SNSやLINEが主要な連絡ツールになった現代でも、メールを使ったコミュニケーションは衰退せず生き残っています。メールは企業と個人、ブランドと消費者がつながるツールとしての立場を確立しているのです。
だからこそ企業のマーケティング担当者は、メールマーケティングを押さえておく必要があります。
今回はメールマーケティングの基本から、戦略・配信手順を学んでいきましょう。
メールマーケティングとは
メールマーケティングとは、文字通り「メール(eメール)」を用いてマーケティングを行うことです。
メールマーケティングの中にも、メルマガやステップメールなどさまざまな施策・手法がありますが、そのどれもが企業からアプローチをすることにより、消費者自らに行動を起こしてもらうことを目的としています。
メルマガとの違い
メールマーケティングと聞くとメルマガを想起する人が多いかもしれません。実はメルマガはメールマーケティングの施策のひとつでもあります。
ただし、メルマガを配信する目的が明確になっていなければ“マーケティング”にはならず、ただの“ブログのメール版”になってしまう点に注意しましょう。
またメルマガとメールマーケティングのその他の施策には次のような違いもあります。
メルマガ:配信対象者に同じ内容のメールを送る
メールマーケティングのその他の施策:ユーザーにあわせて最適化されたメールを送る
細かな違いではありますが、よりマーケティング効果が高まるのは、その他の施策であることは言うまでもありません。
メールマーケティングの重要性
SNSやLINEが普及した現代でも、メールは顧客と企業とのコミュニケーションツールとしてまだまだ現役です。
サイトへの会員登録、本人確認や個人認証、ファイルの送受信、あるいは仕事上の連絡など、メールアドレスが求められる場面が数多くあります。
そしてメールはSNSのタイムラインとは異なり、迷惑メールフォルダに振り分けられない限り見落とされる可能性が低いです。またLINEの企業アカウントのように、通知が来ても即削除されることもありません。
つまり「メールが来る=何か重要な知らせかもしれない」と認識している消費者が多いのです。
そんなメールを利用してマーケティングを行うことは、使い方によってはSNSやLINEよりも大きな成果を得られる可能性を秘めています。
今やビジネスの世界ではメールマーケティングはポピュラーな手法であり、消費者や顧客に送るメールを最適化することが最低限求められているのです。
メリット・デメリット
ここではメールマーケティングのメリットとデメリットをまとめました。
【メリット】
- 低コストで手軽かつスピーディーに始められる
- 消費者に直接アプローチできる
- 指標設定や効果測定がしやすい
メールマーケティングを始めるために必要なものは、メールアドレスと配信用ツールだけ。低コストで運用しやすく、かつ顧客に直接アプローチできるプッシュ型マーケティングとなっています。
【デメリット】
- 配信先リストを集める必要がある
- メールの開封率は低い
対して、リストがないと配信できない、配信できても開封率が低く、効果が出るまで長期間かかることがあるなどのデメリットもあります。
企業からのメールの開封率は15%〜25%と言われており、開封してもらうためには工夫が必要です。
メールマーケティングの基本戦略
メールマーケティングの施策は主に4つあります。
- メールマガジン(メルマガ)
- ステップメール
- セグメントメール
- 休眠発掘メール
それぞれの違いや基本戦略を押さえ、目的に合わせて適切な戦略を選びましょう。
メールマガジンで集客・エンゲージメント強化
メールマガジンとは、企業やショップから顧客に対して一斉に配信されるメールのことです。メルマガを配信する顧客の分類や送り分け等は行いません。
メルマガにはキャンペーン告知、新商品情報などを掲載するほか、ちょっとした小ネタやお役立ち情報などを載せるメルマガも増えています。
情報発信により集客し、顧客の信頼を獲得してエンゲージメントを強化します。販売促進からファンの育成まで、幅広い目的をカバーできるのがメルマガの魅力です。
しかし、顧客が読みたくなる工夫をしない限り、開封されないままゴミ箱行きとなることもしばしば。特にタイトルには、クリックしたくなるようなキーワードや情報を入れる必要があります。
ステップメールで顧客の温度感を高める
ステップメールとは、顧客が商品を検討している度合いやアクションに応じて、あらかじめ用意しておいたストーリーに沿ったメールを配信する手法です。
たとえばAさんがショップでお買い物をした場合、次のスケジュールでステップメールを配信します。
購入の翌日:お買い物のお礼
購入から3日目:お伺いと使い方の紹介
購入から7日目:購入商品と関連した商品をレコメンド
購入から10日目:限定クーポンを提供
また、Bさんがホームページから資料をダウンロードした際には、連続で次のようなメールを配信できます。
1日目:資料ダウンロードのお礼
2日目:製品の基本情報を紹介
3日目:製品を利用したユーザーの成功事例
4日目:製品購入への誘導
どちらのステップメールにも共通しているのは、徐々に顧客の温度感を高めていることです。
お礼を伝え、情報を提示し、他の商品に対する期待値を上げ、最後に購入へと誘導します。
