P2P(ピアツーピア)の仕組みとは? LINE、ビットコイン、電力などの事例をもとに詳しく解説

P2Pとはネットワーク上で機器間が接続・通信する方式の一つです。

主にインターネット関係で使われる用語ですが、電力や金融の世界でもP2Pの仕組みが応用されて新しいサービスが開発されています。2020年現在の主なサービスを事例として、詳しく見ていきましょう。

目次

P2P(ピアツーピア)とは?基本的な仕組みを解説

P2Pはpeer to peerを略した言葉で、「Peer」とは「(年齢・地位・能力などが)同等の者、同輩、仲間」という意味の英語です。

P2Pは、同じような機能の端末同士が対等な関係で接続し、互いのデータや機能を処理する方式です。インターネットでいえば、クライアントサーバーを介さず直接ユーザー同士で通信ができるネットワークを指します。

一般的なインターネットでは、高性能なサーバーで処理された内容をユーザー側の端末(パソコンやスマートフォン)から利用する通信を行っています。

P2Pでは、サーバーとユーザー端末という関係ではなく、ユーザー端末同士が繋がることで処理を行っています。

人の世界に置き換えると、上司の指示を逐一仰ぎながら決められた仕事を行う会社と、同僚同士が自由に仕事を任せたり交換したりする会社のような違いがあります。

P2Pのメリットとデメリット

P2P方式はユーザーの端末同士が直接データをやり取りするため、ネットワークサーバーに過剰な負荷をかけないメリットがあります。

また、災害やシステムトラブルで特定のサーバーがダウンしても、ネットワークが生きていれば情報のやり取りが可能です。災害時に電話が繋がりにくくなり、P2P方式を用いているLINEで連絡が取れたという人も多いのです。

ただし、携帯電話基地局が被災したり通信ケーブルが断線したりしたエリアでは、そもそもユーザーがインターネットに接続できなくなるため、P2P方式の恩恵は受けられません。

P2P方式にはセキュリティ上のリスクもあります。たとえばウイルスが仕込まれたファイルがP2Pネットワーク上に流出すると、ネットワーク全体がウイルス感染のリスクにさらされます。Winnyというファイル交換ソフトでウイルスが出回り、大問題になったこともあります。

現在のP2Pの利用例を解説

2002年に発表されたP2P方式の国産ファイル共有ソフトWinnyは、ネットユーザーに爆発的に普及しました。しかし著作権法違反やコンピュータウイルス感染による機密データの流出問題で、国内にWinnyやファイル共有技術そのものが「悪」であるという風潮が高まり、Winnyの開発者が逮捕・起訴(のちに無罪確定)される事件が起きました。

利用方法はともかく、P2P方式やファイル共有技術そのものは有害にはなり得ません。現在活用されているP2P方式のサービスにはどのようなものがあるのでしょうか。

LINEやSkypeなどのコミュニケーション

SNSアプリのLINEでは、ユーザーIDなどのアカウント情報はクライアントサーバーが管理していますが、ユーザー同士で写真や動画を共有する際にはP2P技術が利用されています

大量のメッセージを処理する大規模なサーバーを導入する必要がないため、LINEアプリを無料で提供できているのです。

また、無料通話アプリSkypeでも、ユーザー同士の通話にP2P技術が利用されていました。マイクロソフト社に買収されて以降は、別の方式に変更されています。

ビットコインなどの仮想通貨

ビットコインに代表される仮想通貨でもP2P技術が利用されています。

ユーザーがビットコインを送金する際の取引履歴は、P2P技術により世界中のユーザー間で共有・確認されます。1つの取引ごとに、世界中のユーザーに共有されている取引履歴との整合性を確認することによって、改ざんや不正が困難になり、取引の安全性を担保しているのが仮想通貨なのです。

ただし、仮想通貨自体の仕組みは安全でも、取引所やユーザーがパスワードをハッキングされて盗まれてしまう事件は多く、管理体制の強化が求められています。

発展可能性を秘めたP2P電力取引

電力取引にもP2P技術が応用され始めています。従来の各電力会社が各家庭・企業に一方的に電気を供給する方式とは異なり、太陽光発電や蓄電池などを所有している個人や企業が、需要のある別の家庭・企業に電力を供給できるのがP2P電力取引です。

2019年11月より、住宅用太陽光発電の10年の固定価格買取制度(FIT)が終了する家庭が出てきました。これは「卒FIT」と呼ばれ、買取価格が下落した今後の太陽光エネルギーの売電先が問題となっています。

そこで経済産業省が中心となり「次世代技術を活用した新たな電力プラットフォームの在り方研究会」や「持続可能な電力システム構築小委員会」などでP2P電力取引による新しい電力流通の方法を検討しています。

P2Pの今後

管理者側にサーバー等の設備投資が不要なP2P方式の普及は、管理者側のコストカットとユーザー側の無料(あるいは格安)でサービスを利用したいというニーズにマッチしています。

P2P技術は今後も色々な方面で利用が進むでしょう。しかし、P2P技術が広く受け入れられるサービスと、そうでないサービスは存在します。

たとえば、銀行等の金融機関を介さず、小規模の個人・中小企業向け融資をインターネット経由で行うP2Pレンディングは、イギリスやアメリカ、中国で広く普及しています。しかし、貸し手が資金を回収できなくなるトラブルが頻発し、中国金融当局が規制を強化してP2Pレンディング業者が多数廃業に追い込まれる事態になりました。

これが銀行であれば、金融機関が融資先を厳しくチェックしているため、貸し倒れのリスクは極めて低くなっています。

P2Pの低価格メリットに心が動くユーザーは多いでしょう。しかし、リスクヘッジの対価として管理者に支払う手数料の金額が妥当かどうか、ユーザーはシビアに検討しなければなりません。

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