モノを売る、認知を広めるなどのマーケティング活動はとても幅広いものです。これまで提唱されてきたフレームワークは時代の変化とともに進化してきました。
そして現代、「プッシュ型マーケティング」と「プル型マーケティング」という2つの切り口が出来上がったのです。
今回はプッシュ型/プル型の違いや手法について解説していきます。
マーケティングミックスの中のプッシュ型とプル型とは
マーケティングミックス(4P)は次のの4つで構成されています。
- 製品(Product)
- 価格(Price)
- 流通(Place)
- プロモーション(Promotion)
その中の「プロモーション」は、顧客に製品の魅力を伝えてニーズを作り出し、販売するパートです。
このプロモーション活動のひとつに「プッシュ型」と「プル型」があります。
プッシュ型のターゲットと効果
プッシュ型マーケティングは、企業から直接見込み客に働きかけて購入や契約を促す戦略です。
見込み客の背中を押す(プッシュ)とイメージすると良いでしょう。
プッシュ戦略のメインターゲットは、すでに自社や自社製品を認識していて、まだ購入にまで踏み出せていない人です。
見込み客によって
- 興味がある程度
- 必要と感じている(が、他と比較検討したい)
- 今すぐにでも欲しい(が、事情によりまだ購入に至っていない)
などの段階は違えど、ニーズはある状態なので、プッシュ型マーケティングで直接働きかければ購入を促せます。
プル型のターゲットと効果
プル型マーケティングは、パブリシティや啓蒙活動などにより、見込み客が企業に対して自発的にアプローチしてくるように仕掛ける戦略です。
見込み客を惹きつける(プル)というイメージですね。
プル型マーケティングの特徴として、消費者に浅く広くリーチできることが挙げられます。
そのため、まだ自社や自社製品を知らない人、ニーズを感じていない人などをターゲットにできます。
さらに、消費者は「押し売りされた」感覚ではなく、消費者自身が「選んだ」という感覚を持てるため、満足度も高いです。
多くの人が広告や営業をかけられることを嫌う現代では、重要なマーケティング戦略のひとつとなっています。
プッシュ型マーケティングの手法
プッシュ型マーケティングには「売り込む」「飛び込み営業する」などのマイナスイメージを持つ人も多く、時代錯誤的だと感じる人もいるかもしれません。
しかし、プル型で集客はできても購入まで至る見込み客は少なく、ビジネスでプッシュ型を完全に断つことはできないのです。
現代に合ったプッシュ型マーケティングを行い、従来の時代錯誤的イメージをアップデートしましょう。
直接営業
プッシュ型マーケティングで代表的なのが、直接営業をかけるという方法です。
とはいえ、飛び込み営業や訪問販売は労力のわりに成果を得られない営業方法となってしまいました。
BtoCの場合は、店舗にやウェブサイトに訪れたお客様への接客が重要なポイントです。
今も昔も、目の前のお客様のニーズを知り、満足して帰ってもらうことが商売の要であることに変わりはありません。
BtoBなら、顧客リストに電話をかけるテレマーケティングやお問い合わせをした見込み客への提案などが挙げられます。
SNSを用いたプッシュ型情報発信
他のツールにはないSNSの強みといえば、拡散力の強さ。
より広くリーチしたいなら、SNSで商品やサービスの特徴・魅力・使ったときに得られる利益・将来性などを紹介しましょう。
その投稿は実際に使ったユーザーだけでなく、購入を検討している人、誰かの役に立ちそうだと感じた人もシェアしてくれます。
SNSでどのように口コミが広がるかを知っていれば、プッシュ型のSNS活用でもしっかりと成果が出るはずです。
プッシュ型のWeb広告
プッシュ型のWeb広告には昔からある純広告・ディスプレイ広告などが挙げられます。
しかし現代はほとんどの消費者が広告を無視するようになっているため、アドネットワークを利用して自社サービスと関連性の高いサイトに絞って広告を配信する工夫が必要です。
