「もっと表現が豊かな文章を書きたい」「文章によって読者を感動させたい」…
ライターとして普段から文章を書いている人なら、そう思ったことがあるでしょう。文章力はあっても文章センスがないと感じているライターは意外と多いです。
そもそも、ライターに文章センスは必須スキルなのでしょうか?
今回は文章センスが必要なライター、不要なライターと、文章センスを磨く方法を解説します。
文章力と文章センスの違い
文章力とは、読み手が理解しやすい言葉で表現できる、文章の力のことです。
具体的には、きれいな日本語が使えるか、文法の基本を押さえられているかなどが判断基準になります。
一方で文章センス(文才)とは、人に感銘を与えられる文章の才能のこと。
文才は才能ですから、生まれ持っているかどうかで決まる部分が大きいです。
文章力は学校で学びますが、残念ながら文章センスは誰も教えてくれません。
文章センスがあっても文章力があるとは限らない
世の中には文章センスがあって、読む人を感動させる詩人や作家もいます。
しかし、文章センスを持つ人に文章力も備わっているとは限りません。
詩で人を感動させられても、メールやビジネス文書でのやりとりでは日本語がおかしかったり、詩以外を書かせるとわかりにくい文章になったりすることもあります。
例えば、タレントの滝沢カレンさんは独特な日本語を話し、独特な文章を書きます。
幼少期の環境による影響はあるものの、彼女の生まれ持った文章センスにより、著書を出版するまでになりました3。
しかし、滝沢カレンさんと重要な仕事の連絡をするとなると、不安になることが想像できませんか?
文章センスが突出していても、文章力も高いわけではありません。
文章力がない社会人は頭が悪いと思われがち?
タレントやインフルエンサーは自分の個性が商売道具ですから、文章力がなくても「かわいらしい」と評価されます。
しかし普通のサラリーマンやアルバイト、パート、フリーランスなど、個性ではなくスキルや能力、労働力を売っている社会人は、文章力がないだけで「頭が悪い」と低い評価が下されます。
そもそも自分の文章力に不安がある人は、文章センスよりも文章力を優先して磨いたほうがいいでしょう。
文章のセンスが必要なライター、不要なライター
ライターとして働く場合、文章力は最低限持っておきたいスキルです。それでは、文章センスは必要なのでしょうか?
結論から言うと、文章センスは必ずしも必要なわけではありません。ただ、文章センスがあると他のライバルよりも有利になることは間違いないです。
また「ライター」とひとことで言っても、様々なカテゴリーがあります。
文章センスがあったほうが有利になるカテゴリーと、文章力さえあれば活躍できるカテゴリーに分かれているのです。
ここでは、それぞれのカテゴリーについて見ていきましょう。
文章センスがあると有利なライター
必ず文章センスが必要というよりは、文章センスがあると有利なカテゴリーは次の通り。
小説家、詩人、作曲家、エッセイスト、ポエマーなど
「センス」はいわば「感覚」や「感性」と言い換えられます。上記は、文章の感覚・感性が必要とされるライターです。
クリエイティブ色の強いライターとして食べていきたいのなら、文章センスを磨くことをおすすめします。
文章センスがなくても活躍できるライター
一方で、文章センスは必須ではなく、文章力があれば食べていけるカテゴリーもあります。
Webライター、ニュース記者、コラムニストなど
物事を世間に伝えるためのライターは、「自分にしか書けないことを、誰にでも理解しやすく書く」ことを目的としています。
すなわち、文章センスに自信がなくても文章力には自信があったり、これから高める努力をしたりすれば、十分ライターとして活躍が可能です。
文章センスのない人が文才を磨く方法
文章センスは必須ではないとはいえ、センスのあるライターのほうがより高次元の文章を書けたり、読者を感動させられたりできることは事実。
文章センスを磨きたい人も多いでしょう。
とはいえ、そもそも才能は磨けるのでしょうか?
