体言止めとは?効果的な使い方とビジネスシーンでの使用について

文末の表現方法の1つとして、体言止めがあります。一般的なメディアでは「〜です」「〜ます」といった文末と組み合わせて体言止めを使用することで、文末に変化を加えることができるのです。

ただ、体言止めに慣れていない人は意識しないと使いづらいかもしれません。また、ビジネスシーンで体言止めを使うと失礼になる可能性も。

今回は体言止めの効果的な使い方と、ビジネスシーンでの体言止めについて解説します。

目次

国語で学んだ「体言止め」とは?

体言とは、名詞や代名詞のことを指します。つまり「体言止め」とは、文章の語尾を名詞や代名詞などで止める文章技法のことなのです。

名詞と代名詞は主語となり得るもので、動詞や助詞のように活用形がありませんが、いくつかの種類に分類されます。

普通名詞:物事の一般的な名称(車、犬、サッカー など)

固有名詞:その物事だけに付けられた名称(富士山、東京タワー、人の名前 など)

数詞:数量や順序(二人、一位、第五 など)

代名詞:名詞の代わりに人や物事を指し示す(あなた、わたし、これ など)

形式名詞:実質的な意味を持たず、形式的な名詞(「食べたことがある」の「こと」など)

転成名詞:他の品詞を持つ単語だが、名詞に転じたもの(「考えが浮かぶ」の「考え」など)

俳句・短歌以外でも体言止めが使える!

元々、体言止めは俳句や短歌で頻繁に使われていました。詩に深みを出したり、字数を揃えたりするのに便利だったからです。

現在は俳句・短歌以外の文章でも体言止めがよく使われています。

例えば、日記では過去に起きた出来事を書くため「〜ました」「〜た」の文末が何度も続きやすくなります。同じ文末は文章を単調にしてしまうため、体言止めと組み合わせることで表現の幅を広げられるのです。

同じような理由で、Webメディアの記事にも体言止めが使われます。です・ます調はだ・である調と比べると文末表現のバリエーションが乏しく、単調で面白みのない文章になってしまうためです。

俳句や短歌とはまた違った目的ですが、他の文章でも体言止めは使いやすいんですね。

体言止めによる4つの効果

体言止めには4つの効果があります。それぞれ見ていきましょう。

文章が短くまとまり、読みやすくなる

体言止めは名詞・代名詞が文末に来るため、変わった言い方をすれば「文末を省略する技法」だと言えます。

僕の家に迷い犬がやってきたのは、夏休み初日のことです。

夏休み初日、僕の家に迷い犬がやってきた。

省略しすぎると読みにくくなるものの、適度に使うことで文章が短くまとまり、読みやすくなるでしょう。文字数を少しだけ調整したいときなどにも役立ちます。

文章にリズムが生まれる

まずは次の文章を読んでみましょう。

レモンにはビタミンCが含まれています。

みかんにも、キウイにもビタミンCが含まれています。

そのまま食べるなら、食べやすいみかんやキウイを選びます。

言いたいことはわかりますが、文末がすべて「〜ます」になっているため、単調で読み応えや面白みのない文章になっていますよね。

体言止めや「〜です」を使って、表現を変えてみましょう。

レモンにはビタミンCが含まれています。

ビタミンCが含まれている他の果物といえば、みかんやキウイ。

そのまま食べるなら、みかんやキウイの方が食べやすいです。

このように文章にリズムが生まれるだけで、読んでいて「面白い」と思える文章になるのです。

読者の注意を引きつける

体言止めをうまく使うことで、読者の注意を引きつけ、続きを読ませることができます。

私は10月生まれのさそり座の女です。

アタシは、さそり座の女。

この文章が冒頭にあると「どんな話が続くのだろう?」と気になりませんか?名詞で止まっているからこそ、読者は書き手の意図を読み取ろうとするのです。

読後に余韻を残す

特に俳句・短歌・小説・詩などでは、体言止めにすることで読後に余韻を残す効果もあります。

北の夜空にあるのは、カシオペヤ座の星です。

北の夜空に瞬くのは、カシオペヤ座の星。

さらに奥深い余韻を残すなら、例文のように「ある」を「瞬く」や「浮かぶ」に変えるなど、体言止め以外の文章表現にも工夫を凝らしてみましょう。

体言止めの効果的な使い方

体言止めは文章に変化や深みを与えられる技法ですが、むやみやたらと使うのはNG。使うべき箇所で使うからこそ、効果を発揮できるんですね。

ここでは、体言止めの効果的な使い方を確認しましょう。

長い文章を短く分割する

読点が多く長く続く文章は、読者に読みにくさを与えてしまいます。そんな長い1文は、2〜3文に分けて読みやすくするのが基本です。

ただし、「〜ます〜ます」と同じ文末表現が続くのは避けたいですよね。そこで体言止めを使いましょう。

マーケティングに大事なのは、顧客視点で考えることであり、顧客に商品の価格以上の価値を提供することですから、ブランド力を高めて商品と一緒にブランドそのものの価値を提供することが大切です。

