「何を言っているのかわからない」「要点を明確にしてほしい」
ビジネスシーンにおいて、文章の読みにくさを指摘されて困ったことがある人も、けっして少なくないことでしょう。
今回は、何が原因で読みにくい文章になっているかを探ると同時に、どうすれば読みやすい文章へと改善できるかを解説します。
文章の改善方法のうち、とくに代表的なものを鉄則としてご紹介。文章が苦手な人でも、読みやすい文章を書けるコツをご紹介します。
「読みにくい文章」は何が問題になるのか?
コミュニケーションや情報伝達の主要な手段である「文章」。この文章が読みにくい場合、どのような問題が起きるのでしょうか。
相手に読んでもらえない
読みにくい文章の問題のひとつが、相手に読んでもらえなくなる可能性が高いということ。「読みにくいな」「なんだか読みにくそう」と思った時点で、多くの人はその文章を読むことを諦めてしまいがちです。
あまりに汚い字が読んでもらえない、支離滅裂なことを言っている人の言葉が聞いてもらえないのと同じで、読みにくい文章も避けられやすいのです。
「相手に何かを伝える」ことが文章の目的である以上、読んでもらえないのは致命的な問題と言えるでしょう。
言いたいことが伝わらない
次に、たとえ読んでもらえたとしても、肝心の「言いたいこと」が伝わらない可能性があります。
読みにくい文章には、概して「伝えたいことが定まっていない」「伝え方が適切でない」といった特徴があります。そのため、たとえば報告メールが報告の役割をなさないなど、文章としての本来の目的を果たせなくなってしまうのです。
誤解される原因になる
そして、読みにくい文章で最大の問題となるのが「意図と異なる捉え方をされる」可能性があること。つまり、誤解の原因になってしまうという問題です。
たとえば、ユーザーの課題面から製品のベネフィットを伝えたかったのに、それがユーザーの現状を侮辱しているような受け止められ方になってしまう。そんな怖い可能性もあるのです。
読みにくい文章の原因と、改善のための7つの鉄則
こうした問題を解消するためにも、読みにくい文章を読みやすく、適切に相手に意図を伝えられるものにしなければなりません。
読みにくい文章となる原因を探りながら、読みやすい文章にするための7つの鉄則をご紹介します。
①まずは文章全体の構造を明確にする
文章を書く際に真っ先に押さえるべき鉄則は、「文章全体の構造を作る」こと。細かい言葉の使い方よりも、まずはこの点に注力しましょう。
思いつくままに書いた文章は伝わりにくい
思いつくままに書いた文章は、得てして枝葉末節の情報から伝えがち。細かい情報がバラバラに伝えられるため、読み手も混乱してしまいます。
骨格・アウトラインを作ってから書き始める
そこで、伝えたい情報の幹——つまり骨格を作ります。細かい部分は二の次にして、まずは言いたいことの大枠だけを書き出してみましょう。
大きな枠組みができてから、その中で伝えたいことを細かく挙げていくようにします。
見出しを設けて内容をわかりやすくする
できあがった文章の構造は、書き手だけでなく読み手にも理解してもらうことが大切。そのためには「見出し」を活用しましょう。読者はまず見出しから「その文章の根幹」を把握し、その上で細かい情報を取得しています。
新聞でもWebの記事でも、大見出しや小見出しを上手に使っているので、ぜひ参考にしましょう。
また、記事だけに限らず、ビジネスメールなどでも見出しは効果的です。
②句読点を適切に使う
文の区切りとなる句点「。」および意味の切れ目となる読点「、」は、文章の読みやすさに直接的に影響する、きわめて重要な存在です。句読点そのものは小学校の国語で学ぶレベルですが、使い方には奥深いものがあります。
読点には意味を正しく伝える役割もある
読点の打ち方として「話し言葉の切れ目に入れる」という捉え方をしている人もいますが、文章においては、むしろ「意味を正しく伝えるため」に読点を使います。
×『彼女が彼が好きなコーヒーをトーストと一緒に用意した』
使われている言葉は簡単ですが、意味がわかりにくいですね。
○『彼女が、彼が好きなコーヒーを、トーストと一緒に用意した』
のように読点を打てば、それぞれの関係性や文の意味が明確になります。
句点で文章の長さをコントロールする
「句点は文末に打つもの」とされていますが、むしろ「積極的に文の長さをコントロールする道具」と考えましょう。
一般的に、一文でだいたい80文字くらいまでが読みやすい文章とされているので、参考にしてみてください。
