法です。

Slackでやってみるのが早いと思うんですけど、例えば「> テキスト」と書いて投稿すると、引用の表示になります。あと「#」をつけたら見出しになる、「*テキスト*」と書くと太字になる、「~テキスト~」と書くと打ち消し線が入る、などです。

――知りませんでした……! すごく便利ですね。

生明 Webの編集をやるならば、知っておいて損はないですよ。あと、入力欄に「/」を入力するだけで、コマンドがいろいろ出てきます。こういう仕組みは、エンジニアに好まれますよね。

チャンネル内またはダイレクトメッセージ内で「/」と入力すれば、利用可能なコマンド全ての一覧を表示することができる

――生明さんが思うSlackの魅力はどんなところにありますか?

生明 まずは強力な検索性です。Slackで検索機能を使っていなかったら、半分は損していると言っても過言ではないでしょう。検索窓にキーワードを入れて検索するのはもちろん、検索フィルタでチャンネル(トークグループ)ごとの検索や、発言者を絞っての検索、1ヵ月以内の発言だけを検索するなど対象期間を絞ることもできます。これは、FacebookやLINEなどの普通のメッセンジャーサービスなどではできないことですよね。

――確認したい発言や共有ファイルがすぐに見つかるのは便利ですね。

生明 あとは、柔軟なチーム編成対応ですね。ワークスペース内には、部署やプロジェクト、案件ごとに「チャンネル」という会議室、いわゆるコミュニケーションのチャットルームを作ることができます。そこは招待制なので、その案件に関わっている人だけを入れればいい。ワークスペースに社外の人を招待することもできるため、会社の垣根を超えたチーム編成も簡単にできるんです。もちろん、見られたくないやり取りには鍵をかけることも可能ですよ。

――社内だけでなく社外も含め、プロジェクト単位で人を集める働き方に対応しているわけですね。その他、Slackを使う上で知っておいた方がよいことはありますか?

生明 案外ちゃんと使われていないのが、「ピン」と「スター」ですね。ピンもスターも「目印」だと思ってもらうと、わかりやすいと思います。ピンは、メッセージにマウスのポインタを重ねると、メニューが出てくるので、「その他」というアイコンをクリックしたら、ピン留めのメニューがでてきます。選択すると、チャンネルやダイレクトメッセージの画面に、メンバーがアイテムをピン留めしたことを知らせるメッセージが表示されます。

重要なメッセージや返信をピン留めしておけば、そのチャンネルに属するメンバー全員が重要事項を見逃すことなく確認することができる

――「スター」は、「お気に入り」みたいなものですか?

生明 そうですね。これは自分のために使う目印です。例えば、確認が必要なメッセージが来たけれど、今は忙しくてじっくり見られない。そういうときは、スターをつけておくんです。スターは、ピンと違ってほかの人に通知がいきませんし、ユーザのスターの一覧を人が見ることはできません。

――チャンネルのメンバー全員にとって大事なメッセージは、スターではなくピン留めした方がいいということですね。

生明 はい。スターはマウスオーバーしたらすぐアイコンが出てくるので使う人が多いんですけど、ピンは意外と使われていないんですよ。ピンを活用すると、メンバーが重要事項を見逃すことが減ります。どんどん使っていきましょう。あとは、メンションの使い方もマスターしておくといいですよ。

――メンションって、「@(ユーザー名)」で相手を呼びかけることですよね。

メンバーの氏名または表示名の前に「@」マークを入力すると、メンバーのリストが絞り込まれて表示され、そこからメンションしたいメンバーを選ぶことができる

生明 基本はそうです。@のうしろにユーザー名を入れたら、その相手に通知がいきます。ほかにも「@here」で、コメントするチャンネル内のオンラインになっているメンバーに呼びかける、「@channel」でコメントするchannel内のメンバー全員に呼びかけるなどもあります。初期設定されている「#general」のチャンネルで「@everyone」と付けると、ワークスペースに参加している全てのユーザーに呼びかけることが可能です。

――そんなに種類があるんですね!

生明 ただ、メンションはやたらと飛ばさないように注意しましょう。それは、コミュニケーションマナーですね。いつもメンションをつけていると、本当に大事なコメントが見落とされてしまう危険があります。また、単純にうざいですよね(笑)。あと、Slackで特徴的なのはスレッドです。特定のメッセージに対して、返信することができる。これも、FacebookメッセンジャーやLINEではできないことです。

――メッセンジャーやLINEでは、複数の話題が進行しているとよくわからなくなってしまうことがあります。Slackはそうならないんですね。

生明 そうなんです。「スレッドに返信する」という機能で、特定の投稿に対して返信ができ、分岐し、並行して別建てのように会話ができる。そういう機能をちゃんと利用すると、話題を整理できますよね。ぜひ利用してほしいSlackの重要な機能です。返信で画像などのファイルも送れます。使い方も簡単。返信したいメッセージにマウスポインタを重ねて、吹き出しのようなアイコンをクリックするだけです。ところで、ダイレクトメッセージはわかりますか?

