説得力のある文章の書き方とは?論理的思考力(ロジカルシンキング)の鍛え方

文章で読者を納得させ、行動させるには、説得力のある文章を書かなければいけません。

しかし「自分の文章は『何を伝えたいのかわからない』と言われる」「イマイチ説得力に欠ける」と悩む人も多いものです。

そこで今回は、説得力のある文章の書き方を解説します。論理的思考力(ロジカルシンキング)の鍛え方も併せて紹介するので、ぜひ試してみてください。

目次

論理的思考で説得力のある文章は書けるのか

そもそも、論理的思考力を鍛えれば説得力のある文章は書けるのでしょうか?

マリー・アントワネットは、飢餓に苦しむ貧民たちにこう言い放ったというエピソードがあります。

パンが無ければケーキを食べればいいじゃない

…これでは、貧民は誰も納得しません。

なぜなら、この言葉は論理的思考から発せられたものではないからです。

論理的思考をしていれば、少なくとも「作物を食べればいいじゃない」「動物を狩って食べればいいじゃない」という発言をしたはず。

文章も同じで、論理的思考によって書かれていない文章は、突飛な展開で読者を驚かせてしまいます。

説得力を構成するのは「論理的な客観性」

説得力のない文章に圧倒的に足りていないものは、客観的な視点です。

マリー・アントワネットの名言からも読み取れるように、彼女は自分を基準にしています。

「私は〇〇」「私の経験上〇〇」と言っていては、「それはあなた(貴族)の場合であって、私たち(貧民)にはまったく道理が通らない」と反論されてしまうのです。

文章には主観も必要ですが、客観性は主観性以上に重要なもの。

つまり、相手の立場に立った発言ができるかどうかが説得力を左右するのです。

論理的思考で客観的な視点を養う

実は論理的思考によって客観的な視点を養えます。

論理的に考えようとすると、主語は「私」から「あなた」や別のものに置き換わるためです。

私は貧民から「食べるパンがない」と相談された

→パンを食べるには小麦粉が必要だ

→貧民は重税によって小麦粉が取り上げられたんだ

→貧民は代わりに他の作物を食べよ

説得力のある文章を書くには、論理的思考力を鍛えながら客観的な視点を持つことも意識していきましょう。

論理的思考力を鍛える5つの「型(フレームワーク)」

それでは、論理的思考力を鍛える5つの型(フレームワーク)をご紹介します。

まずは型に当てはめて考えながら、ロジカルシンキングがどういうものかを体感していきましょう。

三段論法

三段論法とは、一般的に正しいとされていること(大前提)と ある事象(小前提)から、妥当と思われる結論を導き出す方法です。アリストテレスが確立させました。

大前提:すべての人間は死すべきもの。

観察事項:ソクラテスは人間である。

結論:ゆえに、ソクラテスは死すべきもの。

誰もが正しいと思える事実を起点としているため、前提が正しければ結論も正しいと言えます。誰でも使いやすい手法で、かつかなり説得力があり、初めて論理的思考力を鍛える人におすすめです。

帰納法

帰納法とは、複数の事象(前提)から1つの結論を導き出す方法です。イメージとしては、複数の根拠を並べて1つの結論を裏付ける感覚です。

ただし帰納法で導かれた答えは、あくまで「推論」に留まる点に注意しましょう。

前提1:ソクラテスは死んだ。

前提2:ナポレオンも死んだ。

前提3:ソクラテスとナポレオンは人間だ。

結論:だから、すべての人間は死すべきもののようだ。

推論ではありますが、論理的思考力を鍛えるためにはその結論になった根拠を考えることは欠かせません。複数の事象を組み合わせて、結論の裏付けになっているかどうかを確認しながら考えてみてください。

ピラミッドストラクチャー

ピラミッドストラクチャーは、ある結論を起点(頂点)にしたピラミッド型の構造を利用し、結論を論理的に主張する方法です。

画像引用:https://studyhacker.net/

主張の下に複数の根拠を、さらに根拠の下には複数の事例を配置します。この根拠と事例が主張を裏付ける要素となり、ロジックエラー(論理の崩壊)を防ぎます。

誰が見ても理解しやすい構造で頭の整理にもなるため、図に書きながら論理的思考力を鍛えてみてください。

ロジックツリー

ロジックツリーとは、課題をツリー状になるように分解し、その原因や解決策を探るためのフレームワークです。

ピラミッドストラクチャーと似ていますが、ピラミッドストラクチャーは結論を主張するための根拠を挙げるものである一方、ロジックツリーでは課題が頂点にあるのがポイント。

画像引用:https://infinity-agent.co.jp

ツリー構造の下に行くほど具体性が高く、アクションに近い要素になっていきます。様々な視点から解決方法を探れるため、文章を書く前にロジックツリーで読者の課題を分析してみるのもいいでしょう。

MECE

MECEとは「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の略で、「モレなく、ダブりがない」という意味です。

この「モレなく、ダブりがない」要素を洗い出すアプローチ方法として、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチの2つがあります。

