【事例あり】文体とは何か?意味とよく使われる文体の種類を解説

小説であれWebのニュース記事であれ、どんな文章も「文体」を持っています。

「文体」をわかりやすく言い換えると「文章の口調」といったところでしょうか。人それぞれ違った口調で話すように、文章にもそれぞれ違った口調(=文調)があるのです。

そこで今回は「文体」について、意味や種類を掘り下げていきましょう。

目次

文体・文調の意味とは?

「文体」とは、文章のスタイルや様式のことです。似たものに「文調」という言葉もあり、文章の持つ調子やスタイルのことを指します。

文体も文調も、ほぼ同じ意味やニュアンスで使われているので大きな違いはありません。

文体は、その文章や作品の背後に作家性を見いだすためのヒントや根拠のひとつになることもあります。

ただ「文章のスタイル」「文章の調子」と言ってもピンと来る人は少ないでしょう。文体について、もう少しわかりやすく説明します。

文体は書き手の着眼点で変わる

文体とは正しい言葉や美しい日本語を使うことではなく、言葉の選び方、並べ方そのものを指します。

「良い文体・悪い文体」「正しい文体・誤った文体」などは存在しません。なぜなら、文体は書き手の着眼点によって大きく変わるからです。

書き手が物事をどのように見て、どのように感じたかによって、その書き手にしか出せない文体が生まれます。

また書き手の属性(性別、年齢、生きた時代など)によって文体がまったく違う点もポイント。

たとえ同じ内容のラブレターを書いたとしても、平安時代を生きた紫式部の文体と、現代の女子高生の文体が違うことは、誰でもわかるのではないでしょうか。

文体の違いは「書き手が見ている世界観の違い」とも言えるのです。

文体と読者には相性がある

あなたは文章を読んでいて、自分の中に入ってくる文章と入ってこない文章の違いを感じたことはあるでしょうか?

書き手自身が持つ文体があれば、読み手が好む文体があるもの。書き手の文体と読み手の好きな文体が見事マッチすれば、読み手に好まれる文章になるでしょう。

しかし逆に、その文体を好まない読み手もいます。果たして現代の女子高生は紫式部の文体を好むか……というと、少し難しいところですよね。

文体と読者にはどうしても相性があるため、誰も見向きもしないニッチなエッセイを好きになる人もいるし、ベストセラー小説を読みにくいと感じる人も少なからずいるのです。

文体の種類と特徴

文体にはいくつか種類があり、正式に定義されているのはこちらです。

口語体:日常的な会話や文章で使われる言葉や表現方法。話し言葉。

文語体:堅い文章を書くときに使われる言葉や表現方法。書き言葉。

和文体:日本語の文法に従い、ひらがなを主として漢字を交えて書いた文体。

漢文体:中国語の文法に従い、漢字・漢語で書いた文体。

書簡体:書簡=手紙の形式を取って、主観的に書いた文体。

論文体:論文の形式を取って、客観的に書いた文体。

ただ実際に世の中に溢れている文章は、上記以外にも書き手の視点やクセなどによって、より細かく分類できたり、統合できたりします。

ここでは、より汎用性の高い文体の種類を詳しく見ていきましょう。

ですます調/である調

文章の印象を大きく変えるのが、ですます調/である調(だ・である調)です。

ですます調とは、文末を「〜です」「〜ます」などの丁寧語で締める敬体のこと。である調とは、文末を「〜だ」「〜である」と書く常体のことです。

私は朝6時に起きたらコーヒーを1杯飲むことが日課です。コーヒーを飲みながら30分だけ読書をします。

私は朝6時に起きたらコーヒーを1杯飲むことが日課だ。コーヒーを飲みながら30分だけ読書をするのである。

ですます調は柔らかく丁寧な印象になる一方で、である調は堅くドライな印象になります。文末を変えてみるだけで読者に与える印象をコントロールできるでしょう。

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著者視点/主人公視点

次に著者視点/主人公視点のどちらで書くかによっても、文体が大きく変わります。

著者視点とは、書き手が読者に語りかけるような文体のこと。「饒舌体(じょうぜつたい)」とも言います。

たとえば太宰治の文書は「君(きみ)」と語りかけて来る饒舌体が特徴で、堅い文章ながらも不思議と読者に親近感を持たせています。

主人公視点とは、その文章の中に登場するキャラクターになりきって書く文体のこと。読者もキャラクターになりきって文章を読むため、より高い没入感を得られます。

さまざまな文章を読んで文体の感覚を掴みたい人は、ぜひ小説を選んでみましょう。小説ならストーリーの中に没入できて読みやすく、かつ著者視点/主人公視点の違いが明白なので、普段あまり活字を読まない人も手に取りやすいですよ。

口語体/文語体

人は話すときには口語体を使いますが、では書くときには文語体かというと、そういうわけではありません。実は文章を書くときにも、ほとんどの人は口語体を使っています。

口語体とは「話し言葉」のことで、人が日常会話で使うような言葉で書く文体のこと。一方で文語体とは、文章用に使われる「書き言葉」のことで、学校教育では文語体を学びます。

たとえばわかりやすい例が「食べれる(口語)」と「食べられる(文語)」でしょう。口語は「ら抜き言葉」として指摘されてきましたが、近年はよりスムーズな会話のキャッチボールのために受け入れる人も増えています。

