「〜たり」の正しい使い方を解説!間違いやすいポイントや言い換え表現も

無意識に使っている日本語が、実は間違った用法になっていることってよくありますよね。

その一例としてよく挙げられるのが助詞の「〜たり」です。会話や文章の中でよく使われている反面、誤用も多く、さらに書く側・読む側の両方が誤用に気付かないこともしばしば。

今回は「〜たり」の正しい使い方を解説します。

目次

「〜たり」は並列助詞

「〜たり」は並列助詞(または並立助詞)に分類され、2つ以上の言葉や動作を等しい関係で繋げる役割を持っています。

「〜たり」とよく似たの並列助詞には「〜なり」や「〜やら」があり、これらも「〜たり」と同じ用法で使用しますが、「〜たり」の方が間違って使われることが多いです。

並列助詞は続けて使うのが基本

「並列=並べつらねること」ですので、「〜たり」「〜なり」「〜やら」などの並列助詞は続けて使うのが基本。

わかりやすいように例文を見てみましょう。

飛んだり跳ねたり

煮るなり焼くなり

犬やら猫やら

この例文のように「並列する語句」と「たり」をくっつけ、1つの語句に対して1回使用します。

2回目の「〜たり」が省略されてしまう原因

ときどき2回目の「〜たり」が省略された文章を見かけませんか?

×今日はカフェに行ったり映画を観ます。

○今日はカフェに行ったり映画を観たりします。

「〜たり」の用法がきちんと身に付いている人なら、間違いの例文に違和感を感じるでしょう。しかし用法が身に付いていない人だと「どこがおかしいの?」と疑問に思う人もいるようです。

2回目の「〜たり」が省略されてしまう原因は2つ考えられます。

まず1つ目は、うっかり使い忘れてしまうこと。特に長文になることで、後半の「〜たり」が意図せず省略されてしまうことはよくあります。

そして2つ目の原因は、例示の意味の「〜たり」と混同すること。「〜たり」は物事を例示する場合、1回の使用でも間違いではないとされるため、並列と例示を混同してしまうのです。例示の使い方は次の項で詳しく解説します。

「〜たり」の正しい使い方

「〜たり」の用法はそれほど難しくはないものの、誤用が多いため、使い方をしっかり覚えておきたいですね。ここでは「〜たり」の正しい使い方を解説します。

2回繰り返す並列・列挙

「〜たり」を2回繰り返し、言葉や動詞を並列・列挙するのが基本的な使い方です。

今度の休日は市役所に行ったり図書館で本を読んだりします。

赤ちゃんは手足をバタつかせたり、ただ空中を見つめたりしています。

また、文章が長くなる場合でも等しい関係の語句には必ず「〜たり」をつけましょう。

去年の夏は友達と海にサーフィンをしに行ったり、家族と山に登って星空の下でキャンプやバーベキューをしたりと、自然を満喫しました。

「〜たり」の用法に迷ったときは、“とりあえず2回”と覚えておけば間違いありません。

1回のみ使う例示

実は「〜たり」を1回のみ使った場合でも、間違いではないとされるパターンもあります。それは例示として使う場合です。

明日は市役所に行ったりしたいんだけどなぁ。

この文章は「〜たりしたい」の後ろに同類の事柄があることを例示しています。「市役所に行きたいけど、図書館にも、カフェにも、映画館にも行きたい」ということを、暗に示しているのです。

では「〜たり」を2回使った場合はどうでしょうか?

明日は市役所に行ったり、図書館に行ったりしたいんだけどなぁ。

この文章だと「行きたい場所は市役所と図書館」の2つに限定されてしまいますよね。

このように、例示の意味の「〜たり」は他にも並列・列挙したい事柄がたくさんあるが、すべて列挙するのが難しい場合に使われます。

ただし、列挙したいものが2つ3つくらいなら、「〜たり、〜たり」と2回続けて書いた方がいいでしょう。

また、可能性を表す場合も1回の使用でいいとされています。

山田くん、花子ちゃんのこと好きだったりして。

この家には幽霊が棲みついてたりして!

主人公の親友が、実は犯人だったりするかも。

1回の使用でOKなパターンを覚えて、きんと使い分けられるようにしましょう。

3回続けて使う並列・列挙

では、列挙したい語句が3つある場合にはどうすればいいのでしょうか?

