2020年になって各企業のテレワーク導入が急激に進みました。とは言え、ほとんどの企業は新型コロナウイルスの影響により必要に駆られての導入でしょう。
「『テレワークは生産性が上がる』と聞いて導入してみたものの、実際に始めてみると業務効率が下がった…」という企業も多いはずです。
かといって、テレワークを辞めるのは時期尚早かもしれません。今後事業のオンライン化が求められる中、テレワークへの適応が事業成長のカギになります。
そこで本記事では、テレワークを効率化し、生産性を最大化するためのコツをご紹介します。
テレワークの実態
政府からの緊急事態宣言により、やむを得ずテレワークを導入した企業は多いかと思います。
本記事の執筆時点は2020年8月。緊急事態宣言が解除されてからおよそ2ヶ月、そしてテレワーク導入からは3ヶ月以上が経過しましたが、その後テレワークの実態はどうなっているのでしょうか?
アンケート調査の結果6割が「効率下がった」
日本生産性本部調査は在宅勤務に関して、以下のような調査を行いました。(対象:全国の20歳以上の雇用者1100人)
本調査によると「自宅での勤務で効率が上がったか」という質問に対し、「やや下がった」が41.4%、「下がった」が24.8%と、約6割が効率の低下を実感しています。
社員の効率が下がれば生産性低下にもつながるでしょう。仮に効率が下がっても生産性を維持するために労働時間が伸びてしまえば、社員の満足度低下につながりかねません。
テレワークで業務効率が落ちる理由とは?
ほとんどの人は、これまで仕事をするための「会社」と、休むため・プライベートのための「家」を切り離してきました。自宅でテレワーク勤務をすると会社と家の境界線が薄れ、家では仕事モードに入りにくくなってしまうことが、効率性が落ちる最大の要因だと言えるでしょう。
- 誰も監視する人がいない
- 周りに同じ仕事をしている人がいない
- すぐそばにゆっくり休めるソファもベッドもある
- 書斎がなくダイニングテーブルでテレビを聞きながらやっている
- 家に家族がいて乱入される
このような状態では集中力は保てません。勤怠管理はあれど実質的には時間の縛りはないため、夜にまとめてやろうと思えば後回しにだってできます。しかし、夜になって実際にデスクに向かう人は何%でしょうか?
また社員が孤独感を感じやすいことも、業務効率の低下に繋がります。誰とも会わずに一人黙々と仕事をして、張り合いがなくなる…こうした状況は、週5日テレワークにしたことによる弊害なのです。
テレワークの生産性と効率を最大化するコツ
テレワークの効率を上げ、在宅勤務でも社員1人ひとりの生産性を最大化するためのコツをご紹介します。
週2-3日の出社日を設ける
実はテレワークで良い効果が出るのは、週に2-3日の出社日があったときです。週5日勤務だとすると、テレワーク:出社=3:2または2:3の割合です。
毎日出社するのは面倒だけど、毎日家に缶詰状態なのも精神的にダメージを負います。出社することで気持ちを切り替えたり、人と会って元気をもらったりできるのが人間です。各自で出社日を設けるようにし、在宅日と出社日によって業務内容を変えてみるのもいいでしょう。
また人によってはテレワークが肌に合わない人もいます。特に長年オフィスで働いてきた40代〜60代は、オフィスや現場で働くことがやりがいになっているのです。
そうした社員にも対応できるように、テレワーク制度は必須ではなく選択肢の1つとして提供するのが賢明です。
成果で評価する
1日の労働時間は8時間でも、生産性が高まっている時間はほんの4-5時間です。特に家で仕事モードになれない場合には、もっと短いかもしれません。
そこで上司は労働時間で評価するのではなく、成果によって正当な評価を行うようにしましょう。働いている姿が見えないからこそ、成果評価制は働く側のモチベーションになります。
そのためには、「Aまでの仕事ができたら〇〇」「Bまでできたら△△」など、明確な評価基準を定める必要があるでしょう。こうすれば長時間ダラダラ働くよりも「今日はBまで終わらせて、あとはゆっくりしよう」といったメリハリのつけ方ができるのです。
コミュニケーションがとれる環境を整える
テレワークで人と会わないからこそ、意識してコミュニケーションをとらなければいけません。コミュニケーションをとる大きなメリットは3つ。
- 業務連絡がしやすい
- 他の社員の変化や不調に気付きやすい
- 連帯感がありモチベーションが高まりやすい
これらはオフィス勤務だった頃には当たり前にできていたこと。在宅勤務でも実現できるように、コミュニケーション環境を整えましょう。
コミュニケーションのやり方として、「報連相」を徹底する方法があります。作業を1つ終えるごとにグループチャットで報告し、それを見た人はアドバイスや連絡事項などの共有をするのです。上司なら評価のチェックもできるでしょう。
グループチャットは常に賑わっている状態になるため、孤独感はなく連帯感を感じて仕事に取り組めるようになります。
自宅以外の仕事環境の確保
自宅以外の仕事環境として、サテライトオフィスやシェアオフィスのような「サードプレイスオフィス」を確保することも、効率アップに有効です。
特に狭い家・部屋数の少ない家で暮らしている人には書斎がありません。家族が集まるリビングやダイニング、横になりたい欲求を掻き立てる寝室等で仕事をするしかないのです。家族、特に子供がいれば、集中力は途切れ途切れの状態になります。
一方でサードプレイスオフィスなら、会社のオフィスと同じような環境で働けます。社員に提供できるサードプレイスオフィスを作ったり、割引券を発行したりして、気軽に自宅以外の場所で働けるようにしましょう。
社員の自主性を育てる
社員の自主性を育て、前向きな姿勢で自ら仕事に取りかかれるようにすることをゴールにしましょう。社員が自ら行動すれば、ダラダラ働くことがなくなり集中力も高められるのです。
具体的には、社員が得意とする業務を任せること、社員の得意分野や強みを伸ばすような業務を与えることです。
オフィス勤務のときにはチームで動いていたため、各々が自分の役割を持っていましたし、苦手分野は誰かがサポートできる環境でした。
テレワークになり1人で仕事をするとなった場合、簡単にサポートは頼めません。だからこそ得意分野や強みを活かした業務を任せ、自主性を育てていくのです。
自主性のある社員は率先して他の社員のサポートもします。お互いに助け合うための自主性でもあるのです。
テレワークを効率化するためのグッズ・ツール
テレワークを効率化するためにグッズやツールに頼ってみるのもいいですね。在宅勤務に役立つグッズから、プロジェクト管理やコミュニケーションに役立つツールまでご紹介しましょう!
