何気ないことしか書いていないのに、なぜか最後まで読んでしまう文章ってありませんか?
Web上には多くの記事がありますが、ほとんどの人は目次を見て、読みたい箇所だけを選んで飛ばしながら読んでいます。そんな中、最初から最後の一文字まで思わず読み切ってしまう文章には何があるのでしょうか?
今回は最後まで読ませる文章の特徴や、最後まで読ませるための書き方をご紹介します。
読ませる文章とはどんな意味?
「読ませる文章」とは、言い換えれば読者を惹きつける文章のことです。
「〇〇せる」は使役の助動詞で「読者にその文章を読むように行動させる」という意味。しかし、書き手が読者に「読め」と命令するわけではありません。
ではどうやってその文章を読ませるかというと、書き方を工夫して、読者に自発的に「読みたい」と思わせているのです。
「読みやすい文章」との違い
「読ませる文章」は「読みやすい文章」でもあります。例えば、専門書や論文には難しい言葉が使われており、あまり読む気にはなりませんよね。読ませる文章はそうした難しい言葉や言い回しを省くことで、読みやすい文章になっているものが多いです。
しかし、逆に「読みやすい文章」が「読ませる文章」とは限りません。究極まで読みやすさを追求した文章でも、中身が伴っていなければ、読者には読みたいと思われないからです。
読ませる文章≠上手な文章
では「読ませる文章」は「上手な文章」なのか?実はこれもイコールではありません。
どの教科でもいいので教科書を思い出してみてください。教科書に載っている文章はどれもしっかり練られた上手な文章です。しかし好きな科目でもない限り、自ら進んで読みたくなる文章ではありませんよね。
逆に、読ませる文章にするには、上手な文章を書く必要はないとも言えます。むしろ上手に書こうとしない方が、最後まで読ませる文章になることもあるのです。
最後まで読ませる文章に共通した特徴3つ
ではどんな文章が最後まで読ませる文章なのでしょうか?ここでは3つの特徴をご紹介します。
読者の興味を惹く書き方をしている
同じ物事でも、書き方によって読まれやすさが変わります。読ませる文章は共通して読者の興味を惹く書き方をしているんですね。
海外の大ヒットブログ『Copyblogger』を運営するBrian Clark氏も言ったように「記事の中の各文の目的は次の文を読ませること」です。1文目は2文目を読ませるため、2文目は3文目を読ませるため…と続いていきます。
読者が飽きずに興味をそそられる文章を展開することで、読者は気付けば最後まで読み切っているのです。
書き手の感情が伝わってくる
教科書の文章と読ませる文章の大きな違いは、書き手の感情が込められているかどうかです。教科書は事実を淡々と伝える役割があるため、そこに感情は必要ありません。
しかし、人は文章を読んでいて心が動かされることがあれば、その文章の印象がより一層強まります。
書き手の感情が伝わったとき、読者も書き手と一緒に怒ったり、笑ったり、涙を流したりします。文章に没頭して、まるで自分事のように感じるのです。
テンポが良く飽きさせない
内容は面白いけど、読んでいて疲れるような文章は読ませる文章ではありません。読ませる文章は、文章自体のテンポが良くて読者を飽きさせないのです。
最初から最後まで飽きずに観られる映画を思い浮かべるとわかりやすいです。テンポが良い文章には、テンポが良い映画と同じように中だるみがありません。最後まで一気に読み進められるのです。
人に読ませる文章の書き方5つのコツ
人に読ませる文章の書き方のコツを5つ解説します。
余計な前置きをしない
文章を読ませるために余計な前置きは必要ありません。特に「こんにちは!〇〇です。先日は〜」などの本文のテーマと関係のない前置きは、読者の読む意欲を削ぐだけです。いきなり本文を書き始めましょう。
ここでおすすめなのが「サビ始まり」で書く方法です。有名なサビ始まりの文章は太宰治の『走れメロス』。最初の文はこう始まっています。
メロスは激怒した。
これだけ読んでも何のことかわかりません。しかし、この1文目は確実に読者を惹きつけているのです。
リアリティを込める
さらに読者の興味を惹くために、文章の中にリアリティを込めましょう。つまり、ノンフィクションの文章だと読者に認識させるのです。
具体的には、個人的な経験を語ったり、文章に書き手の感情を乗せたりします。「怒りがわいた」「呆然とした」といった感情は、読者も当事者のように理解しやすくなるのです。
もしくは、読者の気持ちの代弁者になるのもいいでしょう。読者が「そうだそうだ」と共感できると、さらに没頭して読みすすめていきます。
読みやすいテンポで構成する
スラスラと読みやすくするために、文章のテンポを意識しましょう。
読みやすい文章のテンポには、以下のような特徴があります。
- 小学5年生でもわかるように、難しい言葉や言い回しは使わない
- 60文字以上になる場合には区切って2〜3文にする
- 人と会話するように書く
- あえて会話文を多めに入れる
特に長い文章を区切る方法は意識したいところ。あれもこれも説明しようとすると、1文にまとめがちになるからです。
また、1文で説明できるところをあえて会話文にする方法もおすすめ。会話文を多めに入れることで、物語を読むようにスムーズに読み進められます。
ストーリーテリングを活用する
ストーリーテリングとは、自分が伝えたいことを印象的な物語や体験談に載せて伝える方法。人が小説を読んだり映画を観たり、または噂話を聞いたりするのが好きなのは、物語が好きだからです。
解説記事や紹介記事など一見ストーリー性のないテーマであっても、何か「エピソード」を盛り込むことでストーリーテリングを活用できます。
エピソードは自分の物語でも、利用者の体験談でも、偉人のストーリーを引用してもかまいません。ぜひエピソードを書き足してみてください。
読ませる文章をたくさん読んで真似する
読ませる文章を書くには、たくさん読んで真似することから始めるのもいいでしょう。具体的には、自分が心惹かれた文章や、好きな書き手の文章を写経してみるのです。
写経の目的は、文章力アップ(正しい日本語が使える能力)ではなく記事力アップ(読者を惹きつける力)にあります。写経することでその文体を体で覚えて、自分も無意識に似た文体で書けるようになります。
手塚治虫は修行時代にディズニーアニメを何千枚も模写しました。写経はライティングの修行にも役立つということです。
ただし、単純に書き写すだけではなくしっかり考えることが大切。どの部分に、なぜ心惹かれたのか?どういう構成で書いているのか?など、考えながら体に好みの文体を叩き込みましょう。
「読ませる文章」は「伝わる文章」でもある
文章が人に読まれなければ、書き手が伝えたいことも伝わりませんよね。つまり、読ませる文章は伝わる文章でもあるのです。しかも読者が没頭して読んでくれるため、読者の印象に強く残すこともできます。
読ませる文章に共通する特徴を知り、コツを押さえて、あなたらしい「読ませる文章」を書いてみてください。