消費者のWeb上の足取りから興味関心の高い分野を解析し、消費者・広告を配信するサイト・自社サービス(広告)の3つの親和性がピッタリと合致したとき、その広告は大きな効果を得られるでしょう。
具体的には
- YDN:関連キーワードのサーチターゲィング広告
- GDN:カスタムインテントオーディエンスを利用した広告
- 競合サイトを訪れたユーザーへのディスプレイ広告(ライバルマーケティング)
といった手法でのアプローチが考えられます。
メルマガ・ダイレクトメール
直接会わない営業手法として、メルマガやダイレクトメールもあります。
会員登録や資料請求などで見込み客のリストを集めておけばその後アプローチしやすいです。
メルマガはスパムメールにならないようにきちんと同意を得た上で配信し、見込み客が興味を持ちそうな内容にすると良いでしょう。
ステップメールという形で段階的に配信するのもおすすめです。
ポストに投函されるハガキや手紙などのダイレクトメールは開封されずに捨てられることも多いです。
そこで目に入る部分に興味を引くフレーズを入れたり、封筒の中に重さや手触りを感じられるアイテムを入れたりなどの工夫を仕掛けてみましょう。
プル型マーケティングの手法
誰もが簡単に低コストで情報発信ができるようになった今、プル型マーケティングが注目を浴びています。
しかし、それゆえに情報過多になり、自社が発信する情報が埋もれてしまうという課題もはらんでいることを忘れてはいけません。
ではどんなプル型マーケティングを行えばいいのでしょうか。
Webサイト等での啓蒙活動
プル型マーケティングの手法として多くの企業が取り入れているのがWebサイト等での情報発信、啓蒙活動です。
コンテンツマーケティングを行うオウンドメディアが近年急激に増加していますが、これはまさにプル型マーケティング戦略だと言えるでしょう。
啓蒙活動をすることで自社の考え方に共感する人が現れ、自社に興味を持つ人やファンになる人が出てきます。
ブランドイメージアップにも効果的です。
SNSを用いたプル型情報発信
オウンドメディアよりもファンづくりに強いのがSNSです。
発信すればリスポンスがあり、コミュニケーションを取ることでユーザーに親近感の湧く存在だと認識されます。その“親近感”こそが、ファンづくりの足がかりなのです。
SNSでの情報発信はシェアされることでフォロワーが他のフォロワーを連れてくるという現象も起きます。その現象を起こすには、共感を得られるコンテンツを発信しましょう。
さらにユーザーのリアルな意見を聞くことができるため、商品開発に意見を取り入れることでより良い商品づくりができるでしょう。
プル型のWeb広告
プル型のWeb広告には、消費者が検索したキーワードと連動して検索結果画面に表示されるリスティング広告があります。
キーワードを入力して検索行動をするユーザーはすでに興味関心がある状態ですから、適切なキーワードを設定できればリスティング広告も大きな効果を得られるでしょう。
また検索行動やSEOなどの観点からいえば、アフィリエイト広告への出稿なども有効な場合があります。
セミナーや講演会の開催
情報発信・啓蒙活動の一環として、セミナーや講演会、ワークショップなどの開催もおすすめです。
オンライン・オフライン問わず自社が持つ専門知識を広めることで「勉強になりました!」「参考にさせてください!」と前向きな見込み客が集まってきます。
ただセミナーを開催するだけでなく、その背景にきちんと商品・サービスを用意しておくことで「御社の商品についてなんですが…」とお問い合わせを増やすことも可能です。
プッシュ型とプル型のバランスの良い組み合わせが必要
見込み客はプッシュ型だけで売り込むと逃げ腰になり、逆にプル型の待ちの姿勢だけでは購入や契約まであと一歩足りません。
プッシュ型・プル型それぞれが利点や課題を持ち、片方の利点がもう片方の課題を補うという相関関係にあります。
どちらかに偏ったマーケティングを行うのではなく、プッシュ型+プル型のバランスの良い組み合わせが必要になるでしょう。