業務を効率化するグッズ
在宅勤務ではノートパソコンを使う人がほとんどでしょう。また通勤がなくなった分運動量も減るため、運動不足により体力が低下します。
そこで、在宅勤務者が優先して導入したいグッズをご紹介します!
肩こり解消・姿勢改善:ノートパソコンスタンド
ノートパソコンでは目線が下がり、肩こりや猫背になってしまいます。大きなディスプレイがあれば便利ですが、ない場合にはノートパソコンスタンドを用意しましょう。
目線が上がることで肩こりが楽になり、猫背が治って姿勢改善できます。
集中力アップ:スタンディングデスク
立って仕事することで身体中に血液が行き渡るようになり、集中力がアップします。そのためのスタンディングデスクを導入するといいですね。
おすすめは座り仕事・立ち仕事の両方に対応できる昇降式です。ただ、もし家に立ち仕事ができる高さの棚などがあれば代用してもいいでしょう。
腰痛改善・運動不足解消:バランスボール
実はふかふかの快適なイスほど、業務効率が低下してしまいます。姿勢が崩れてしまうためです。姿勢を正すイスか、バランスボールを使うのがおすすめ。
バランスボールは自然と背筋が伸び、下半身にも力が入ります。すると腰痛を改善し、少しでも筋肉を使うことで運動不足を解消できるのです。自然と背筋が伸びるため姿勢改善にも役立ちますよ。
ただし長時間バランスボールに乗っていると前ももが張り、疲れやすくなるので、イスと交互に使うようにしてください。
複数画面の作業をラクに:デュアルモニター
業務内容によっては、複数のブラウザやタブ、アプリ等を行き来しながら仕事しますよね。
そんな業務をラクにするのがデュアルモニターです。Amazonでは「モニター」や「ポータブルディスプレイ」と検索すれば見つけられます。
画面を2〜3個用意しておくだけで、かなりの効率アップになるはずです。
業務を効率化するツール
テレワークにはツールが欠かせないため、すでにいくつか導入している企業も多いかもしれません。ここでは、業務効率化に役立つツールをご紹介します。必要であれば追加で導入してみてください。
Web会議システム
ビデオ通話をしながらの定例会議や業務報告にはWeb会議システムが必須。テレワークにはZOOMを利用している企業も多いため、ここではZOOM以外のツールをご紹介します。
Google Meet
Googleが正式に提供しているビデオ会議ツールです。Googleのアカウントがあればすぐに利用可能。安全性の高さやリンクを共有するだけの使いやすさもポイントです。
Skype
世界中に大勢のユーザーを持つSkype。法人向けはOffice365アカウントと連携し、カレンダーや会議メモなどと一緒に利用できます。有料プランでは携帯電話・固定電話への発信も可能です。
チャットツール
連絡を取り合うためのチャットツールもテレワークには欠かせません。LINEでも代用可能ですが、ビジネス向けに開発されたツールの方が使い勝手がいいでしょう。
Chatwork
初めてのユーザーでも直感的に操作できるUIが特徴。プロジェクトやチームごとにグループチャットを作ったり、グループごとにタスク管理ができたりと、ビジネス利用には困りません。
Slack
様々な機能が欲しいときにはSlackがおすすめです。プラグインで拡張でき、利用できるコマンドも豊富。仕事効率化はもちろん、複数人との連絡の取り合いもラクになります。
グループウェア
グループウェアはタスク管理やファイル共有、スケジュール管理などを統括したツールのことです。個別にサービスを利用するよりも統括した方が連携しやすく、いくつもアプリやタブを開いておく必要はありません。
G Suite
G Suite(ジースイート)はGoogleが提供するクラウド型の法人向けグループウェアです。先述したGoogle MeetやGmail、Googleカレンダーなど仕事に必要なものがひとまとめになっています。
サイボウズ Office
サイボウズ Officeは中小企業国内シェアNo.1のグループウェア。クラウド型・オンプレミス型から選択できます。チームとのスケジュール共有やワークフローの可視化、掲示板など様々な機能が充実しています。
テレワークは逆に業務効率が落ちやすい!試行錯誤して効率アップを目指そう
成功事例の見様見真似でテレワークを導入しても、次々と課題が出てくるものです。課題を解決するためには、現場の状況をしっかりと理解しながら一つひとつ対応していくしかありません。
管理者だけでなく、在宅勤務者自身も意識しなければならないのが効率低下の課題です。本記事で紹介したコツやツールを使いながら試行錯誤し、効率アップを目指しましょう。