文章を考える際、構成の型の1つとして使われるのが「序破急」です。特に小説や脚本などストーリー性のある文章との相性が良く、スピーディーな展開により作品に生き生きとした魅力を吹き込んでくれます。
では、序破急とは具体的にどんな構成なのでしょうか?また、小説以外の文章にも序破急は活用できるのでしょうか?
今回は序破急の意味や活用できる場面をご紹介します。
序破急とは?意味と起源を知ろう
序破急(じょはきゅう)とは、脚本や楽曲を構成する3区分のこと。いわば、文章の三部構成です。
起承転結と同じように、漢字一文字一文字が意味を持っています。
序:物事の始まり(導入)
破:静けさを破り物事が展開していく(展開)
急:クライマックスに向けて急速に向かっていく(結末)
序破急の三部構成はメリハリがあるのが特徴。特に序から破への展開はだんだん期待感が高まっていきますし、破から急へスピーディーに展開して終わるさまは、読者に驚きを与えてくれるでしょう。
序破急は芸道用語
序破急はもともと「能」や「浄瑠璃」に使われる芸道用語でした。脚本や楽曲の構成を考える際に、観客を楽しませるため序破急を取り入れたのです。
芸道における序破急には、次のような意味があります。
序:無拍子、低速で事なく静かに、緩やかに
破:拍子を加えて緩やかに、面白く
急:拍子があってもっと早く急速に
現代では歌舞伎や茶道など日本の芸道から、アニメ、映画、舞台などにも使われています。
序破急が使われている有名な作品
ここで、序破急が使われている有名な映画作品をご紹介します。観た頃がある人は、さらに序破急のイメージが湧きやすいのではないでしょうか?
イントゥ・ザ・ストーム
2014年にアメリカで制作されたパニック映画。
序:高校生の主人公と竜巻を観測するドキュメンタリーチームが登場する。
破:遠くで発生した竜巻が方向を変え、卒業式真っ最中の学校を襲う。ドキュメンタリーチームが竜巻を追いかける。主人公とチームは手を組む。
急:竜巻から逃れるため雨水管へと避難し、竜巻が直撃する。竜巻の中を必死に耐え抜く。
終盤がもっとも盛り上がっています。他にも災害系映画は序破急で構成されているものが多いです。
キャビン
2012年にアメリカで制作されたホラー映画。
序:個性豊かな若者のグループが旅行でキャビン(山小屋)に宿泊する。
破:怪物や怪奇現象に襲われ、仲間がどんどん命を落としていく。ここは訳ありのキャビンなのか?
急:と思いきや、これらは古の邪悪な神に捧げる儀式だった。研究職員の手によって死ぬ順番が決められていた。計画は失敗し、人類は滅亡してしまう。
「旅行に訪れた先で仲間がどんどん死んでいく」…ホラー映画でよくある展開の中でも、視聴者に驚きと絶望を与えたのが本作品。
序破急を取り入れた構成は最初はあまり引き付けられないかもしれませんが、中盤〜終盤にかけて急に展開が変わる面白さがあるのが特徴です。
序破急には次がある?
序破急の後には続きがあるとも言われています。それが以下の3つです。
- 序破急新
- 序破急結
- 序破急詠
ただ、どれも正式な言葉でもなければ、構成を意味するわけでもありません。
『名探偵コナン』や『エヴァンゲリオン』などの劇場版作品が「序破急」という言葉を使った際に、作られた造語です。
序破急と他の文章構成の使い分け
序破急とよく対比される文章構成が「起承転結」、そして起承転結とよく対比される構成が「PREP」です。それぞれ、序破急とどういった違いがあるのでしょうか?
起承転結
序破急が三部構成なら、起承転結は四部構成です。
起:物事の始まり
承:主題を展開する
転:急展開・逆転が起こる
結:エンディング
起承転結を序破急に置き換えるとすれば、「序」は「起」、「破」は「承転」、「急」は「結」になります。
起承転結で書かれた文章が話の流れが掴みやすいため、ストーリーにピッタリ。序破急ほどの急展開や盛り上がりはありませんが、読者を混乱させ置いてけぼりにすることもありません。
PREP
PREPも四部構成で、英語の頭文字を取っています。
Point:結論
Reason:その結論に至った理由
Example:例えを挙げて結論を補足
Point:最後に結論
PREPで書かれた文章は結論を最初に述べ、途中で理由や例を挙げ、最後にまた結論で締め括ります。そのため論文や解説文など、論理的な文章にピッタリです。
ただし、物語文にはあまり向いていません。
【番外編】序破急と似た言葉「守破離」とは?
