物書きが覚えておきたい括弧の正しい使い方と使い分けルール

パソコンやスマホで括弧(「」など)を変換してみると、意外と種類があることがわかります。

使用頻度の高いものは「」(鉤括弧)や()(丸括弧)など。では、あなたはこれらの括弧を正しく使えているでしょうか?

今回は文章を書く機会の多い人が覚えておきたい、括弧の正しい使い方と使い分けルールを解説します。

目次

日本語の文章等で使われる括弧の種類

まずは日本語の文章等で使われる括弧の種類と名前、そして基本的な使い方を覚えておきましょう。

「 」:鉤括弧

鉤括弧(かぎかっこ)の「鉤」とは、物を引っ掛けるための先の曲がった金属器具のことで、形が似ていることからこの名前が付けられています。

鉤括弧はタイトルや強調、引用などに使われますが、特に使う機会が多いのが会話表現です。

例:「おはようございます。今日もいい天気ですね」

また、複数の対象を区別するために使われる場合もあります。

例:「みかん」と「オレンジ」は似ているようで違う食べ物です。

『 』:二重鉤括弧

鉤括弧が2つ重なったものが二重鉤括弧(にじゅうかぎかっこ)です。書籍や映画、曲などのタイトル、作品名を表現したり、会話文の中に別の会話文を表現したりといった使い方が主です。

例:『人間失格』は太宰治の代表作である。

例:「ヨシコちゃんが『三角公園に集合ね』って言ってたよ」

または、文章中で強調したい部分に使われる場合もあります。

( ):丸括弧

丸括弧(まるかっこ)は「パーレン」と呼ばれることもあり、あらゆる使い方があります。その中でも代表的なのは物事の補足や注記です。

例:彼の人生(幼少期から青年期まで)は波乱万丈だった

また、漢字や外国語の読み方を表記する場合もあります。この記事で言えば「丸括弧(まるかっこ)」といった使い方ですね。

例:Google Analytics(グーグルアナリティクス)

【 】:隅付き括弧

隅付き括弧(すみつきかっこ)はとりわけ目立ちやすい括弧なので、特に目立たせたい部分やキャッチコピーに使われることが多いです。

例:【必読】事業改革案とスケジュールについて

例:【顔が変わった!?】歯科矯正をして良かったこと・悪かったこと

鉤括弧や丸括弧と違い、文章中で使われるよりも、タイトルや見出しなどに使われるのが一般的。うまく使えば読者の視線を誘導することも可能です。

〔 〕:亀甲括弧

亀の甲羅の模様に似ていることから亀甲括弧(きっこうかっこ)と呼ばれている括弧です。横書きの文章ではあまり見かけませんが、縦書きの文章の中で強調や補足として使われます。

例:私たちが手作りにこだわっているのは、〔人の心〕を届けたいからです。

例:彼の人生〔幼少期から青年期まで〕は波乱万丈だった。

{ }:波括弧

波括弧(なみかっこ)は、名前の通り波模様に似ていることからこの名前が付きました。英語では「ブレイス(brace)」や「カーリーブラケット(curly bracket)」と呼ばれます。

使い方は隅付き括弧と同じで、目立たせたり見出しの一部を強調したりします。

例:{必読}事業改革案とスケジュールについて

例:{顔が変わった!?}歯科矯正をして良かったこと・悪かったこと

文章の中では使用頻度が低く、ほとんど見かけないかもしれません。その代わり、丸括弧と一緒に数式の中で使われることが多いです。

例:A= 3×52 −{2×42 −(45−4×32)}

[ ]:角括弧

角括弧(かくかっこ)は上下に角がついており、鉤括弧とは違った使い方をするので注意しましょう。英語では「ブラケット(bracket)」と呼びます。

こちらも強調や補足、注記などに使われます。ただし全角と半角があり、日本語の文章では全角を使うのが一般的です。

例:彼の人生[幼少期から青年期]は波乱万丈だった。

例:Nintendo Switch[新型のバッテリー長持ちタイプ]

