あなたの文章は、余計な言葉をたくさん溜め込んでいませんか?Webでもリアルでも文章が溢れているこの時代に、最後まで読まれる文章にするには「文章のダイエット」をしなければいけません。
冗長表現はまさに文章における贅肉。今回は、冗長表現を直してスマートな文章にする方法を解説します。
冗長表現とは
冗長表現とは、無駄な語句や言い回しが含まれており、意味が伝わりづらい文章表現のことです。
もちろん、意図をわかりやすく伝えるためにはいくらか補足が必要になることもあるでしょう。しかし冗長表現は不必要なものですから、省いてもきちんと意図は伝わります。
冗長表現は意図をわかりにくくする
冗長表現を使ってしまうと、書き手が本来伝えたいはずのメッセージ(意図)が伝わりにくくなります。次の例文を読んでみましょう。
ライティングに大事なのは読み手のニーズを捉えたライティングをすることだと理解していないライターもいないわけではない。
言いたいことがわかりそうで、わからない。そんな現象が起きていませんか?例えるなら、お腹いっぱいになってしまって、肝心な食べ物の味がわからなくなるイメージです。
冗長表現はこのように読者の理解を阻害するのです。
冗長表現になってしまう理由
冗長表現になる理由はいくつかありますが、ライターによくありがちなのが「文章を飾り立てよう」とする意識が働くことです。
とにかく文章に肉付けをして「なんとなく深い意味を持ってそうな文章」にしようとしていませんか?
文章の目的は、読者に情報を届けること。意味深な文章は小説やコラムの中では有効ですが、情報を的確に伝えるには不適切ですよね。
または、話し言葉をそのまま文字化していることも理由に挙げられます。日本人は特に話し言葉で冗長表現を使いがちですが、書き言葉には適していません。
よくある冗長表現と直し方
ここでは、よくある冗長表現をまとめました。冗長表現の直し方も併せてご紹介します。あなたの文章のダイエットにぜひ役立ててください!
一文が長い
要素を並列したり、接続詞を使ったりすることで、一文が長くなりやすいです。どうしても必要な場合を除いて、並列や接続詞は多用しないようにしましょう。
朝起きたら着替えたり歯を磨いたり朝ごはんを食べたりしますが、どうしても時間がないときは会社近くのコンビニでパンを買ったり朝食を抜いたりして、どうにか電車に間に合うようにしています。
例文の文字数は90文字。一文の文字数は多くても50文字以内に収めるのが理想的です。
さらに一文の中に要素が詰め込まれすぎて、書き手の伝えたいことがわかりません。一番伝えたい要素だけを抽出し、次のように直しましょう。
普段は朝ごはんを食べますが、時間がないときは朝食を抜きます。電車に間に合うことが最優先です。
一文につき1つの意味を持たせる「一文一義」を意識することで、内容が伝わりやすいシンプルな文章になりますよ。
「という」「こと」
多くのライターが使いがちな「という」「こと」といった表現も、文章を回りくどくする原因です。たった2文字3文字ですが、この2文字3文字を削るだけで文章はスッキリします。
「男性」や「女性」というものは、あくまで身体的な区分のことに過ぎない。
この文章の「という」「こと」を削ってみましょう。
「男性」や「女性」はあくまで身体的な区分に過ぎない。
かなりスッキリし、読みやすく、そして理解しやすくなりました。「という」「こと」がなくても意図が伝わるようであれば、どんどん削っていきましょう。
類語の重複
類語とは、似た意味を持つ語句のこと。類語を重複して使っている文章も多いです。
ここでは、よくある類語の重複表現を見ていきましょう。
まず最初に → まず/最初に
しかし逆に → しかし/逆に
血痕の跡 → 血痕/血の跡
頭痛が痛い → 頭痛がする/頭が痛い
一番最後に → 最後に
すべて網羅されている → 網羅されている
完全に一致 → 一致
類語の重複は、話し言葉ではよくある表現です。話し言葉としては違和感ないものの、書き言葉には適さないため、重複しないように使いましょう。
二重否定(否定の連続)
二重否定とは、否定の意味を持つ語句を2回続けて使用することです。否定の連続で、回りくどい表現となってしまい、読者を混乱させるおそれがあります。
否定×否定は肯定の意味を持つため、書き手が伝えたい意味は「肯定」です。二重否定の文章をスッキリさせるなら、二重否定を使わず、書き手の意図をそのままダイレクトに伝えましょう。
二重否定の例文 | 書き手の意図(修正) |
私は運動ができないわけではない | 私は運動ができる |
起業に失敗する人も少なくない | 起業に失敗する人も多い |
書き手の意図をそのまま伝えた方が、読者は混乱せずに正しく意味を理解できるでしょう。
ただし、二重否定では本来の「肯定」の意味を濁す役割があります。あえて周りくどい表現にすることで、書き手の「含み」を持たせた表現ができるのです。