序破急とよく間違われやすいのが「守破離」という言葉。音の響きもよく似ていますが、守破離は文章構成のことではありません。
守破離とは、日本に古くから伝わる師弟関係の在り方のひとつ。現代においては、物事を学ぶ際の基本的な姿勢という意味で使われています。
守:師匠に言われたことや型を忠実に「守る」こと
破:師の流儀や型を極めた後に、自分に合う流儀・型を見つけ既存の型を「破る」こと
離:研究を重ね個人の新たな流儀・型を編み出し、そして型や師の元を「離れる」こと
「守」を跳び抜かして「破」に行けば失敗するし、「破」なくして「離」を実現することは難しいです。つまり、「守破離の順番通りに成長すればうまくいく」というメッセージが込められています。
序破急を活用できる場面と文章
序破急はそのスピード感により、文章をより面白くしてくれます。
では、序破急はどのような場面や文章に活用できるのかを具体的に見ていきましょう。
小説・漫画・映画
やはり、ストーリーと序破急の組み合わせはとても相性が良いです。
起承転結でわかりやすく小説や脚本を書くのもいいですが、現代はエンタメに溢れているため、同じような展開をしばしば目にすることもあるでしょう。先が読めてしまうと、なんだかつまらなく感じてしまうもの。
ストーリーが序破急で展開されれば、結末は予想しにくくなります。読者や観客を「あっ!」と驚かせるような作品を作りたい……そんなときは一度起承転結から離れ、序破急で構成してみましょう。
ただし、前後が繋がったシリーズものや長編ものになると構成が複雑に絡み合うため、序破急を使いにくくなる点に注意しましょう。
広告文・ランディングページ
短めの広告文から、長いランディングページの文章まで、商品を売るためのセールス文にも序破急を活用できます。
序破急はいわば「始め」「中間」「終わり」とシンプルな三部構成ですから、セールス文であれば起承転結よりも使いやすいかもしれません。ここで簡単な例を見てみましょう。
序:加齢による肌荒れに悩んでいませんか?(読者の悩みに共感する)
破:40代以上の肌荒れにはこちらの商品!(悩みに対する答えを提示する)
急:肌荒れが治りました!(読者に満足感や幸福感を体験させる)
序→破→急と進むうちに、読者のテンションは上がっていきます。最後が最もテンションの高い地点になるような構成を意識してみましょう。
コラム
新聞や雑誌、さらにWeb記事にもお決まりのように掲載されるコラム。コラムとは短い評論のことですが、一見構成が考えられていない散文のようにも見えるかもしれません。
中には構成を考えず、徒然なるままコラムを書いている人も多いでしょう。ですが、コラムにも序破急を用いることができます。
序:コラムのテーマについて軽く触れ、最初に結論を示す
破:根拠と持論を展開する
急:根拠と持論に基づき、なぜ結論に至ったのかをまとめる
コラムは個人の持論や分析がメインとなる文章です。そのため、最初と最後はライトに、そして真ん中の「破」が一番厚みのある部分になります。
「破」の中には自分の経験や昔の思い出、ちょっとした出来事を詰め込むのがコラムの常套手段。そして「破」で紹介した物事を使って「急」に誘導することで、綺麗にまとめられます。
まさに「破」から「急」に移行するスピード感を活かせるのがコラムなんですね。
プレゼン
プレゼンの目的はクロージングですよね。起承転結では中だるみしやすい一方で、序破急の展開スピードを活用すれば、クロージングという目的を果たしやすくなるでしょう。
ここでは、序破急を使ったプレゼンの流れを見ていきましょう。
序:プレゼンのテーマを伝え、聴衆の意識を向けさせ、興味関心を捉える。
破:無駄を省きつつ、プレゼンの本題に入る。独りよがりにならないよう、聴衆が興味を持つ部分に焦点を当てる。
急:「破」を簡潔にまとめクロージングに向かう。その際、聴衆に次のアクションを提示すること。
序破急のプレゼンのポイントは、無駄を省くこと。
自分のプレゼンがつまらないかも?長ったらしいかも?と感じたら、ぜひ序破急を取り入れた流れに練り直してみてください。
序破急を取り入れると文章が面白くなる!
序破急が使われている映画や小説を見てもわかる通り、中盤から最後にかけて一気に展開が変わり、「あっ!」と言わせる面白さがありますよね。
小説や映画の脚本の他にも、セールス文やコラムといった文章にも序破急を取り入れることが可能です。序破急を活用して、あなたの文章を面白くしてみましょう!