文章を書いているとき「表記ゆれ」に気付く人はごく少数。誰かに指摘されたとき、初めて気付くことがほとんどです。
整った文章、きれいな日本語を使うことも大切ですが、表記ゆれをしないことはライティングの基本中の基本。
本記事ではよくある表記ゆれの一覧と、自分では気付きにくい表記ゆれの対策方法を解説します。
「表記ゆれ」とは?
「表記ゆれ」とは、同一の意味を持つ言葉に対し、異なった表記がされている状態のこと。
たとえば「犬」「いぬ」「イヌ」はどれも同じ意味ですが、それぞれ違う表記のされ方をしているので表記ゆれです。
日本語は英語と異なり、漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字・記号など様々な表記を使う(世界的に見て)独特な言語。そのため表記ゆれが起こりやすくなってしまうのです。
よくある表記ゆれリスト
ここではよくある表記ゆれをご紹介しましょう。
送りがなの表記ゆれ
行う、行なう |
引っ越し、引越、引越し |
分かる、分る |
名残惜しい、名残り惜しい |
など。最も多い表記ゆれです。
この表記ゆれをする場合、そもそも正しい送りがなの基本ルールを把握していないことが考えられます。ただ世間一般に普及した送りがな、どちらも正解の送りがなもあるため、迷いやすいかもしれません。
数字の表記ゆれ
午後12時 |
午後12時 |
午後十二時 |
午後一二時 |
正午 |
など。
一般的には算用数字かつ半角で表記しますが、レギュレーションによって指定されている場合も。また「正午」のような書き方もあるので、混在しないように注意しましょう。
カタカナ・英単語の表記ゆれ
WEB、web、Web、ウェブ |
Google、google、グーグル |
Yahoo!、yahoo、ヤフー |
など。
固有名詞はなるべく正式な表記を心がけましょう。例で言えば「Google」「Yahoo!」です。
常用漢字・常用外漢字
高、髙 |
国、國 |
沈殿、沈澱 |
など。
この場合、固有名詞などでない限り、一般的に使われる常用漢字を中心に使うようにします。
読み由来・省略による表記ゆれ
スマホ、スマートフォン |
ダイヤ、ダイヤモンド、ダイア、ダイアモンド |
ネット、インターネット |
ヴェニス、ヴェニス |
など。
世間一般に普及している略称もありますが、文章中では表記がバラバラにならないように注意しましょう。ニュースやビジネスなど、硬い文章ではあまり略称を使いません。
外来語の表記ゆれ
メイン、メーン |
バイオリン、ヴァイオリン |
サーバー、サーバ |
など。
外来語は音をそのままカタカナに当てはめているため、表記に迷うことも多いかもしれません。この場合「メイン」「サーバー」など、世間一般で使われることの多い表記を使いましょう。
日本語表記、外来語表記
会議、ミーティング、カンファレンス |
割り当て、アサイン |
同意、コンセンサス |
相乗効果、シナジー |
など。
要は、日本語で言うか・外来語で言うかです。どちらにせよ同じ意味なので、必ず統一すること外来語ばかりの文章は、たとえ表記が統一されていても読みにくく理解もしにくいので、日本語に言い換えられるなら日本語がおすすめ。
文末の表記ゆれ
〜だ、〜です |
常体か敬体かの違いです。文末に表記ゆれがあると、文章全体のトンマナが崩れてしまいます。
表記ゆれに注意すべき理由
表記が違えども確かに同じ意味の言葉ですし、難しい表記じゃない限り誰でも読み手も意味がわかります。では、なぜ表記ゆれには注意し、文中で統一しなければいけないのでしょうか?
その理由は次の3つです。
- 文章が読みにくくなる
- 内容の理解を阻害する
- SEOに悪い影響があることも
それぞれ解説します。
文章が読みにくくなる
単純に、表記ゆれがあると文章が読みにくくなります。例えば、次の文を読んでみてください。
わさびが好きな人もいれば嫌いなヒトもいるように、散歩が好きな犬もいれば嫌いなイヌもいる。
文章の意味はわかりますが、「人」と「ヒト」、「犬」と「イヌ」という違った表記が混在しているだけで読みにくくなっています。表記ゆれを見つけた時点で詰まる人もいるでしょう。
文章を読む相手(ユーザーや取引先、読者など)に対する配慮として、スムーズに読めるように表記を統一しましょう。
内容の理解を阻害する
表記がバラバラであることは、読者にとってストレスです。
- 「人」と「ヒト」で表記が違うけど、何か意図があるのかな?
- 「会議」と「ミーティング」って同じ意味で使われているように見えるけど何が違うんだろう?
