あなたの文章を読んでみて、どこかに違和感はありませんか?それはもしかしたら、文章がねじれているのかもしれません。
しかし、文章の違和感やねじれは書いた本人では気付きにくいもの。ここでは執筆時にねじれを起こさないように、正しい係り受けのルールを解説します。
係り受けとは
係り受けとは、簡単に言えば言葉と言葉の関係性のことです。
文章は複数の文節から構成されており、異なる文節がつながって“意味”を形作っています。
例えば、次の文章を文節で分けてみましょう。
私は文章を書いた → 私は/文章を/書いた
「私は」と「書いた」がつながって意味の通る文章になっています。「私は」が「書いた」に係り、そして「書いた」が「私は」を受けることで、文章として成り立っているのです。
係り受けは2種類ある
係り受けには2種類あります。
- 主語と述語
- 修飾語と被修飾語
それぞれ係る文節(主語・修飾語)と受ける文節(述語・被修飾語)があることで、意味の通る文章になっています。
【主語と述語】私は長い文章を書いた → 「私は」と「書いた」が係り受け
【修飾語と被修飾語】私は長い文章を書いた → 「長い」と「文章」が係り受け
ただし主語・述語、修飾語・被修飾語は必ずセットです。主語が被修飾語に係ることはありませんし、述語が修飾語を受けることもありません。
係り受けが間違っていると文章がねじれる
係り受けは日本語としての基本ルールですから、さも当たり前かのように感じるかもしれません。しかし、自分で文章を書くとなると、無意識に係り受けを間違えることが往々にしてあります。
係り受けが間違っていると、文章がねじれてしまいます。次の例文を見てみましょう。
- 私が文章を書かれた
- 私の文章を書いた
- 私に文章を書いた
1は誰が読んでも違和感を感じる文章です。「書かれた」は受け身や受動態の語句ですから「私が」とは一緒に使われません。
2は一見すると違和感はありませんが、実は主語と述語が成り立っていません。「私の」が「文章」に係り、修飾語と被修飾語の関係になっています。この場合、誰が主語なのかが明確ではないのです。
3も違和感がないようですが、「私に」と「文章」がそれぞれ補語・目的語になっています。この文章でも主語は「私」ではなく別の誰かになります。違和感はないけれど、この文章だけでは意味が通らないでしょう。
係り受けのルール
文章のねじれを起こさないためには、係り受けを正しく使う必要があります。
係り受けは義務教育で学ぶため、日本人なら一度は学校で学んだ記憶があるでしょう。ここでは係り受けのルールを解説します。
ライティング初心者から上級者まで、改めて確認してみましょう。
主語と述語を明確にする
主語は必ず述語に係り、述語は必ず主語を受けるようになっています。
ただし、日本語は主語を省略できる言語です。それが日本語の魅力でもありますが、場合によっては読者に混乱を招く場合もあります。
主語と述語の係り受けを正しく行うには、主語と述語を明確にしながら文章を書きましょう。
主語を省略するにしても、必ずどこかに主語は存在しています。存在するけど見えない主語と、セットになる述語を意識して書くことで、意味の通るわかりやすい文章になるでしょう。
修飾語と被修飾語は近づける
修飾語と被修飾語はできる限り近づけるようにしましょう。修飾語と被修飾語が離れすぎると、修飾語がどの語句に係っているのかがわからないためです。
例えば、次の2つの文章を読み比べてみてください。
- 美しい山のふもとに川が流れている
- 山の美しいふもとに川が流れている
- 山のふもとに美しい川が流れている
この文章では「美しい」が修飾語ですが、1〜3で被修飾語が異なります。
1では「美しい」が「山」に係り、「美しい山」に。2では「ふもと」に係り、「美しいふもと」に。そして3では「川」に係り、「美しい川」に。
修飾語がどの被修飾語に近いかで、どの言葉を形容しているのかがまったく異なりますよね。
また次の例文も見てみましょう。
楽しい上野には動物園があるんですよ。
この文章では「楽しい」が「上野」に係っていますが、「楽しい上野」だと違和感がありますよね。本来修飾したいのは「動物園」ですから、次のように書くのが適切でしょう。
上野には楽しい動物園があるんですよ。
修飾語が複数ある場合の2つの考え方
修飾語が複数ある場合には、2つの考え方があります。
