今や過去のものと考えられがちな「ブラックハットSEO」ですが、Web担当者やSEO担当者は基礎知識として押さえておくことが大切です。
かつてのブラックハットSEOとはどのようなものだったのか、Googleはどのような対策を行ってきたのか、その内容や経緯を解説。
また、今後のSEO対策の指針となるホワイトハットSEOの考え方についても説明します。
ブラックハットSEOとは?
ブラックハットSEOとは、ひとことで言えば「不正な手法によるSEO」です。
Googleはアルゴリズムに沿ってWebサイトの順位を決定。またWebマスターに対しては「ウェブマスター向けガイドライン(品質に関するガイドライン)」を提示し、これに沿うことを推奨しています。
ブラックハットSEOとは、アルゴリズムの裏をかき、ガイドラインにも反するようなスパム的手法を指しています。
検索エンジンとユーザーの双方を騙し、不正に検索順位を上昇させようというのが、ブラックハットSEOの狙いなのです。
もっとも、アルゴリズムがどんどん改善されている現在では、こうしたブラックハットSEOはほぼ無効な方法となっています。
ブラックハットSEOがかつて横行した理由
今でこそアルゴリズムによって無効化されたブラックハットSEOですが、かつては非常に多用されていた頃もあります。とくに2000年代頃に横行し、当初は不正という位置づけでもなく、むしろ当たり前のSEO手法として実施されていました。
その最大の理由は、たいした手間をかけずに高い効果を得られるというコストパフォーマンスの良さにあったと言えるでしょう。
一定のやり方を踏襲したり、専門業者に任せるだけで、コンテンツの内容に関係なく上位表示させることが可能。しかも、ペナルティもとくになかったのですから、猫も杓子もブラックハットSEOという流になったのも頷けるというものです。
現在はペナルティの対象に
当時のGoogleのアルゴリズムは、今に比べるとまだまだ未成熟で、ルールの穴も多かったと言えます。そして、WebマスターやSEO業者の悪意がルールを上回った結果が、かつてのブラックハットSEOの横行なのです。
しかし、アルゴリズムは常に、そして何度も改善を重ねてきています。
現在ではブラックハットSEOに相当する手法は無効化され、ペナルティの対象にもなっています。
順位が低下するだけでなく、重い処分の場合にはインデックスそのものが削除されることもあるため、ブラックハットSEOは「やっても無駄などころか、かえって悪化するSEO手法」に成り果てました。
具体的なブラックハットSEOの手法
ブラックハットSEOに相当するような手法については、現在はGoogleが「ウェブマスター向けガイドライン(品質に関するガイドライン)」の中で「次のような手法を使用しないように」と明示しています。
- コンテンツの自動生成
- リンクプログラムへの参加
- オリジナルのコンテンツがほとんどまたはまったく存在しないページの作成
- クローキング
- 不正なリダイレクト
- 隠しテキストや隠しリンク
- 誘導ページ
- コンテンツの無断複製
- 十分な付加価値のないアフィリエイト サイト
- ページへのコンテンツに関係のないキーワードの詰め込み
- フィッシングや、ウイルス、トロイの木馬、その他のマルウェアのインストールといった悪意のある動作を伴うページの作成
- リッチスニペットマークアップの悪用
- Googleへの自動化されたクエリの送信
これだけでは初心者にはちょっとわかりにくいので、かつて実際に多用された手法を中心に見ていきましょう。
なお、繰り返しになりますが、これらの手法は現在は無効化されペナルティ対象になっています。
リンクを中心とした外部要素の悪用
Googleは今も昔も外部からの被リンクを重視しています。
これは、被リンクが「外部のユーザー、つまり人間の認識に基づく評価」だからです。
しかし、かつてのアルゴリズムでは、被リンクの内容や質までは評価できていませんでした。
そのため、とにかく被リンクの数を集めれば効果があるとして、コンテンツの内容に関係なく手当たり次第にリンクを設定する手法が横行したのです。
おもなところでは、
- 有料で購入するリンク
- リンクファームと呼ばれる相互リンクや相互リンク集
- ウィジェットやブログパーツに埋め込んで配布するリンク
などが挙げられます。
Googleが本来の被リンクとして想定するのは、あくまでリンク元サイトの意思によって張られるリンクであり、そこには「内容に関係があるから」「参考になるから」「執筆にあたって参照したから」などの自然な理由があります。
一方で、リンクだけを目的としている場合、内容に関係性がないのに発生した「不自然なリンク」になってしまいます。
有料リンクの購入や相互リンクへの参加は、Googleがガイドラインで禁止する「リンクプログラムへの参加」に当たるので注意しましょう。
キーワードやコンテンツなど内部要素の悪用
ブラックハットSEOでは、リンクの他にページ内部の要素を悪用する手法も採られました。
おもなところでは、
- ユーザーに見えないように隠したテキストやリンクを盛り込む
- ワードサラダと呼ばれる自動生成コンテンツ
- 過剰なキーワードの詰め込み
- ユーザーと検索エンジンに異なるコンテンツを見せるクローキング
- サテライトサイトなどを使ったコピーコンテンツスパム
などが挙げられます。
隠しテキストやクローキングは、ユーザーと検索エンジンの双方を明確に騙す行為に当たります。
また、キーワードの詰め込みやワードサラダの場合、確かにページ内にキーワードは含まれるものの、ユーザーにとってはまったく意味のないコンテンツになってしまいます。