ここで、口語体と文語体の違いを見てみましょう。

【口語体】
いちごにはビタミンCだけでなく、葉酸もたくさん含まれています。特に妊婦は健康的な赤ちゃんを産むために、積極的に食べたい果物です。

【文語体】
いちごにはビタミンCのみならず、葉酸も豊富に含まれています。特に妊婦は健康的な赤ん坊を産むべく、積極的に摂りたい果物です。

ほとんどの人が読みやすいと感じるのは、普段から使っている口語体の文章でしょう。文語体はやや堅苦しい印象ですが、どこか頭の良さも感じさせます。

ビジネスの場面では文語体の方が適切な場合があるため、必要に応じて口語体から文語体に変換できるスキルを身につけておくと良いかもしれません。

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古典/現代文

文体の違いが最もよくわかるのは、古典と現代文を比較したときです。ここでは、日本で最も有名な随筆『枕草子』の古文と現代語訳を見比べてみましょう。

【古文】
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。

夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光て行くもをかし。雨など降るもをかし

 

引用・出典:枕草子

【現代語訳】

春は明け方がいい。だんだんと白くなってゆく山際の方の曽良が、少し明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいているのがいい。

夏は夜がいい。月が輝いている時間帯は言うまでもなく、闇(月が登っていない)のときでも、蛍が多く飛んでいるのがいい。また、たくさん飛び交ってはいなくても、蛍が一匹二匹とほのかに光って飛んでいるのも趣がある。雨が降っているときも趣がある。

 

引用:https://manapedia.jp/

古文に使われていた古語が何百年もかけて変化し、現代語になっています。

さすがに古語を使って文章を書く人はほとんどいないでしょうが、日常的に使っている言葉が昔はどんな言葉だったのかを知るのも面白いのではないでしょうか。

文体(トンマナ)の違いを例で紹介

文体はビジネス用語で「トンマナ」と言われることもあります。ライティング をしている人なら、「文章のトンマナを揃えて」と指示された経験がある人もいるのではないでしょうか?

ここではより文体・トンマナの違いをイメージしやすいように、それぞれ違ったWeb記事を例に取り上げました。

あなた好みの文体を見つけるのと同時に、自分の文体がどのジャンルに近いのかもぜひ考えてみてください!

ビジネスニュース記事

24時間営業の限界などビジネスモデルに陰りがみられるコンビニエンスストア業界。コンビニを経営する加盟店オーナーの窮状に注目が集まりがちだが、業界の苦境は店長にも暗い影を落としている。

コンビニの加盟店オーナーは、1店舗のみを経営するオーナーもいれば複数店舗を経営する加盟店オーナーもいる。後者の場合、オーナーが店長を社員として雇用する。この「雇われ店長」に商品発注やアルバイトのシフト作成など店舗運営を任せ、オーナーは店舗網全体を管理することが多い。この雇われ店長の中には、待遇に不満を持つ人が少なくない。

「給料を上げてほしい。アルバイトの時給は上がった一方、社員の給料は据え置き。かたや税金や必要となる生活費は年々増えており、生活は厳しくなるだけ」

そうため息をつくのは30代の店長Aさんだ。首都圏でローソンを複数店経営するオーナーの下で働いている。

引用:https://toyokeizai.net/

ビジネスニュース系の記事は、ほとんど常体(である調)が使われています。また中にはインタビュー記事も多く、あくまて客観的な視点で書かれているのがポイントです。

ファッションコラム

お買物って最高!主役級ブラウスに動きやすいパンツで運命の出会い探しへ

オシャレ欲が戻ってきた今、また買物がしたい気分!トレンドの大きな衿つきブラウスに足さばきのいい、いつものテーパードパンツを合わせて、銀座に表参道に六本木?新宿?いざ、運命の一着を探す旅のはじまりです。

引用:https://trilltrill.jp/

ファッションコラムは親近感を持たせる饒舌体で書かれているのが特徴。柔らかい印象になるような言葉選びや「!」などの記号を使って、読みやすく受け入れやすい文体になっています。

用語解説記事

「月曜以降」、「15時以降」など「日時+以降」という表現は日常会話でもビジネスシーンでもよく使われます。「月曜以降に来てください」と言われて火曜日に行く予定の際は問題ありませんが、月曜に行きたい場合、ちょっと悩んでしまいますよね。

○○以降という場合、○○も含んでいます。対義語である「以前(その時よりも前)」も同様に記された日時を含む表現。今回は“以降”について詳しく解説していきます。

引用:https://chewy.jp/

解説系の記事は「〇〇について知らない人」がターゲットのため、誰でも理解しやすいように平易な言葉を使っています。敬体と口語体を組み合わせ、先生が説明しているような文体です。

読みやすい文章は文体をそろえることから

ここまで文体の種類を解説しながら、さまざまな文体を見てきました。文体は書き手の着眼点によって大きく変わるため、好みはあれど正解・不正解はありません。

ただ、文体がバラバラだと読んでいてストレスを感じやすくなります。もしあなたが読みやすい文章を書きたいのであれば、まずは文体をそろえることから意識してみましょう。

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