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③段落や空白行をうまく使う
段落を使わずに文を連ねるのは、会話で言えば相手の都合を考えないマシンガントークのようなもの。意味のかたまりごとに段落を変えることで、読み手が情報を受け取りやすいようにしましょう。
また、目での追いやすさという観点から、空白行を適切に入れることも大切です。
縦書きと横書き、媒体の違いにも注意
段落や空白行の使い方は、横書きと縦書きでも大きく異なります。また、横書きのうち、とくにWebやメールなどの媒体では、空白行の使い方による読みやすさが紙媒体とは大きく変わるので注意しましょう。
④漢字・ひらがな・カタカナを適切に使う
日本語の文章は、漢字、ひらがな、カタカタ、さらにアルファベットを用いることもある複雑なものです。読みやすさのためには、これらをバランスよく使い分ける必要があります。
漢字は多すぎても少なすぎても読みにくい
中でも重要なのが、漢字を使う量のバランス。ありがちな失敗として、PCやスマホの変換機能に任せて漢字を多用してしまう問題が挙げられます。
×『大人が子供達の為に出来る事』
○『おとなが子どもたちのためにできること』
×『質の悪い悪戯は絶対に止めて下さい』
○『たちの悪いいたずらは絶対にやめてください』
どちらの例文でも、漢字で意味が通じないわけではありません。
ただし、非常に堅苦しく、「読み手の読みやすさ」よりも「書き手の好み」を優先しているような印象になりかねません。
漢字の使い方は「記者ハンドブック」を参考に
どれを漢字で書き、どれをひらがなにすべきか、その判断基準を参照できるのが共同通信社の『記者ハンドブック 第13版 新聞用字用語集』です。
新聞用字用語と銘打たれているものの、一般企業から個人まで、あらゆるシーンの文章執筆に対応。「読みやすい日本語文章」の基準としてはもっとも信頼できる存在でしょう。
⑤接続詞を正しく使う
読みにくい文章には、接続詞が正しく用いられていないケースも散見されます。
文の意味がねじれたり、正しく伝わらないことにつながるので、正確な情報伝達という点からとくに注意が必要です。
×『なぜなら、犬の嗅覚は最大で人間の1億倍にもなります』
○『なぜなら、犬の嗅覚は最大で人間の1億倍にもなるからです』
接続詞には、それを受ける適切な型があります。この例文では「なぜなら」に続く型として「〜だから」という型が必要になります。
×『信号が青になった。しかし、私は横断歩道を渡った』
○『信号が青になった。しかし、私は横断歩道を渡らなかった』
また、接続詞の前後での意味関係も正しくないと、文の意味がおかしくなってしまいます。
⑥修飾語が係る先をわかりやすくする
修飾語がどの言葉に係るのかわかりにくい文章は、意味が伝わらなかったり、あるいは誤解されやすいので注意が必要です。
×『縄張りでは危険な肉食獣のサインを見落とさないことが大切だ』
ぱっと見では、わかるようでわかりにくい例文ですね。
「縄張りでは危険」なのか、「危険な肉食獣」なのか、「危険なサイン」なのか、本当に言いたいことは何なのかが伝わりません。
○『ここは危険な肉食獣の縄張りだ。彼らの残すサインを見落とさないことが大切だ』
○『肉食獣の縄張りでは、危険を示すサインを見落とさないことが大切だ』
のように、文を区切ったり、修飾語の係る先をわかりやすくすることで、正確に意図を伝えられるようにしましょう。
⑦音読してリズム感や文末表現を調整する
読みにくい文章になる原因のひとつに、「書いたら書きっぱなし」というものが挙げられます。書きっぱなしのために「読んだときの印象」が無視され、同じ文末表現が続いたり、読みにくい文の長さになってしまうのです。
これを防ぐために有効なのが、書いた文章を実際に音読してみるという方法。読んでみて「なんかリズム感が悪いな」と感じたら、あらためて文末表現などを調整してみましょう。
まとめ
今回ご紹介した鉄則を意識するだけでも、ある程度は読みやすい文章を書けるようになるでしょう。
しかし、読みにくい文章の改善は、一朝一夕で実現できるものではありません。何度も実際に書いて、それを他人に読んでもらう。その地道な繰り返しで、読みやすい文章を書く技術を身につけましょう。
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