「話し言葉」と「書き言葉」の違いとは?正しい使い分け・言い換え方を解説

私たちは普段「話す」ときの言葉と「書く」ときの言葉を自然と使い分けています。そこで生まれたのが「話し言葉」と「書き言葉」です。

ビジネスの文書作成であれメール作成であれ、文章を書くことを業務の1つとしている人は、つい話し言葉で書いてしまわないように注意しなければいけません。

今回は話し言葉・書き言葉の違いや、正しい使い分け方・言い換え方などを解説します。

目次

話し言葉(口語)と書き言葉(文語)とは?

話し言葉(口語)とは、相手と直接会話をするときに用いられる言葉のこと。対面や電話での会話では、話し言葉でやり取りします。

一方で書き言葉(文語)とは、文章を書くときに用いられる言葉です。学校教育で学ぶ言葉でもあります。

私たちが話すとき・文章を書くときには、その場・その状況・会話の相手などに合わせながら、話し言葉・書き言葉を使い分けているのです。

なぜ口語・文語が分かれたのか?

文章を書くときというのは、相手にしっかり伝わるように文法を考えながら書きますよね。

しかし人と会話をするときには、頭に浮かんだ言葉を、文法などは特に気にせずそのまま話すことが多いです。その方が会話のキャッチボールがスムーズになります。

そうすると、自然と文語の一部の単語や助詞などが抜け落ち、口語へと変化していきます。

例えば、主語の省略や「食べられる」を「食べれる」に変えたら抜き言葉などがその代表です。

もちろん前後の会話がありますから、少し言葉が抜け落ちたぐらいであれば、相手にきちんと意味が伝わります。

文語を会話のキャッチボールに適した形にしたものが口語だと言えるでしょう。

話し言葉と書き言葉の違い

話し言葉と書き言葉にはそれぞれ以下のような違いがあります。

・話し言葉は、倒置、中断、語順などの乱れが起きやすい

→書き言葉は、形(ルール)が決まっている

・話し言葉は、柔らかみを持たせるために、直接的な表現を避けることが多い

 →書き言葉は、端的に伝えるために直接的な表現をする

・話し言葉は、感動詞(感嘆詞)(「ああ」「まあ」「うん」など)、疑問詞などが多く用いられる

 →書き言葉は、感動詞や疑問詞がない

・話し言葉では、方言が表れることがある

 →書き言葉は、方言は使用しない

私たちは日常的に、役割の異なる書き言葉と話し言葉を無意識に使い分けているのです。

流行語と外国語の表現の変化

流行語は主に若者が中心に使う言葉ではありますが、この流行語も会話のキャッチボールを円滑にする要素の1つです。

こうした流行語は、日本語の“単語”としては存在していない言葉(造語)でしたが、話者の感情や言わんとすることをコミカルかつ端的に表す言葉だったからこそ、流行したのです。

さらに、実は外国語にも話し言葉や書き言葉は存在しています。

英語圏をはじめ、外国語にはさまざまなスラングが存在していますが、そのスラングこそが話し言葉の1つ。

例えば「What's up?(調子どう?)」は書き言葉で、話し言葉に直すと「Sup?」となります。

話し言葉と書き言葉の使い分け

話し言葉と書き言葉が分かれているのも日本語の特徴の1つ。人と会話をするときには、話し言葉で会話をするのが自然です。

文章は、基本的に書き言葉で書くことになりますが、例外的に話し言葉で書いても問題ない文章もあります。

それぞれどのようなときに使われているのか、使い分けのポイントを見ていきましょう。

「書き言葉」が用いるべきケース 「話し言葉」でも良いとされるケース
ビジネス文書全般(企画書、報告書など) 友人へのメール
論文・レポート SNS
新聞記事 キャッチコピー
Web記事(事実を伝えるとき) Web記事(ブログ、エッセイなど)

ビジネス文書全般・論文・新聞記事・Web記事

ビジネスに関連する文書全般は、必ず書き言葉を使いましょう。取引先やクライアントへの案内文、ホームページに掲載する文章からメール文まで、正しい敬語を使って書くのが理想的です。

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また論文や新聞記事、Web記事など、事実を正確に伝える文章や、読者に役立つ情報を届けるための文章にも書き言葉を使います。

もし話し言葉を使うと読み手に稚拙な印象を与えてしまい、内容が正しくても信ぴょう性に欠けると判断されるかもしれません。

しかし、Web記事のターゲットによってあえて話し言葉を使う場合もあります。

友人へのメール・SNS・ブログ・キャッチコピー・Web記事

友人へのメールやSNSへの投稿などのカジュアルな文章では、話し言葉を使っている人が多いでしょう。書き言葉はどうしてもカッチリとした印象を与えるため、カジュアルシーンでは少し崩した程度の言葉の方が、相手とのコミュニケーションも取りやすいです。

個人のブログであれば、書き言葉・話し言葉どちらを使うかは自由です。ポップな印象を与えたいときや柔らかい雰囲気を出したいときなどは、話し言葉を使うのがいいでしょう。

若い読者やターゲット層に向けて親近感を持たせるため、キャッチコピーやWeb記事で話し言葉を使うこともあります。特に若い女性向けのキュレーションサイトでは、「いっぱい」「すごい」など普段馴染みのある言葉を使っているサイトも見かけます。

