人の文章を読んでいて「この文章はわかりやすい」と感じることや「説明が頭に入ってこない」と困惑することはありませんか?
必要な内容を同じように説明していても、読みやすさ・読みにくさはあるのです。読みやすい文章を書くためのポイントを解説します。
読みやすい文章が必要なワケ
紙の出版物は右肩下がりに減少していますが、キュレーションサイトやオウンドメディアなどWebの文章コンテンツは爆発的に増加しています。低迷が続く出版業界とは裏腹に「文章コンテンツ」のニーズはむしろ増えているのです。
クラウドソーシングサービスでもライターの募集は多いのですが、発注側が頭を抱えるのが「上手い書き手が少ない」ということ。既定の文字数は書けるが、文章として「読みやすい」「分かりやすい」書き方をしていないため、校正や修正の手間がかかるという声も少なくありません。
オウンドメディアやニュースサイト等のWebコンテンツでは、読者の離脱率も計測されています。ページを最後まで読まず途中で離れてしまう人が多ければ、広告効果も少なくなるからです。
読者が最後まで読みたくなる文章の最低限の条件として「読みやすい文章」が必要とされているのです。
Webでは長い文章は読まれなくなった
以前はPCなどの扱いにも長けたビジネスマンが中心だったインターネットユーザーは、現在はスマートフォンやタブレット端末等で流し読みをする学生や主婦、高齢者など全世代に広がっています。これは何を意味するでしょうか。
例えばママ向けメディアでは、改行を多用してできるだけ簡潔な言葉で文章を書くように求められます。育児のすきま時間に「ながら読み」をする読者が多いためです。
つまり読者層によっては「長文を読まされる」ことそのものがストレスになっている場合があるのです。この傾向はスマートフォンの普及でより一層強くなりました。
スマートフォンの普及で何が起こったか
総務省の『平成30年通信利用動向調査』(2019)によると、20代~40代では80%以上がスマートフォンをインターネット接続端末として利用しており、パソコンの利用はスマートフォンよりも20%程度低い値となっています3。
スマートフォンの普及により、Webコンテンツの読者のほとんどがスマートフォンの画面でページを閲覧しています。PCより画面の横幅が極端に狭いスマートフォン画面では、PCのブラウザ表示では1行で済む文章が3行、4行の折り返しを含む「長文」に見えてしまうのです。読者は「長文」にストレスを感じページの離脱を招きます。
そのため、文章コンテンツでは改行の多用、装飾文字や絵文字の多用、イメージ画像の多用によって「読者に長文だと感じさせない工夫」を凝らしています。
企業プロモーションに広告マンガが使われるようになってきましたが、これは究極の長文回避法といえます。
読みやすい文章|書く時のポイント
読みやすい文章を書くポイントは、文法と文章術に分けられます。
文法|句読点と不要な言葉
句点(。)の位置に迷う人は少ないですが、読点(、)を打つ位置が適切でない文章はよく見かけます。
最も多いのは、文の構成ではなく自分の息継ぎの位置に読点(、)を打っているパターンです。
例A 当社では社員による自主的な、休暇取得を推奨するための施策検討会を開いた。
例B 当社では、社員による自主的な休暇取得を推奨するための施策検討会を開いた。
例Aの文では、検討会を開いたのが「会社側」なのか「社員」なのか、一読して把握しづらい場所に読点(、)が打たれています。
このように「一度で頭に入ってこない」文章は読者にストレスを与え、文章を読み進めるごとにストレスが蓄積されていくと最終的にはページの離脱(=読まれない)に繋がるのです。
基本的な読点(、)のルールを押さえておきましょう。
- 主語の後
- 接続詞の後
- 文と文を分ける位置
- 並列関係にある語句の後
- 修飾語がどこにかかるか指定する位置
読点のほかに、不要な助詞や助動詞を多用しすぎて読みにくくなった文章もよく見られます。
例 エラーが出たときにはカートリッジを入れ替えていただくということになります。
この場合、文の意図は「エラーが出たら、カートリッジを入れ替えます」であり、それ以外の「ときには」「いただく」「という」「こと」「になる」を削除しても意味は変わりません。
不必要な言葉が多すぎる文章は、読者に「何が言いたいのか分からない」というストレスを抱かせ、ページ離脱に繋がります。
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文章術|結論から書くPREP法(プレップ法)
文章を書くためのテクニックは多数ありますが、Webで文章コンテンツを書く際にまず押さえておきたいのはPREP法(プレップ法)です。
PREP法とは、結論から先に述べる文章の組み立て方です。導入部で結論を明確にする事で、読み手に「だから結論は何?」というストレスを与えません。
- POINT(導入結論):○○について、結論は○○
- REASON(理由):なぜなら○○だから
- EXAMPLE(具体例):具体例をあげると○○
- POINT(最終結論):つまり○○の結論は○○となる
読みやすい文章|デザインのポイント
村上春樹さんとか林真理子さんとか、スルスルと読める文章って、パッとその文章を見た瞬間に「読みやすそう!」と思える。それは「文章の中身」というよりも「デザイン」に近い。漢字と平仮名のバランスとか改行の位置とか「」の割合とかを計算し、ビジュアルとして読みやすくデザインしてる気がする。
— 竹村俊助/編集者 (@tshun423) 2018年6月23日
人に読ませる文章は、視認性・可読性・判読性の3つに気を配ります。
ポイント | 意味 | 対応 |
視認性 | パッと見た瞬間の認識しやすさ | フォントの色・サイズ・行間 |
可読性 | 文章の読み取りやすさ | 見出し・漢字の割合・改行 |
判読性 | 誤読や誤解を招かない | 専門用語の言いかえ・図やイラストを用いる |
読みやすい文章を書くためにおすすめの本
読みやすい文章を書くために、ぜひ目を通しておきたい本を紹介します。
『文章力の基本』阿部 紘久
「わかりやすく、伝わる文章」を書くための基礎を学べます。読点(、)を打つ場所や「てにおは」の使い分けに自信がない、基本を押さえたい人におすすめです。
『伝わるシンプル文章術』飯間 浩明
問題→結論→理由。わかりやすい文章を書くためのシンプルなフォーマット(型)が学べます。「何が言いたいのか分からない文章」で悩んでいる人におすすめです。
『「うまく」「はやく」書ける文章術』山口 拓朗
仕事で使う実務的な文章から、WebコンテンツやLPの文章、SNSへの投稿記事、論文、履歴書にまで応用できる5ステップの文章術です。頭の中で「何を書けばいいのか」がなかなか決まらない人におすすめです。
読みやすい文章はマーケティングにおいても重要
Webコンテンツにおいて、読みやすい文章はサイト全体の評価に繋がる重要な要素です。
キーワードをふんだんに盛り込んだ検索エンジンに強い文章であっても、読者が「読みにくい」「何を言いたいのか分からない」と感じれば直帰率や離脱率にあらわれ、Googleのアルゴリズムに低品質のコンテンツとして判断されてしまいます。
Googleの公式ガイドラインにおいても、ユーザーの満足度は重要視されています。
検索エンジンではなく、ユーザーの利便性を最優先に考慮してページを作成する。
ユーザーの利便性とは「このサイトでユーザーの目的を達成できたか」「他のサイトではなく、このサイトで用が済んだか」ということです。
Googleのアルゴリズムは直帰率や離脱率、ページ滞在時間などでそれを判定しようとしています。コンテンツの評価を上げるためには、読者がストレスなく最後までコンテンツを楽しめる文章が不可欠なのです。
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