この文章を分割し、体言止めを使って読みやすくしましょう。

マーケティングに大事なのは、顧客視点で考えることです。

顧客が求めているのは商品の価格以上の価値。

ブランド力を高めれば、商品と一緒にブランドそのものの価値を提供できるのです。

意味が伝わりやすくなったのではないでしょうか?

文末すべてを「〜です」で締めることも可能ですが、あえて体言止めを用いることでリズムのある文章になります。

強調したい箇所に使う

日本語は、文章の最後の語句が強調され、印象に残りやすいという特徴を持っています。その特徴を利用して、体言止めを強調したい箇所(語句)に使いましょう。

日本で一番高い山。それは、富士山です。

貯めるなら、ラ・ラ・ラ楽天ポイント。

文章の中で何かを強調したいときはもちろん、キャッチコピーにも体言止めを使うのがおすすめです。耳に残りやすい音楽に乗せれば、消費者が口ずさんでくれるかもしれません。

他の文末表現と組み合わせる

体言止めを使いすぎてしまうと、強調するものが曖昧な文章になってしまいます。また「〜ます〜ます」を続けて使うのと同様に、単調な文章になってしまうでしょう。

だからこそ、体言止めは他の文末表現と組み合わせることが大切です。

  • 体言止め
  • 常体(〜だ、〜である、〜だろう)
  • 敬体(〜です、〜ます、〜でしょう)
  • 呼びかけ(〜ですよね、〜ますよね、〜だろうか)
  • 推定表現(〜かもしれません、〜はず)
  • 過去形(〜でした、〜だった)

文末表現は挙げてみると意外とたくさんあることに気付きます。バリエーションを知っているだけでも、表現の幅が広がるでしょう。

どうしても体言止めが続くとき、場合によっては箇条書きを使う方が適していることもあります。

どんな表現・表記が読者にとって一番読みやすいかを考えながら、あらゆる表現技法を柔軟に使いこなしていきたいですね。

ビジネスシーンで体言止めを使うのは失礼?

ここまで解説したように、体言止めを使うことでさまざまな効果を得られます。

しかし、どうしても断定的な表現になるため、相手に敬意を持って接する必要があるビジネスシーンには適していない場合も多いです。

口頭での体言止めはNG

仲が良い相手なら問題ありませんが、ビジネスシーンで相手と会話をするときに体言止めを使うのはNGです。

例えば、面接でのやりとりをイメージしてみましょう。

「趣味はなんですか?」

「はい。私の趣味は映画鑑賞」

これでは就活生の印象が悪いですよね。

少なくとも、目上の人に対しては「〜です」「〜ます」などの丁寧語をつける必要があるでしょう。

メールでも体言止めを控えよう

ごく稀にですが、社内のメールで体言止めを乱用するビジネスマンもいます。

ABC社との面談のため外出。本日は17時に帰社予定。田中さんにスケジュール確認をお願いします

最後は「お願いします」と丁寧語で書かれてるものの、やはりぶっきらぼうな印象があります。

上司が部下に対して体言止めを使うことは許容範囲ですが、使いすぎるのもやはりNG。ニュアンスや結論がよくわからないため、誤解を与えてしまったり、相手の業務の進行度を阻害する可能性があるためです。

簡潔に要件を書きたい場合は箇条書きにし、前後の文章は丁寧語で書くようにするといいでしょう。

体言止めを適切なタイミングで適切に使おう

体言止めを用いることで文章にリズムを出したり、強調したり、余韻を残したりと、さまざまなメリットがあります。

ただし、使いすぎるのは逆に読みにくくなるためNG。ビジネスシーンでの会話やメールのやりとりにもあまり適していません。

体言止めを適切に使用し、文章表現のバリエーションを増やしましょう。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

目次