「どうにも文章が単調」
「内容はわかるけど、何を主張したいのかが伝わってこない」
文章に対してこんなダメ出しをされたことがある場合、それは表現力の不足が原因かもしれません。
そこで今回は、文章の表現力を高めるための技術である「修辞技法」をご紹介。修辞技法のうち、文章のジャンルに関わらずに良く使われるもの、誰でも使いやすいものを中心に、具体的な用例とあわせて解説します。
文章の表現力を高める修辞技法とは?
文章または話し言葉の表現力を高めるための技術である「修辞技法」。
強調したい箇所を的確に伝えたり、心情や情景を上手く言葉で伝えたり、あるいは文章全体にリズム感を持たせるなど、修辞技法を使うことで表現が豊かになり、印象深い文章にすることができます。
修辞技法がとくに有効な文章:コラム・エッセイ・小説など
修辞技法が可能にする豊かな表現力は、書き手の心情を伝えたり、読み手を感動させる場合などに重宝します。
そのため、コラムやエッセイ、小説など、高い表現力が求められる文章では修辞技法がきわめて有効です。
修辞技法があまり必要ない文章:説明・ニュースなど
一方、そうした感動が必要ない文章の場合、修辞技法はそれほど必要ありません。ニュースや製品説明サイト、取扱説明書などの文章では、修辞技法による豊かな表現力よりも、むしろ正確に情報を伝えることが重視されます。
とは言え、これらのジャンルの文章で、すべての修辞技法が不要なわけではありません。読みやすいように文章のリズムを整えたり、そもそも修辞技法であると意識せずに普段から使っているような表現もあります。
基本的な修辞技法10選〜その効果と用例
修辞技法にはさまざまな種類がありますが、今回はとくに仕様頻度が高い、または効果の高いものを10個に絞ってご紹介します。
文章のジャンルに関わらずに使われるものを中心に、用例とともに効果を説明します。
①体言止め
『修辞技法は文章の表現を豊かにする。』
『文章の表現を豊かにする修辞技法。』(体言止め)
体言止めは、文を体言(名詞や名詞句)で終わらせる表現方法。最後に持ってきた体言を強調したり、余韻を残すことができます。
文章全体のリズム感を作るのにも効果的で、新聞などでも多用されます。
②比喩
比喩は、例えを用いたり他の何かに置き換えることで、より深くイメージさせたり、わかりやすく伝える表現方法です。あまり意識せずに、誰もが普段から使っている修辞技法の代表例と言えるでしょう。
直喩・明喩
『激しい雨』
『まるでバケツをひっくり返したかのような雨』(直喩)
直喩(ちょくゆ)または明喩(めいゆ)と呼ばれる技法では、比喩であることを明確に示します。
「まるで・あたかも、〜のよう・のごとし」といった表現が用いられます。
隠喩・暗喩
『彼は王を支えるもっとも重要な臣下であり、王にとっても大切な存在だ』
『彼は王の右腕だ』(隠喩)
隠喩(いんゆ)または暗喩(暗喩)と呼ばれる技法では、比喩であることを直接的には示しません。
関連性のある言葉や、イメージしやすい言葉を用いることで、スマートにイメージを伝えることができます。
③擬態法(オノマトペ)
擬態法はオノマトペとも呼ばれ、「状況」や「様子」「音」「鳴き声」「心理状態」など、さまざまな対象を言葉で表現する方法です。比喩と同様に、あまり意識せずに誰もが使っている技法であり、イメージをわかりやすく伝えたり親近感を持たせるなどの効果があります。
擬態語
『凍った路面で滑って転ぶ』
『凍った路面ですってんころりん』(擬態語)
『合格発表に緊張する』
『合格発表にドキドキする』(擬態語)
状況や様態、心理状態などを言語化したものは擬態語と呼ばれます。
擬音語
『雷が鳴っている』
『雷がゴロゴロと鳴っている』(擬音語)
対象が立てている音をそのまま言語化したものは擬音語と呼ばれます。