- 短い修飾語を被修飾語に近づける
- 長い修飾語を先に置く
長い修飾語を被修飾語の直前に置くのは間違いではありませんが、複数の修飾語がある場合は短い修飾語を被修飾語に近付けた方が自然な文章になります。
では、例文で見てみましょう。
(NG例)楽しい上野には子供も大人も乗馬ができる動物園があるんですよ。
(OK例)上野には子供も大人も乗馬ができる楽しい動物園があるんですよ。
NG例よりもOK例の方が、自然で意味が通りやすい文章になったのではないでしょうか。
「係る語」「受ける語」を意識する
文章を書くときには「係る語」と「受ける語」を意識してみることで、語句をどの順番で並べればいいのかがおのずとわかります。
語句の順番を考えるとき、係る語と受ける語はなるべく近付けるようにしましょう。係る語と受ける語が遠く、間に長い語句が入っていると読者が意味を誤解しやすいためです。
私はあの頃の思い出を振り返って彼が散歩をしている間に文章を書いた。
この文章では、誰が「文章を書いた」のか、誰が「散歩をしている」のかがわかりません。執筆者は「私は文章を書いた」と伝えたいはずなのに、読者は「彼が文章を書いた」と誤解する可能性もあります。
そこで、係る語・受ける語を意識して語句の順番を入れ替えてみましょう。
彼が散歩をしている間に、私はあの頃の思い出を振り返りながら文章を書いた。
入れ子構造をやめ、「彼が→散歩をしている」「私は→文章を書いた」と、前後に分けました。これなら読者は誤解せず、執筆者の意図をきちんと受け取れるでしょう。
長い文章は短い文章に分ける
係る語と受ける語は近づけるのが得策ですが、どうしても間に言葉が入って長くなる場合には、短い文章に分けましょう。
文章が長く複雑になればなるほど、ねじれが起きやすくなります。一文に情報を詰め込みすぎることで、読んでも結局何を伝えたいのかわからない文章になるのです。
彼が散歩をしに行った。その間に、私はあの頃の思い出を振り返りながら文章を書いた。
こちらは先ほどの文章を2つに区切っただけですが、文章のリズムが良くなって読みやすくなりました。
係り受けの間違いを見つける方法
一気に文章を書き上げると、係り受けの間違いに気付かないことがあります。必ず推敲を行い、間違いがないかを確認しましょう。
ここでは係り受けの間違いを見つける方法をご紹介します。
主語と述語だけで意味が通るかを確認
まずは主語と述語の間違いを見つける方法です。やり方は簡単で、文章中から主語と述語だけを取り出して並べ、意味が通るかを確認しましょう!
もし日本語として意味が通らない、もしくは違和感がある場合は、間違っているということです。
主語と述語のどちらか、あるいは両方を、意味が通るように修正しましょう。
どの語を修飾したいのかを確認
修飾語と被修飾語でも、両方取り出して意味が通るかを確認できますが、それだけでは間違っているかどうかわからない(気付かない)こともあります。
修飾語と被修飾語の関係を調べたい場合には、どの語を修飾したいのかを改めて確認しましょう。
赤くて甘いイチゴとトウガラシ
イチゴもトウガラシも赤いですが、トウガラシは甘くありません。この文では「赤くて甘い」が「イチゴ」と「トウガラシ」を修飾してしまっています。修飾語を足して修正しましょう。
赤くて甘いイチゴと、赤くて辛いトウガラシ
どの語を修飾したいのかを確認することで、正しい修飾語・正しい語順が見えてくるでしょう。
係り受け解析ツールを利用する
係り受けが正しいか間違っているか、文章を書いた本人ではどうしても気付けなかったり、見落としたりすることが多いです。
そこで、係り受け解析ツールを使って、システムに判断してもらうといいでしょう。
係り受け解析ツールにはふりがな文庫ラボやCaoboCha(南瓜)などがあります。無料のツールでも意外と高性能です。
または、誰かに文章を読んでもらい、添削を受けるのもいいですね。
基本に戻って係り受けを正しく使おう
初心者ライターだけでなく、書くことに慣れたベテランライターさえも、係り受けのルールを無視してしまいがちです。係り受けが間違っていると文章がねじれ、意味が通らない文章になってしまいます。
しかし逆に言えば、係り受けを整えるだけでも、文章がグッと読みやすくなるということ。
基本に戻って係り受けのルールを理解し、正しく使うようにしましょう。