さまざまなお役立ち情報を提供することで、ユーザーから自発的にアプローチしてもらうコンテンツマーケティングは、BtoBにおいても非常に有用な存在です。
本記事では、コンテンツマーケティングとはどのようなものか、なぜBtoBにコンテンツマーケティングが適しているのかといった基礎知識を解説。
さらに、コンテンツマーケティングの実践にあたって押さえておきたいポイントや、実際の事例についてもご紹介します。
BtoBのコンテンツマーケティングとは
コンテンツマーケティングとは、ユーザーの興味や関心、疑問などに応える形で「ユーザーの役に立つ情報・ユーザーにとって価値のある情報」を提供し、そこから最終的な購買やファン化などの目的につなげるマーケティング手法です。
従来の売り込み型(あるいは押し売り型)の手法とは異なり、ユーザーが自発的に求めるようなコンテンツを提供するという特徴があります。
ユーザー自身がコンテンツに興味を持ってアプローチしてくることから、大枠ではインバウンドマーケティングの一部とも言えます。
コンテンツマーケティング自体はBtoB、BtoCを問わずに有効な手法ですが、BtoBにおいては
- 顧客企業のビジネスにとって役に立つ情報
- 顧客企業内の担当者にとって役に立つ情報
- 提供企業への信頼感や興味につながる情報
などをコンテンツとして提供し、マーケティングに活かすケースが多くなります。
こうしたコンテンツは、狭義ではブログなどWeb上のコンテンツが中心となりますが、広義では非常に多様なものを指します。
たとえば、従来から活用しているカタログやパンフレットなどの紙媒体も当然コンテンツの一種ですし、イベントやセミナー、展示会などもコンテンツの一種と考えることができます。
また、コンテンツマーケティングで蓄積したコンテンツは、それ自体が資産になるという特徴もあります。
掲示期間・公開時間が終わったらユーザーの目に触れることがなくなる広告などとは、この点にも大きな違いがあります。
BtoBにおいてWebが果たす役割
先述したとおり、一口にコンテンツといっても多岐にわたりますが、今回はとくにWebコンテンツを中心に見ていきましょう。
というのも、昨今のBtoBにおいては、Webが非常に重要な役割を持っているからです。
従来のBtoB商談では、「まずは営業に聞いてみる」というスタイルが一般的でした。
しかし、Webの台頭にともなって、買い手側の購買プロセスにも変化が生じています。
Web上で課題解決の方法について調べたり、製品やサービスの比較検討を行うなど、「まずはWebで調べてみる」というスタイルが一般化してきているのです。
BtoBにおいても、Webを用いたリサーチが前提となってきたため、Webコンテンツがないということは「そもそも検討の対象にすらならない」可能性があります。
こうした顧客の購買プロセスに応えるためにも、Webコンテンツを活用したマーケティングは必須と言えるでしょう。
BtoBにコンテンツマーケティングが向いている理由
そもそもの接点としてのWebコンテンツの必要性だけでなく、コンテンツマーケティングは最初のアプローチ後の流れにおいてもBtoBと相性が良い存在です。
BtoBの商談には、
- 高価格で購入までに時間がかかる
- 決済までのプロセスが複雑で、複数の意志決定者が関わる
- 費用対効果などをロジカルに判断する
- 企業としての信頼感が求められる
といった特徴があります。
そして、こうしたプロセスで進めるためには、調査や比較検討するための情報が欠かせません。
コンテンツマーケティングでは、プロセスの各段階で判断に必要な情報を、ちょうど良いタイミングで提供することができます。
適切な情報を適切に提供することで、見込み客としての確度を上げていく。
それがコンテンツマーケティングとBtoBの相性の良さの大きな理由と言えるでしょう。
BtoBでコンテンツマーケティングを進めるポイント
営業を含めた長いプロセスでの位置づけを明確に
BtoBの購買プロセスでは、BtoCのように情報への接触からその場で即購入につながることはまずありません。
基本的には、いったんWebサイトを離脱した上で、必要な情報を社内に持ち帰って検討するのが前提となります。
また、たとえばサブスクリプションのようなサービスならばWebのみで完結することも考えられますが、多くの製品・サービスでは営業によるクロージングも必要になります。