  • トップダウンアプローチ:大枠を決め、上から要素を当てはめていく方法。全体像が見えているときや分類方法がわかっているときに有効。
  • ボトムアップアプローチ:最初に思い付く要素を並べ、そこから分類の仕方を決める方法。事前にどんな分類をしていいのかわからないときに有効。

MECEはトップダウンアプローチで要素を当てはめるのが基本。しかし、そもそも分類がわからない場合には、先にボトムアップアプローチを行い、トップダウンアプローチで修正を加えながら進めていくようにしましょう。

MECEは論理的思考の真髄とも言われているため、この「モレなく、ダブりがない」状態をマスターできるといいですね。

説得力のある文章の書き方

論理的思考力を鍛えたら、あとは読者に伝わるように文字に起こすだけ。ここでは説得力のある文章の書き方を解説します。

曖昧な言葉を具体的な言葉に置き換える

読者を納得させたいのなら、曖昧な言葉を使ってはいけません。

特にやりがちなのが「〜と思います」「きっと〜のはず」という書き方。こうした曖昧な書き方には自信のなさが滲み出てしまうのです。「〜です」と言い切ってしまいましょう。

また「女優のAさんは〜」「某製薬会社では〜」と書くよりも、具体的に書く方が良い場合があります。

対象のイメージをマイナスにするなら匿名の方が好ましいですが、褒めたり良い事例として挙げたりなど、対象のイメージがプラスになるなら具体的な名前を挙げた方が説得力が増すのです。誰だって褒められて悪い気はしません。

「なぜ?」を繰り返す

読者を納得させるなら、読後に疑問点を残さないのが重要です。そして疑問点を残さないためには、書き手自身が自分の文章に対して「なぜ?」を繰り返し問いましょう。

バランスボールで腰痛が治った→(なぜ?)→バランスボールに乗ると背筋が伸びる→(なぜ?)→バランスを取るために良い姿勢になろうとする→(なぜ?)→普段から姿勢が悪かったから

このように「なぜ?」を繰り返すことで、読者の疑問に先回りして答えられるようになります。

結論から書き始める

ダラダラと長い説明が続いていても、読者を飽きさせるだけ。「それで何が言いたいの?」と苛立ち始めるでしょう。

読者を納得させるなら、最初に結論から書き始めた方が効果的。いきなり結論を示し、結論を裏付ける根拠や事例を挙げて行く方が、読後の納得感が大きいのです。

先述した論理的思考のフレームワークで言うなら、ピラミッドストラクチャーが当てはまります。もしくは三段論法や帰納法で思考をした後、逆から説明するのも良いでしょう。

結論から書き始める文章のフレームワークには「PREP法」があるので、型として使ってみてください。

  • Point(要点)…先に要点・結論・主張を明確にする
  • Reason (理由)…その結論になる理由を書く
  • Example(具体例)…さらに具体例を出して結論を裏付ける
  • Point(要点)…最後にもう一度要点をまとめる

論より証拠

どんなに論理的な文章だとしても、やはり証拠にかなうものはありません。「論より証拠」「百聞は一見に如かず」という言葉にもあるくらいですから、主張を裏付ける証拠は必ず用意しましょう。

可能であれば、科学的または統計的に導き出された証拠が望ましいです。満足度アンケートや実験の結果など、具体的な数字が載っていると良いですね。

定性的な証拠としては、偉人の言葉を借りたり、著作物を引用するのも有効です。他者の権威を借りることでも、結論の主張には十分です。

あえて反対意見を述べる

実は自分の主張に対する反対意見を述べるのもおすすめ。反対意見を述べたうえで、自分の主張が正しいことを証拠を使って証明すると、より説得力が増すのです。

(主張)日焼け止めを塗らないと日焼けする

(反対意見)日焼け止めに含まれる成分も肌に悪いのでは?

(証拠)日焼け止めを10年間塗り続けた肌の写真と10年間まったく塗らずに過ごした肌の写真

(反対意見への反論)紫外線による肌への損傷の方が影響が大きい

そもそも反対意見とは、主張に対する「不安要素」です。読者の隠れた不安を取り除くために、一度反対意見を出してから丁寧に反論しましょう。

単純接触効果を狙う

単純接触効果とは、相手との接触頻度を増やすことで相手に好意を持ってもらう心理学の法則のことです。

文章の場合、何度も同じことを繰り返し書く(主張する)ことで、最終的に読者がその主張を受け入れやすくなるのです。

単純接触効果を狙うためにも、きちんと筋が通った文章にする必要があります。一本の筋が通った文章の中で、自然に主張を繰り返して行きましょう。

説得力のある文章=論理的思考力+文章力

説得力のある文章を書くには論理的思考力が不可欠ですが、その論理をわかりやすく伝えるための文章力も欠かせません。

論理的思考力と文章力が備わったものが、説得力のある文章なのです。

本記事で紹介した方法で論理的思考力を鍛えると同時に、文章力も磨いていってくださいね。

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