当時のインターネットをご存じの方ならば、検索結果で上位表示されたページを開いたら、無意味なキーワードのみがびっしりと詰め込まれたページでうんざりしたという経験もあるのではないでしょうか。
コピーコンテンツについては誤解されがちなところもありますが、けっして他サイトからのコピー、つまり盗用だけを指しているわけではありません。
自サイト内、または自身が運営するサテライトサイト内であってもコピーは厳禁です。
GoogleのアルゴリズムアップデートとブラックハットSEO対策の強化
かつては、ユーザーにとって無意味で無価値なサイトが上位表示されることにつながっていたブラックハットSEOは、現在はほぼ駆逐されたものを考えて良いでしょう。
これには、Googleが掲げるユーザーファーストの考え方と、それを実現するためのアルゴリズムアップデートが大きく影響しています。
GoogleがブラックハットSEOを取り締まる理由
検索ユーザーは何かを知りたい、何かを調べたいと思ってGoogleなどの検索エンジンを利用します。
しかし、その結果として上位に表示されたページの内容が、何の役にも立たない、それどころか害悪になるようなものだったしたら、ユーザーはいったいどう感じるでしょうか。
当然ながら、その検索体験に満足することはなく、むしろ検索エンジンの性能自体に疑問を呈し、いずれは利用することも減っていくかもしれません。
また、検索ユーザーのGoogle離れが起こったら、広告の出稿なども減少し、Googleの売上低下につながる怖れがあります。
つまり、ユーザーにとって有益でないサイトを上位表示させることは、Googleにとっても死活問題になりかねないのです。
だからこそ、GoogleはブラックハットSEOを厳しく取り締まり、検索ユーザーの役に立つクオリティの高いサイトが上位表示されるように対策を重ねています。
Googleの掲げるユーザーファーストの考え方は、ユーザーの利便性や満足度にとってだけでなく、Google自身のビジネスモデルにとっても重要なものなのです。
ペンギンアップデート
Googleがこれまでに実施してきた大規模なアルゴリズムアップデートのうち、とくにブラックハットSEOの駆逐に影響したのが「ペンギンアップデート」です。
ペンギンアップデートは2012年から導入され、スパム的手法を対象にペナルティを科す対策が行われました。ガイドラインに違反したスパム的なSEO対策や、無意味な被リンクはこのアップデートによって排除されることになったのです。
現在はコアアルゴリズムに統合され、リアルタイムに改善が行われています。
パンダアップデート
ペンギンアップデート並んで挙げられる大規模アップデートに「パンダアップデート」があります。
ペンギンアップデートが違反行為や被リンクを主軸にしているのに対して、パンダアップデートではおもにコンテンツの品質を重視しています。
低品質なコンテンツや内容の薄いコンテンツ、重複・コピーコンテンツなどの順位を下げ、逆にユーザーの益になるクオリティの高いページが上位表示されるようにしたのです。
SEO対策はホワイトハットSEOに注力しよう
ブラックハットSEOはGoogleの対策によって撲滅され、ほぼ過去の遺物となったと言えるでしょう。
現在のSEOは、ブラックハットSEOのように「ガイドラインに違反し、ユーザーや検索エンジンを騙す」ものではなく、その真逆となるホワイトハットSEOが主流になっています。
ホワイトハットSEOとは、「ウェブマスター向けガイドライン(品質に関するガイドライン)」に準拠したサイト制作を心がけ、何よりもユーザーの役に立つコンテンツ、ユーザーが使いやすいサイトを提供するという、王道的なSEO手法です。
Googleはコンテンツとリンクをもっとも重視
ここで気になるのが、ブラックハットSEOとしてペナルティの対象にもなっている「リンク」や「キーワード」の存在ではないでしょうか。
しかし、とくに心配は要りません。
ペナルティの対象となるのは、あくまで不自然または人為的なリンク、あるいはキーワードを不自然に詰め込んだ低品質なコンテンツなどに過ぎません。
むしろ、現在でもGoogleがもっとも重視する要素は「リンク」と「コンテンツ」の2つです。
被リンクが自然発生するほどのコンテンツや、検索キーワードとの関連性が高いコンテンツこそが、ユーザーの益になるページと判断されるのです。
今後は、より高品質なコンテンツを提供できるように、Googleが重視するE-A-Tを高めることにも注力していきましょう。
意図せずにペナルティ対象になることもあるので注意
ブラックハットSEOについては、「意図せずに実施してしまうこともある」点に注意が必要です。
たとえば、会社のWebサイトに対して社長や社員の個人ブログから大量のリンクを張った場合、これが不自然な人為的リンクとアルゴリズムに判断されるおそれもあります。
ユーザーに対しても検索エンジンに対してもけっして悪意はなく、むしろ良かれと思ってやったことが、ペナルティ対象になってしまう可能性もゼロではないのです。
また、中古ドメインのように、良いのか悪いのか判断しにくいものもあるでしょう。
じつは、中古ドメインの利用そのものは、とくにペナルティ対象ではありません。実際、知らずに取得したドメインが中古であることもあり得ます。
一方で、そのドメインがかつて使われていた際、ブラックハットSEOを実践するためのサイトだった可能性もあります。その場合、高いドメインパワーどころかマイナスからスタートすることになりかねないので注意が必要です。
何がペナルティ対象になるかは、基本的には「ウェブマスター向けガイドライン(品質に関するガイドライン)」が判断基準になるので、迷った場合はこちらを確認することをおすすめします。