どう列挙するか迷いやすいですが、“1つの語句に対し「〜たり」は1つ”というルールですから、3つ続けて並べても文法的には誤用ではありません。

今度のデートは映画を観たり、買い物したり、パフェを食べたりしたいな。

ただし、場合によってはくどい言い回しになったり、幼稚になったりすることもあります。必要な場合は表現を変えるなどして、あまり多用しない方がいいかもしれません。

「〜たり」の間違いやすいポイント

「〜たり」を2回使っていても、実は間違っている場合があります。ここでは「〜たり」の間違いやすいポイントを見ていきましょう。

事柄の並列関係に注意する

「〜たり」で並列した事柄は、同等の関係でなければいけません。例えば、次の文章を見てみましょう。

市役所に行ったりコーヒーを飲んだりする予定です。

どこか違和感を感じませんか?「〜たり」は2回使っていても、「市役所に行く」と「コーヒーを飲む」は違う分類です。正しくは、次のように表現します。

市役所に行ったり、カフェに行ったりする予定です。

市役所に行って手続きをしたり、カフェでコーヒーを飲んだりする予定です。

また、次の文章も並列関係が正しくありません。

赤ちゃんは手足をバタつかせたり、カレーを食べたりしています。

赤ちゃんはまだカレーを食べる年齢ではないため、「カレーを食べている」には別の主語が入ります。

赤ちゃんは手足をバタつかせていて、弟はカレーを食べながらテレビを見ています。

並列関係が成立しない場合には「〜たり」を使わず、別の表現に言い換えましょう。

「〜たり」の後ろに「など」は付けない

「〜たり」はすでに並列の関係を表しているため、似たような使い方をする副助詞「など」と一緒には使用しません。

彼女は書類をプリントアウトしたり、電話を取り次いだりなどして、私の仕事を手伝ってくれている。

この文章は一見自然な言い回しになっていますが、NGの例です。次のどちらかに言い換えましょう。

彼女は書類をプリントアウトしたり、電話を取り次いだりして、私の仕事を手伝ってくれている。

彼女は書類のプリントアウトや電話の取り次ぎなどをして、私の仕事を手伝ってくれている。

ちなみに「など」は同類のものが他にも多数存在するときに、その中の例をいくつか示す場合に使います。そのため「ご飯やパンなど」は正解ですが「ご飯など」と1つの事柄しか無い場合に使うのは間違い。「〜たり」とどこか似た性質を持っていますよね。

「〜たり」の上手な言い換え方・表現方法

何かの事柄を並べるときに「〜たり」は便利な表現ですが、使いすぎると冗長な文章になってしまいます。

そこで「〜たり」の上手な言い換え方や工夫した表現方法も一緒に覚えておきましょう!必要に応じて使い分けることで、文章にリズムが生まれ、読みやすくなりますよ。

動詞を名詞に置き換える

「〜たり」の動詞を名詞に置き換えると、よりすっきりした文章に変わります。

美術館では食べたり飲んだりしてはいけません。

美術館では飲食禁止です。

雨の日は読書をしたり映画を観たりして過ごすことが多いです。

雨の日は読書や映画鑑賞をして過ごすことが多いです。

風邪を引かないように手を洗ったりうがいをしたりしてね。

風邪を引かないように手洗い・うがいをしてね。

「こと」や「など」に置き換える

「〜たり」をそのまま「こと」や「など」に置き換える方法もあります。

道にゴミを捨てたりその場に放置したりしたら捕まります。

道にゴミを捨てることや、その場に放置することは法令で禁止されています。

雨の日は読書をしたり映画を観たりして過ごすことが多いです。

雨の日は読書や映画鑑賞などを楽しんでいます。

また、例示するものを2つ並べて「することなど〜」と、「こと」に前述した「など」をくっつけるのも可能です。

ただし「こと」を多用すると逆に文章が稚拙な印象を受けやすく、逆に「〜たり」よりも冗長になる場合も。「〜たり」「など」との使い分けを意識しましょう。

文章を区切る

一文が長くなる場合には、「〜たり」を使わずそのまま区切るのもいいでしょう。

去年の夏は友達と海にサーフィンをしに行ったり、家族と山に登って星空の下でキャンプやバーベキューをしたりと、自然を満喫しました。

去年の夏は友達と海にサーフィンをしに行きました。家族と山に登って星空の下でキャンプやバーベキューもして、自然を満喫しました。

明日は市役所に行ったり、カフェに行ったりします。

明日は市役所に行く予定です。その後、カフェでコーヒーを飲もうと思います。

文章を区切った方が一つひとつの事柄が強調されます。「〜たり」を使って続けて書くよりも、読者の記憶に残りやすいでしょう。

「〜たり」の使い方に迷ったら2回続けて書いておく

書き手は誤用が多く、読み手ですら誤用を見落としやすい並列助詞の「〜たり」。1回だけの使用でもOKなパターンがあり、意識しないと間違いやすいですよね。

もし並列助詞の使い方に迷ったら、とりあえず「〜たり、〜たり」「〜なり〜なり」と2回続けて書いておくと失敗しにくいですよ。

基本を押さえたうえで、正しく使い分けられるように訓練していきましょう!

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