1通で完結するメルマガと異なり、数回に分け順序を追って配信していくのがステップメールです。
セグメントメールで開封率UP
セグメントメールとは「ターゲティングメール」ともいって、設定した条件に合わせて見込み客を分類し、そのターゲットに合わせた最適なメールを送り分ける手法です。
見込み客の分類方法はいくつかあります。
- 年齢、性別、居住地、職業などの属性で分類
- 「商品購入」「資料ダウンロード」などアクションで分類
- 価格ページを見る+5点、資料請求する+10点などスコアリングで分類
たとえば「20代、女性、コスメを購入」や「スコア70点以上の管理職の男性」のように、いくつかの分類方法を組み合わせてターゲットを決めることも可能です。
見込み客に合わせたメールを送り分けできるため、メールの開封率が上がり、なおかつ成果にも結びつきやすいのが特徴。
さらに、複雑にはなりますがセグメント別にステップメールを分けて配信することもできます。
休眠発掘メールで交流を再開
休眠顧客とは、一定期間活動やアクションのない顧客のこと。そんな顧客に対してアクションを促す目的で配信されるのが休眠発掘メールです。
過去に一度アクションがあったにもかかわらず休眠してしまう理由は、
- 迷惑メールフォルダに振り分けられている
- タイトルだけ見てすぐに削除されている
など、そもそも内容を見てもらえていない可能性が高いです。
そのため開封してもらえるようにタイトルや冒頭部分を変更したり、迷惑メールフィルタに引っかからないように文言を調整したりといった工夫が必要。
あらゆる工夫をしてメールが開封されたり、メール内のリンクがクリックされたりなどの行動が見られれば、そこからステップメールやセグメントメールにつなげていくと良いでしょう。
メールマーケティングの配信手順
実際にメールマーケティングを行う際には、かけたコストや時間以上の効果を得たいですよね。そのためには、しっかりとポイントを押さえて手順に沿って配信していく必要があります。
ここでは、どのメールマーケティング施策にも共通している基本の配信手順を見ていきましょう。
1.目標・ターゲット設定
まずはメールマーケティングの目標とターゲットを設定します。
- 何のために配信するのか
- 配信によってどんな効果を得たいのか
- 誰に向けて配信するのか
この3つを、なるべく数値化し、KPIに落とし込みましょう。
商品やサービスの認知度を高めたいならKPIは開封率、商品やサービスの購入につなげたいならKPIはクリック率などが適切です。
特にセグメントメールでは、ターゲット設定が何よりも重要です。ターゲットと配信する予定のメール内容の親和性が取れているか、客観的にチェックしましょう。
2.配信リストの準備
配信リストがないことにはメールは配信できません。スムーズにメール配信をできるように、配信リストは事前に準備、かつ最新のデータにアップデートしておきましょう。
配信リストはすでに自社が持っている顧客リストを利用しても良し、あるいは業者から購入することもできます。
またメールマーケティングは質も大事ですが、何よりも量がないと最初に決めた目標を達成しにくくなります。自社の顧客リストだけでは配信数が足りないと感じたら、早めに追加のリストを集めるようにしましょう。
リストの集め方・作り方は以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
3.メール作成・配信
次にメールのコンテンツを作成し、配信します。とはいえ1からコンテンツを作る必要はなく、自社の商品情報やホワイトペーパーなどを活用してもかまいません。
メルマガ等でよくあるコンテンツが、ブログの一部を抜粋し、そのままブログへ誘導する方法です。抜粋で興味を引き、「続きが気になる」という状態にすることで、メール内のリンクのクリック率を上げます。
すでに持っているコンテンツをマルチユースして、メールマーケティングの効率を高めていきましょう。
4.効果測定・分析・改善
メールマーケティングの効果測定では、次の5つのKPIを基準にします。
- 不達率:アドレスの不備などにより届かなかったメールの割合
- 開封率:届いたメールのうち開封された割合
- クリック率:届いたメールのうち、メール内のURLがクリックされた割合
- 反応率:開封されたメールのうち、メール内のURLがクリックされた割合
- 講読解除率:届いたメールのうち、講読解除された割合
「届いたメール」と「開封されたメール」とで母数が異なるため注意してください。
KPIを元に数字を割り出し、開封率が低いのか、そもそも不達なのか、開封されてもなぜアクションがないのかなど、課題を見つけていきましょう。
何度かメール配信・分析・改善を行うことで、どのターゲットにはどんなメールが適しているのか見えてくるはずです。
低コストで始めやすいメールマーケティング
メールマーケティングは他のマーケティング手法と比べると、比較的低コストで、顧客リストさえ持っていればすぐに始められます。
全体的に開封率が低いなどの課題はあるものの、試行錯誤や改善を繰り返しPDCAを回すことで、かけたコスト以上の効果を得られるようになります。
まだ顧客に配信するメールの最適化をしていない企業やショップは、ぜひメールマーケティングを実践してみてくださいね。