良い例として、あなたが中高生の頃を思い出してみてください。
中高生の頃はダサい私服を着ていても、大学生・社会人になると垢抜けておしゃれになりませんでしたか?これは、経験値を積んでファッションセンスが磨かれたからです。
文章センスも同様に、経験値を積んで身に付けることができます。
「ライティング自体がからっきしダメ」でなければ、時間はかかってもそれなりに磨ける才能でもあるのです。
(ライティング自体がからっきしダメな人は、まず文章力を磨くことを推奨します)
それでは文章センスのない人が、文才を磨く方法をご紹介しましょう。
心に響くライターの文章を読む
あまり文章を読まない人だと、文章センスを高められません。アウトプットだけでは限界があるため、普段からインプットする必要があるのです。
そして最適なインプット方法が、他人の文章を読むことなのです。
ただ、文章センスを磨くという観点から見ると、適当に選んだ本やネットの記事ではなく、あなたの心に響く文章を書くライターの作品や記事を読みましょう。
一字一句噛みしめるように読んで、どんな部分に心惹かれたのかを客観的に分析してみましょう。
心に響くライターの文章を写経する
読むだけでなく、心に響くライターの文章を写経するのもおすすめです。
写経とは経文を書写することを言いますが、もとは供養や祈願のために行われるもの。ライターが他のライターの文章を写経する目的は違うものの、文章センスを磨く方法として有効です。
写経する目的は、体でその文体を覚えて、感覚を養うことです。
心に響く文章を写経し続けるうちに、まるで自分が書いたかのような感覚になります。他者の文章に込められた魂を、自分に乗り移らせるイメージですね。
生まれつき文才がないのなら、文才のある人からワザを盗むことに挑戦してみましょう。
ボキャブラリーを増やす
実はボキャブラリーを増やすだけでも、センスのある文章が書けるようになります。ボキャブラリーが豊富だと表現の幅も広がり、文章に変化を与えられるのです。
ボキャブラリーを増やす方法には次のようなものがあります。
- 自分のレベルより“少しだけ”高いレベルの本や新聞を読む
- 日本語診断アプリやツールを使って勉強する
- 他人の話をよく聞き、言葉や表現を意識する
- わからない単語や言葉はすぐに調べる
- 日記やブログなどで、覚えた言葉をアウトプットする機会を増やす
- 話すときには覚えたばかりの言葉を使ってみる
- 他の言葉で言い換える練習をする
様々な言葉や技法で表現されている文章は、読んでいて飽きません。文章だけでなく日常生活でも「次々に言葉が出てきて、話していて楽しい」と思ってもらえるメリットもあります。
日頃から言葉に意識を向けるだけでも、少しずつボキャブラリーを増やせるでしょう。
情景を文章化する
自分の見た景色や風景、心に残った映画のワンシーンなど、感情が揺れ動いた瞬間を文章化する練習をしてみましょう。
例えば、乳児が生まれて初めて立った瞬間は、どの親にとっても幸せな瞬間です。「子供が生まれて初めて立った」と書くのは簡単ですが、そうではなく、見たまま・感じたままの情景を文章化します。
ハイハイでテレビボードまで近付いたと思ったら、ボードの上に置いてあるおもちゃを取ろうと手を伸ばした。しかし届かない。
「取ってあげようか」と思った瞬間、息子は足腰にグッと力を入れた。ぷるぷると小さな筋肉をふるわせながらも、初めて二本足で立ったその背中は、いつもより広く見えた。
見たまま・感じたままの様子を言葉にするとき、人は自分の中にあるあらゆる表現方法を駆使しようとします。試行錯誤する過程で、文章センスが磨かれていくのです。
心に刺さったフレーズを集める
そもそも、あなたはどんな文章なら「センスがあるな」と感じますか?この問いに対して、明確に答えられる人は少ないでしょう。
そこで、普段から心に刺さったフレーズを集めるようにしましょう。読書中やネットサーフィン中に「あ、いいな」と思える文章があったら、ノートやメモアプリなどに記録して、いつでも見返せるようにします。
メモを取るのは、記憶に定着させやすくするためです。記憶の引き出しにフレーズを溜めておくことで、ライティング中に「そういえばこんな刺さるフレーズがあった」と思い出せるようになります。
自分もそのフレーズを真似て書いてみることで、次第に自分の言葉として使えるようになるでしょう。
コピーライティングの本から学ぶ
文章センスについて体系的・論理的に学びたい場合は、コピーライティングの本を活用しましょう。
コピーライティングには、実は文章力と文章センスの両方のスキルが求められます。モノを売るための文章ですから、読者の感情を動かす必要があるためです。
おすすめのコピーライティングの本は次の2冊。
ザ・コピーライティング――心の琴線にふれる言葉の法則
「伝説のコピーライター」と言われるジョン・ケーブルズ氏の本で、国内外で大勢の人に読まれています。文章センスを磨いて、ビジネスに活用したい人には特におすすめです。
売れるコピーライティング単語帖 探しているフレーズが必ず見つかる言葉のアイデア2000
こちらはコピーライティングで使われている単語とフレーズをまとめた単語帳です。ボキャブラリーを増やすのにはもちろん、どんな言葉が人の心を動かしやすいのかもわかります。
言葉を大切に扱う
文章センスを磨くうえでもっとも重要なことは、日頃から言葉を大切に扱うこと。文章を読むときも書くときも、一言一句を噛み締めることで得られる知見があります。
忙しい現代人は、文章を読むときは飛ばし読みしがち。
ビジネスメールやレポートを書くときですら、ひな形をコピペして使う人も多いです。
それらが悪いことではありませんが、文章センスを磨きたいなら、文章と改めて向き合わなければいけません。言葉を大切に扱い、言葉の深みを知りましょう。
心を動かす文章を書くには、ある程度のセンスは必要
文章力を磨けば「わかりやすい・理解しやすい文章」が書けますが、読者を感動させることは難しいです。読者の心を動かす文章を書きたいなら、やはりある程度の文章センスが必要。
文章センスは、努力によって身に付けることができる才能です。あなたの文章センスを磨き、より文章の高みを目指していきましょう!