<>:山括弧

山のような形をしていることから山括弧(やまかっこ)と呼ばれるようになりました。主に強調や引用として使われます。

例:<必読>事業改革案とスケジュールについて

さらに見出しやタイトルの中で使われることも多く、隅付き括弧と組み合わせる場合もあります。

例:【2020年版】<売上10倍!>SNSマーケティングの必勝法

括弧の正しい使い方

括弧の基本的な使い方をお伝えしましたが、もっと具体的に正しい使い方も見ていきましょう。

会話文として使われる括弧

会話文として使われる括弧は鉤括弧がメインです。ただし「〇〇さんが言ってた」など会話文の中で第三者のセリフを引用する場合、会話文の中の会話文として二重鉤括弧を使います。

例:「ヨシコちゃんが『三角公園に集合ね』って言ってたよ」

その際、外側に鉤括弧、内側に二重括弧とを入れるのがルールです。逆にならないように注意しましょう。

悪い例:『ヨシコちゃんが「三角公園に集合ね」って言ってたよ』

声を出さず、心の中で思っている会話表現の場合には丸括弧を使います。上手に鉤括弧と使い分けましょう。

例:(ヨシコちゃんは三角公園って言ったのになぁ…)

補足として使われる括弧

補足として使われる括弧は次の3つです。

  • ():丸括弧
  • 〔〕:亀甲括弧
  • []:角括弧

最も使いやすく汎用性が高いのが丸括弧です。補足部分をすべて丸括弧で統一しても、どの媒体でも通じます。

亀甲括弧は縦書きの文章の中で使い、角括弧は注記として使うなど、比較的使い分けしやすいのではないでしょうか。

強調として使われる括弧

強調として使われる括弧は次の5つです。

  • 【】:隅付き括弧
  • 〔〕:亀甲括弧
  • []:角括弧
  • {}:波括弧
  • <>:山括弧

最も種類が多いですが「こっちはダメでこっちはOK」という明確な基準はありません。

この中でも見出しやタイトルには隅付き括弧を使ったり、文中の強調箇所には亀甲括弧、学術的な文章や論文の中では角括弧を使ったりなど、適材適所で使っていきましょう。

括弧の中に括弧

文章の書き方によっては括弧の中に括弧を入れる場合もあります。

前述した通り、会話文の中に会話文が出てくるときは外側に鉤括弧、内側に二重鉤括弧を入れるのが鉄則です。

それ以外の括弧を組み合わせるときの例をいくつかご紹介しましょう。

例:「メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐じゃちぼうぎゃくの王を除かなければならぬと決意した」(太宰治著『走れメロス』より引用)

例:Nintendo Switch(2017年[平成29年]発売)

例:私たちが「ハンドメイド(手作り)」にこだわっているのは、人の心を届けたいからです。

例:A= 3×52 −{2×42 −(45−4×32)}

括弧の中に括弧を入れることは可能ですが、多用したり3つ以上入れたりすると読みにくくなります。必要性がなければ控えましょう。

また「「」」や(())といった使い方は間違いです。どの括弧でも、一文中で同じ括弧を連続させる使い方はしません。必ず他の括弧と組み合わせるようにしましょう。

括弧の優先順位

日本語の文章で複数の括弧を使う場合、特にこれといった優先順位はありません。

ただし数式に括弧を使う場合には、角括弧、波括弧、丸括弧の3つは優先順位が決まっています。外側から順に[{()}]という使い方です。

例:A= 5×10+[3×52 −{2×42 −(45−4×32)}]

この3つはそれぞれ別の呼び方があります。

  • []:角括弧、大括弧
  • {}:波括弧、中括弧
  • ():丸括弧、小括弧

外側から大・中・小となっているので、そのまま覚えておきましょう。ただし、数学を専門にしている人以外は、数式に角括弧(大括弧)を使う機会はほとんどありません。

括弧と句点の使い方

括弧の中に句点を入れる場合、そして括弧の外側に句点を置く場合にも使い方のルールがあります。

まず原則として、括弧の中の文末に句点を打ちません。わかりやすいのは会話文の例でしょう。

×:「今日もいい天気ですね。」

○:「今日もいい天気ですね」

括弧の中に複数の文がある場合、文末以外には句点を打ちます。

例:「おはようございます。今日もいい天気ですね」

ただし上記は出版業の常識です。国語としては括弧の中の文末でも句点を打つ場合があることも覚えておきましょう。

また文中に丸括弧を使うとき、丸括弧の前に句点を打つ場合、丸括弧の後ろに句点を打つ場合の2パターンがあります。どちらでも良いわけではないため、次のルールに従いましょう。