――誰か特定の相手にメッセージを送りたいときに使うのでしょうか。

生明 はい、TwitterのDMなどと同じです。でも、Slackはダイレクトメッセージの送り先に、デフォルトで「(自分)」という選択肢があるんですよ。これは、自分へのメモやToDoリストに使うためなんです。Slack自身もそうした使い方を推奨しています。これが意外に便利なため、Slackのセミナーを開いたときに「Slackを利用してはいるが、自分宛てのダイレクトメッセージしか使っていない」と言う受講者もいたほどです(笑)。

 

自分の仕事に必要な裏技を、ヘルプセンターで探そう

――なるほど! ほかに便利な機能はありますか?

生明 いろいろありますが、ひとつ紹介するならポストでしょうか。ポストは、長文テキストをチームで共有するのに役立ちます。メッセージを書き込むところの左に「+」のアイコンがありますよね。それをクリックして「ポスト」を選択すると、作成画面が開きます。

プロジェクトの企画やマニュアルなど、ボリュームの大きい情報をチームで共有したい…そんなときにはSlack上で共有して共同編集もできる「ポスト」の作成がおススメ

――別ウィンドウでテキストエディタのようなものが開きました。

生明 タイトルを入れ、下に本文を入力すると自動的に下書きとして保存されます。共有したいときは、右上の「共有」アイコンをクリック。共有するチャンネルやメンバーは選べます。ほかのメンバーの編集を許可すれば、複数人で共同編集することもできるんです。これは、議事録や企画書などを作成するときに便利です。

ポストを作成する際は右上の「共有」ボタンを押して、そのポストの「共有場所」を選択しない限り、ポストは他のメンバーと共有されない

――わざわざWordのファイルなどをアップしたり、Googleドキュメントを作成したりしなくても、Slack上で作成できるんですね。しかしたくさん機能があって、全部は憶えられなそうです……。

生明 全部憶えなくても大丈夫ですよ。むしろまず使ってみて、「こういう機能ないかな?」と思ったときに、公式ヘルプセンターの「Slackの使い方」で探す、というので十分だと思います。検索ガイドもありますし、ショートカットやコマンドなども、ここに書かれています。初心者の場合は、「Slackはじめてガイド」さえ読んでおけば大丈夫です。

――ヘルプセンターが充実してますね。口語体で書いてあるので読みやすいです。

基本的な操作知識から、便利な機能まで、Slackに関する悩みはこのページで解決することが可能

生明 職種によっても使いたい機能は違うので、自分にあった使い方、必要な機能を探していくのが一番だと思いますよ。また、SlackはWebプラウザで利用するほか専用のアプリケーションも用意されているのですが、アプリケーションでなければ使えない機能もあるので、ぜひダウンロードして使うことをおススメします。スマートデバイス向けにはiOS、Android、Windows Phone版があり、デスクトップにはWindows版、mac OS版、Linux版があります。よくできていて動作も速く、とても便利ですよ。

――導入するのにお金はかかりますか?

生明 有料版もありますが、普通に使うならば無料版で十分だと思います。一応、無料版だと検索に制限があったりするんですよね。でも、検索対象のメッセージが1万件となっているので、大抵のプロジェクトやチームであれば、とりあえずは大丈夫でしょう。「会社全体で使いたい」「画面共有付きのグループ通話をしたい」「チャンネルにゲストアカウントを招きたい」など、もっと大規模なスケールでの利用や、さらなる利便性の要望が出てきたら、有料版を検討してもよいでしょう。

まずは、使ってみることが一番ですね。会社全体で導入するのが難しいなら、試しに自分のチームだけで使ってみる。そうしたらそのチームの生産性が上がって、全体で導入することになるかもしれません。私は、Slackがあればリモートオフィスやオフィスレスカンパニーも十分に機能すると思っています。。それくらい、チームのコミュニケーションを大きく改善できるツールなんです。

 

このコンテンツは株式会社ロースターが制作し、ビズテラスマガジンに掲載していたものです。

 

企画:大崎安芸路(ロースター)/取材・文:崎谷実穂/写真:藤井由依(ロースター)

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