使いがちな話し言葉(口語)を正しい書き言葉(文語)に変換

自然と使い分けている話し言葉・書き言葉ですが、実は明確に区分できている人は少ないです。自分では正しく書き言葉を使っているつもりでも「実は話し言葉だった」という場合もあります。

そこで、ここでは話し言葉から書き言葉への言い換え方を解説します。

ら抜き言葉

動詞に可能の助動詞「られる」をつけることで「食べられる」「寝られる」といった言葉になります。この「ら」が抜け落ちたものが、ら抜き言葉です。

❌こんなにたくさんは食べれない(ら抜き言葉)

⭕️こんなにたくさんは食べれない

日常会話なら「ザクロは種まで食べれます」「私、どこでも寝れます」と話していても違和感はありません。むしろ、慣れ親しんだ言い回しだと言えますね。

ただし、文章を書くときにはしっかりと「ら」を書いて、書き言葉に直しましょう。

https://edit.roaster.co.jp/writing/6368/

い抜き言葉

ら抜き言葉とよく似た間違いに、い抜き言葉もあります。「やっている」「話している」などの「い」が抜け落ちた表現です。

❌英語の宿題をやってる(い抜き言葉)

⭕️英語の宿題をやって

「英語の宿題やってません」「今先生が話してるでしょ」など、い抜き言葉を日常的に使っている人も多いでしょう。

話し言葉としては慣れ親しんでいるとしても、書き言葉を使う場合にはきちんと「い」を入れましょう。

ですます調/だ・である調

文章を書くとき、ほとんどの人は語尾を「〜です」や「〜ます」で締めるですます調(敬体)を使っていますよね。

しかし、実はですます調は話し言葉。書き言葉は「〜だ」「〜である」で締める、だ・である調(常体)なのです。

  • この花はきれいです (ですます調)
  • この花はきれい (だ・である調)

ただ多くのメディアでは、だ・である調は読み手に堅い印象や強い感情を与えてしまうため、柔らかく丁寧な印象を与えるですます調を使うようにしましょう、という傾向が強いです。

論文や新聞記事といった堅いイメージの文章の場合はだ・である調を採用する、ブログやWeb記事ではですます調を採用するなど、文章を掲載する媒体やシーンによって使い分けるといいですね。

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二重表現に気を付ける

同じ意味を持つ言葉を重ねることを二重表現(または重複表現)といいます。例えば以下です。

  • まず最初に
  • 必ず必要です

会話やスピーチなどの中でなら二重表現は気になりませんが、本来は間違った表現です。文章を書くときには「まず」or「最初に」、「必ず〜しましょう」or「〜が必要です」など、どちらかの表現だけを使うようにしましょう。

「なので、」は口語的な表現

「なので」は、文の途中で理由を説明する時に使う言葉です。ただ、普段の会話では「なので、〜です」と文頭に付けている人もいるでしょう。

「なので」の「な」は断定の助動詞「だ」の連体形で、そこに理由を表す「ので」がくっついています。本来は文の途中で使うものであり、文頭に使うのは不適切です。

また、そもそも「なので」は口語的な表現で、書き言葉として丁寧に表現するのであれば「ですので」を用いるのが良いでしょう。

話し言葉:今日は雨です。なので、ピクニックは中止です。

書き言葉:今日は雨ですので、ピクニックは中止です。

別の接続詞に言い換えることも可能です。

書き言葉:今日は雨ですので、ピクニックは中止です。

書き言葉:今日は雨です。そこで、ピクニックから美術館に予定変更しましょう。

ぼかして表現する「〜的には」

「私的には」や「弊社的には」のように曖昧に表現する「〜的」は、実は書き言葉としては適切ではありません。

そのため、書き言葉として使うときは「私としては」「弊社としては」に置き換えるようにしましょう。

ライティングでは書き言葉が基本!例外的に書き言葉がOKな場合も

Web記事などで文章を執筆するライターなら、書き言葉で表現するのが基本。ビジネスマンであれば、ビジネスシーンではきちんと書き言葉を使いこなせるようにしておきたいですね。

しかし、あえて「ですます調」を使ったり、若い読者に向けた記事を書いたり、親近感を持たせたりしたいのであれば、例外的に話し言葉を使う場合もあります。

どちらにせよ、話し言葉を書き言葉にスムーズに変換できるようにしておくことは大切です。

シーンに合わせて、話し言葉・書き言葉を柔軟に使い分けられるようにしておきましょう!

チェックリストに使える! 話し言葉・書き言葉一覧

最後に、うっかり文章に使いがちな話し言葉・書き言葉をチェックリスト化しました。

文章でどちらを使うべきか迷ったときには一覧で検討してみてください。

話し言葉 書き言葉
とっても/すごく とても/きわめて/非常に/大変
ちゃんと きちんと
どっち どちら/いずれ
でも/だけど しかし/だが/けれども
〜じゃない(否定) 〜ではない
いっぱい/たくさん 多くの〜/〜が多い
やっぱり やはり
すごい(感嘆) すばらしい
たぶん おそらく/きっと
だいたい およそ/約
こっち/そっち/あっち こちら/そちら/あちら
なんで なぜ
〜とか(並列)
いろんな いろいろな/さまざまな
どんどん 急速

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