例えば「私は運動ができないわけではない」と書いた場合、「運動はできるが、そこまで得意なわけではない」というニュアンスを持たせられます。こうした微妙なニュアンスを伝えたい場合のみ、二重否定は効力を発揮するのです。
無駄な言葉・単語・助詞の繰り返し
無駄な言葉・単語・助詞の繰り返しも冗長表現です。
ライティングに大事なのは、読み手のニーズを捉えたライティングをすること
この例文では、一文の中に「ライティング」という単語が2回使われており、わかりにくい文章になっていますね。「ライティング」を別の表現に置き換えましょう。
ライティングに大事なのは、読み手のニーズを捉えた文章を書くこと
同じ単語が一文の中で使われる場合には、別の単語に置き換えてわかりやすい文章にしましょう。
さらに、助詞「の」の繰り返しにも注意してください。
今日の獅子座の開運アイテムのキーホルダーを身に付けよう
「の」が連続すると何が主語なのかわかりません。他の助詞に置き換えたり、表現を工夫したりして修正します。
今日は獅子座の開運アイテム、キーホルダーを身に付けよう
冗長な文末
文末はいわば「後味」のようなもので、スッキリしていれば軽やかに読めますが、冗長になっていると何だかぼんやりとした後味だけが残ります。
ここでは、特に注意したい3つの冗長な文末表現を見ていきましょう。
「することができます」
「することができます」は気付かぬうちに多用しがちな表現です。
彼女は破けた洋服を元通りに直すことができます
この装置をつけていれば水の中でも息をすることができます
どちらも違和感はありませんが、なんだか長ったらしい印象ですよね。次のようにスッキリさせましょう。
彼女は破けた洋服を元通りに直せます
この装置をつけていれば水の中でも息ができます
ただし「できる」を強調するために、あえて「することができます」を使う場合があります。
この装置をつけていれば水の中でも息をすることができるのです!
多用しなければ違和感のない表現ですから、注意しながら使いましょう。
「〜ものである」
「〜ものである」も冗長表現のひとつです。
彼の死は価値あるものである
同じ内容を繰り返す文章は読者を飽きさせてしまうものである
日常に溢れている表現なので、例文を見ても違和感がない人も多いかもしれません。ただ、本来は次のようにもっとスッキリさせられます。
彼の死は価値あるものだ/彼の死には価値がある
同じ内容を繰り返すと読者を飽きさせる
こちらも「することができます」と同様に、前に来る言葉を強調したいときには、多用しない範囲で使ってもかまいません。
「させていただきます」
「丁寧に言おう」と意識しすぎることで生まれる冗長表現が二重敬語です。特に「させていただきます」には注意しましょう。
お伺いさせていただきます
拝見させていただきます
申し上げさせていただきます
「させていただく」は謙譲語ですが、例文で挙げた「伺う」「拝見する」「申し上げる」も謙譲語です。謙譲語+謙譲語で、二重敬語になってしまいます。次のように直しましょう。
お伺いします
拝見いたします
申し上げます
「させていただく」に限らず、敬語は正しい使い方をマスターしたいですね。
冗長表現を見つけるには?
冗長表現は無意識で使っている場合が多く、実は自分では気付きにくいもの。気付かなければ、直すこともできないですよね。では、冗長表現を見つけるにはどうすればいいのでしょうか?
書いた文章をきちんと読み直す
文章を書き上げてそのまま投稿や保存をしていませんか?最後まで書いたら後から読み直すクセをつけましょう。
冗長表現は文章を書いている途中ではなかなか気付けないものです。しかし、一気に書き上げて後から読み直せば、きちんと気付けるものでもあります。
書いた翌日や数時間後など時間を空けて読み直した方が気付きやすいですが、時間がない場合は書き終わった直後でもかまいません。このとき、冗長表現のチェックリストを手元に置いておくとさらに見つけやすくなりますよ。
誰かに添削をしてもらう
自分では気付かない冗長表現や文章のクセでも、他人ならすぐに見つけてくれます。誰でも文章を読んでいて誤字に気付いた経験があるように、第三者の目線で見ると「あれ?」と違和感を覚える箇所を見つけらえるのです。
そこで、誰かに添削をしてもらうのはいかがでしょうか?普段からよく読書をする人や、文章を書いたり読んだりするのが得意な人にぜひ添削を頼んでみましょう。
ライター仲間やブログを書いている友人がいれば、お互いに文章を添削し合うのもおすすめです。
冗長表現を削ってスマートな文章に整えよう
わかりやすい文章にしたいからといって、余計な語句や言い回しを追加するのはNG。足すのではなく、まずは引く。つまり「文章のダイエット」を意識することが大切です。
自分の文章を振り返ってみて、冗長表現はないか?省いたり、言い換えたりできないか?などを考えてみてくださいね。
冗長表現はいわば「文章の贅肉」ですから、贅肉を削ってスマートな文章に整えましょう!