など、表記ゆれの内容に気を取られてしまい、文章内容の理解が阻害されてしまいます。こうしたストレスを与えたり、疑問を与えたりすると、読者は離脱してしまいかねません。
SEOに悪い影響があることも
※下記は「スマホ」と「スマートフォン」の表記ゆれを例に挙げていますが、現在は「スマホ=スマートフォン」という認識を多くの人が持っており、Googleもそれを理解しています。まだ市場が成熟しきっていないワードでは下記のような現象が起こり得るという可能性について説明していますので、ご留意ください。
「スマホ」と「スマートフォン」では、同じ意味でも検索ボリュームが違います。SEOでは検索ボリュームを元にキーワードを決めるため、キーワード選定の時点で誤差が生まれてしまう可能性も。
また文章内で違う表記が混在している場合、Googleはそれぞれを別の単語として認識してしまいます。「スマホ」のキーワードを狙いたいのに「スマートフォン」と表記してしまうと、その単語は「スマホ」としてカウントされません。
SEO対策という意味でも、表記は統一させることが重要なのです。
表記ゆれへの対策方法
表記ゆれの厄介なところは、書いている本人は自分で気付きにくいこと。では、表記ゆれをしないためにどのような対策をすれば良いのでしょうか?
読者に合わせて表記を決めておく
文章を書く前に、読者に合わせて表記を決めてしまいましょう。わかりやすい例が「です・ます調」と「だ・である調」です。
読者が若い女性、ファッションや美容について書くなら、です・ます調で柔らかい雰囲気に。逆に、ビジネスマンに経済ニュースを伝えるなら「だ・である調」でビジネスライクに。
わかりやすい例を挙げましたが、漢字の表記、ローマ字の表記なども同じです。読者にとってどんな表記が最も適しているのかを考えてみましょう。
迷ったときはレギュレーションを確認
どの表記が適しているのか、どうしても迷うこともあるでしょう。そのときは、都度レギュレーションを確認しましょう。レギュレーションには表記ゆれがある際の指定も明記されています。
レギュレーションが無い場合で、どの表記が良いのか迷ったら『記者ハンドブック』を参考に決めると良いでしょう。
あるいは、その言葉をGoogleで検索し、検索ボリュームを見比べるという方法も。検索ボリュームが、その記事における最適な表記の仕方を教えてくれることもあるのです。
文章を書いたら目視でチェック
文章を書き終えたら、そのまま提出・送信・アップロード等するのではなく、目視でチェックすること。今すぐにできる表記ゆれの見つけ方です。
書き手がチェックするのもいいですが、第三者に見てもらえるなら、その方が他人視点で表記ゆれを見つけやすいです。
書き手自身でチェックする場合、1時間〜1日ほど原稿を寝かせてから読み返すのがおすすめ。一旦原稿から離れることでクールダウンになり、書き上げ直後よりも表記ゆれに気付きやすくなります。
表記ゆれチェックツールで見つける
目視でのチェックが大変だったり、時間が取れなかったりする場合、表記ゆれチェックツールを使うと簡単です。
WordやGoogleドキュメントのスペルチェック機能も、表記ゆれチェックツールとして使用可能です。その他には次のものがあります。
- 無料でそこそこ使える「PRUV(プルーフ)」
- Chrome拡張機能「文章校正と表記ゆれチェックツール」
- 有料だけど文章を磨く多彩な機能「文賢」
自分では気付きにくい表記ゆれだからこそ、こうしたツールに頼ってみるのも有りですね。
日頃から同じ表記のクセをつける
表記ゆれを防ぐ最も有効な方法は、日頃から同じ表記のクセをつけることです。
ほとんどの社会人は何も考えなくても「犬」と書くように、すでに身に付いた自分の“表記のルール”があるはずです。
いつもバラバラの表記なら1つに決めてしまい、次からは同じ表記にするようにクセ付けましょう。いつも「サーバ」と書いてしまうのなら、そのクセを把握すれば次からは「サーバー」と書くように矯正だってできます。
自分だけの“表記のルール”を決めると、表記ゆれは大幅に減るでしょう。
表記ゆれには自分で気付きにくいからこそ対策を
日本語にはたくさんの表記の仕方があるので、同じ意味の言葉に対して表記ゆれが生まれてしまうのは仕方のないこと。
ただ、表記ゆれは自分で気付きにくいからこそ、日々意識したりルールを決めたりして、対策を講じる必要が有ります。毎回表記ゆれのチェックが大変なら、表記揺れチェックツールを使うのも良いですね。
表記ゆれを無くし、読みやすい文章を書くように心がけましょう。