  • 丸括弧の前に句点:引用
  • 丸括弧の後に句点:補足説明

例:メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐じゃちぼうぎゃくの王を除かなければならぬと決意した。(『走れメロス』より)

例:テスト範囲は教科書のP10〜P31です(P20〜P21は除く)。

間違えやすい括弧の使い分けルール

最後に、間違えやすい括弧の使い分けルールを解説します。前述した括弧の使い方と重複する部分がありますが、よくある間違いですので改めて復習してみてください。

「」(鉤括弧)と『』二重鉤括弧の使い分け

鉤括弧も二重鉤括弧もよく似た括弧です。しかし会話表現においては、二重鉤括弧は鉤括弧の中に入れるのが鉄則です。

×:『今日もいい天気ですね』

○:「今日もいい天気ですね」

二重鉤括弧を独立した状態で使うのは、タイトルや作品名などを表記するときになります。上記の例の場合『今日もいい天気ですね』という作品タイトルであれば問題ありません。

()(丸括弧)と〔〕(亀甲括弧)の使い分け

丸括弧も亀甲括弧も補足説明や引用として利用できる括弧です。どちらを使うか、明確な使い分けルールはありません。

ただし、どの媒体でも丸括弧を使うのが一般的です。括弧の中に括弧を入れたい場合には、丸括弧の中に亀甲括弧を入れると良いでしょう。

例:Nintendo Switch(2017年〔平成29年〕発売)

また亀甲括弧は、自治体・組織が発行する公式文書や論文・新聞の引用部分などに使うことで、堅い印象になります。

数式における()(丸括弧)と{}(波括弧)の使い分け

数式における丸括弧と波括弧の使い分け方について補足します。(角括弧は登場する機会が少ないため省略します)

前述した通り丸括弧は「小括弧」、波括弧は「中括弧」という別名がありますが、優先順位は中括弧→小括弧です。

例:A= 3×52 −{2×42 −(45−4×32)}

ただし計算は小括弧の方から行うのが数学のルールです。

では、数式に括弧を1種類しか使わない場合はどうなるでしょうか?実は中括弧を使わず、小括弧のみを用いるのです。

○:A= 2×42 −(45−4×32)

×:A= 2×42 −{45−4×32}

つまり括弧を2種類使う場合には中括弧が優先ですが、1種類しか使わない場合は小括弧が優先です。これは数学を学んだ人なら当たり前のことですが、そうではない人はここで覚えておくといいですね。

括弧と引用符の使い分け

引用として使われる括弧があるのとは別に引用符(“”)もあります。これらの違いは、簡単に言えば和文か英文かの違いです。英語での会話文や作品名などには引用符(ダブルクオーテーション)が使われていますよね。

もちろん日本語の文章に引用符を使うことも多く、今や明確な境目はありません。ただし雑誌やWeb媒体の記事の場合、引用部分には引用符を使い、「この部分は引用である」ということを明確にすることが多いです。

英文では引用符を使うのはもちろん、和文であっても引用部分をわかりやすく表記したい場合には引用符を使うようにするといいでしょう。

括弧の使い分け方はレギュレーションに従うこと

括弧を正しく使うことは、文章やコンテンツをよりわかりやすくするうえで欠かせません。しかし括弧の種類は多く、そのうえ使い分けが曖昧なものがほとんどのため、使い方に悩むこともあるでしょう。

そんなときは執筆レギュレーションに従って使い分ければ間違いありません。レギュレーションがない場合には同じ媒体の他の記事を参考にする、自分自身で決めてしまうという方法もあります。

基本的な括弧の使い方を覚えたうえで、適切に使い分けていきましょう。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

目次