とくに、製品が高額な場合や、課題解決・目的達成のための道程が複雑な場合などには、営業による提案や説明、信頼醸成は不可欠と言えるでしょう。
BtoBでコンテンツマーケティングを展開するときは、こうしたBtoBならではのプロセスを前提に、そこにどう組み込んでいくかを考えることが大切です。
「コンテンツによる集客」も確かに重要ではありますが、それ以上に「営業も含めた長いプロセスの中で、どこで何を担うか」を明確にしましょう。
目的の明確化と適切なKPIの設定
BtoBに限らず、コンテンツマーケティングは即効性のある施策ではありません。
広告などと異なり、目に見える効果が表れるまでには時間がかかることもあるでしょう。
こうした特徴から、いざコンテンツマーケティングを実践しても「効果が出ていないのでは?」「効果がどうにもわかりにくい」といった認識にもなりかねません。
有効性を疑わしく感じ出すと、いずれはコンテンツの更新が滞ったり、予算や人員を削減することにもつながってしまい、結果的にコンテンツマーケティングが失敗に終わる可能性もあります。
こうした事態を避けるには、目指すべき目的を明確にした上で、その達成度をわかりやすく把握できるKPIを設定することが大切です。
KPIとなるのは、獲得見込み(リード)数などの直接的な数字だけに限りません。
たとえば、「認知度を高めたい」という目的を掲げた場合、単純なPV数に加えて、企業名や製品・サービス名による指名検索がどれくらいあるか(どれぐらい増えたか)を把握することで達成度が測れます。
成果を目に見える形で捉えることも、コンテンツマーケティングの推進にあたって重要になることを理解しておきましょう。
コンテンツの設計や制作のポイント
コンテンツマーケティングの展開にあたっては、要となるコンテンツをどうやって作るか、どのようなコンテンツを作るかという点も重要になります。
運用チームや企画会議などを設置して、しっかりとした方針や管理の下に進めることが求められます。
ターゲット像を正確に把握して共有
コンテンツマーケティングで陥りがちなのが、考え方や認識のズレによる失敗です。
コンテンツを制作する側と、実際に製品・サービスを利用するターゲットの間で考え方に差異があるため、「ユーザーにとって価値のある情報」ではなく「自分が伝えたい情報」になってしまうのです。
こうしたコンテンツでは、ユーザーの興味や関心を引くことができず、効果を出すことはできません。
効果的なコンテンツを作るためには、「ユーザーは何に興味や関心を持っているのか」「どんな課題を解決したいと考えているのか」「どんな悩みを持っているのか」などを正確に把握しなければなりません。
ターゲット像の把握およびそこからのコンテンツ立案には、ペルソナの設定が重要。
企業として何を求めているかだけでなく、情報収集をする担当者、提案を受ける上長や決裁者、経営陣など、購買プロセスに関わるさまざまなターゲットのペルソナを作り、それぞれに合わせたコンテンツを提供していくことが求められます。
クロージングやフォローまで含めたカスタマージャーニーの設定
ペルソナの設定に加えて、カスタマージャーニーマップも作成しましょう。
想定するペルソナが、調査、比較、検討、社内稟議、事業計画策定、購買、製品利用開始後など、さまざまなプロセスにおいて、何を考え、何を必要し、どう行動するのかを想定します。
カスタマージャーニーにより、この流れを具体的にイメージすることで、どの段階でどんなコンテンツが必要になるのか、どう提供すれば効果的なのかも見えてきます。
目的に合わせたCTAの設置
BtoBのコンテンツマーケティングでは、ユーザーが訪問したコンテンツから直接購買につながることはないし、そのような設計をしても逆効果になりかねません。
では、ただ集客をするだけで良いのか、誘導は必要ないのかといえば、それも違います。
あくまでサイトからの離脱を前提としつつも、その後の育成が可能になるように、メールマガジンの購読登録やホワイトペーパーなどのダウンロードへと誘導する必要があります。
コンテンツとの親和度を考慮した上で、適切な施策を用意し、そこへと誘導するCTA(Call to Action:行動喚起)を設置するようにしましょう。
BtoBコンテンツマーケティングの事例
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