擬声語
『猫が鳴いている』
『猫がニャーニャー鳴いている』(擬声語)
音全般は擬音語と呼ばれますが、動物の鳴き声を言語化した場合は擬声語と呼ばれます。
また、『あー、ワンワンがいるのー!』のように、擬声語がそのまま対象を示す名詞として使われることもあります(おもに幼児語)。
④列挙法
『スマホ、タブレット、ノートPC、デスクトップパソコン。現代人はさまざまな情報機器を使いこなしている』
列挙法は、関連のある言葉を並べて表現する方法です。対象を強調したり、わかりやすく明示する効果があります。
⑤緩叙法
『たまにはジャンクフードも良いものだ』
『たまにはジャンクフードも悪くないね』(緩叙法)
緩叙(かんじょ)法は、直接的な表現を用いずに、逆の表現を否定したり遠回しに表現する方法です。心情や主張を緩めて叙述したり、遠回しにすることでかえって強調することができます。
⑥同語反復
『うちはうち、よそはよそ』
『機械は機械、あくまで使う人次第だ』
同語反復は、同じ言葉を繰り返して並べる表現方法です。
強い意志を示したり、言いたいことを強調する効果があります。
⑦語句挿入
『彼は非常に立派な態度で演説した(内心ではビクビクしていたのだが)。』
『社長と常務と専務——つまり上層部の過半数——が同意した』
語句挿入は、カッコ「()」やダッシュ「——」を用いて文内に語句を挿入する表現方法です。
第三者的な視点を表現したり、書き手による補足説明が行えます。
⑧倒置法
『3年間に及ぶ試行錯誤の末に、ついに完成した』
『ついに完成した! 3年間に及ぶ試行錯誤の末に』(倒置法)
『私はこれをやりたかったのだ』
『これなんだよ! 私がやりたかったのは』(倒置法)
倒置法は、通常の主語・目的語・述語という並びを入れ替える(倒置する)表現方法です。
目的語(何を)や述語(どうした)を前に持ってくることで、その言葉を強調したり、強い意志を示す効果があります。
⑨対句法
『夏の素麺、冬の鍋。季節感を味わうならこれだね』
対句法は、対照的な言葉を、同じような形で並べる表現方法です。あえて反対に位置する言葉を並べることで印象が強くなります。
また、この技法は四字熟語にも多く見られます。
『温故知新』(故きを温めて新しきを知る)
『朝令暮改』(朝に下した命令を暮れには改めてしまう)
⑩反復法
『青く青く、どこまでも美しい母なる星』
反復法は、同じ語を繰り返して使う表現方法です。語句を強調したり、強く訴える効果があります。表現のリズムを整えたり、詩的な雰囲気を醸し出すといった効果もあります。
また、必ずしも連続してつなげる必要はなく、間隔を開けて同じ語が使われるケースもあります。
『I Have a Dream』
キング牧師ことマーティン・ルーサー・キング・ジュニア氏の演説において、何度も繰り返されたこのフレーズ。非常に感動を高める効果があり、もっとも有名な反復法の活用例と言えるでしょう。
修辞技法を用いるときの注意点
使いどころや頻度を間違えない
今回ご紹介した10個の修辞技法は、コラムやエッセイなどに限らず、さまざまなジャンルの文章で利用できる技法ばかり。これらの技法を採り入れることで、伝えたいことを強調したり、文章の表現力を高めることができるでしょう。
一方で、あまりに修辞技法を多用しすぎると、逆に言いたいことがわからなくなってしまうおそれもあります。直接的でない表現方法もあるため、かえって真意がぼやけてしまいかねないのです。
修辞技法を用いるときは、文章全体のバランスを良く考え、使いどころや仕様頻度を間違えないようにしましょう。
技法よりも大切なものを忘れない
また、修辞技法はあくまで表現の技法に過ぎません。
誰に伝えるのか。何を伝えたいのか。文章の根幹をなすのは、技法よりも目的や内容です。その点を忘れないことが大切です。